【質問回答回】憧れる前に粉になるまで働け
質問箱にこんな回答が届きました。
質問者さんは25歳の男性で、会社員でいらっしゃいます。
お悩みは転職に関することのようです。以下、回答になります。
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初めまして、猫山課長と申します。ご質問をいただき、ありがとうございました。
あなたは現在の職場に対し、なんら不満を抱いておられないのに転職したいとお考えのようですね。それもM&A業界へ。
加えて、終盤では内容が変化し、本当のお悩みを吐露されている。
わかりやすくお伝えするために二つに分けて書いていきます。
少々辛口になりますが、「ご叱声を頂ければ」というあなたの文言を鵜呑みにしますので、どうかご容赦ください。
まず、あなたの現在の職場環境は悪くないようです。上司先輩について何ら懸念がないことは、あなたの書き振りから十分察することができます。これは本当に幸運だと思った方がいい。
M&A専任部署に配属されたのは年明けからのようですね。そこで仕事上関わったM&Aコンサルを見ていて、憧れたとのこと。
「憧れを持つに至り」とあなたは書かれていますが、ここからどうもしっくりきません。
あなたは、M&Aコンサルの何を見て、何を感じて憧れたのですか?
ここからは私の邪推なのですが、あなたは自社に売り案件を持ってくるM&Aコンサルと接して、カッコいいと感じられたのではないですか?
私もポジション上、多くのM&Aコンサルと面談しました。
確かに彼らの扱う案件の規模は大きいですし、資料はビシっとしていますし、大手企業の名前もバンバン出てきますし、事業所も大都市の中心部の高層ビルにあるなど、とにかくカッコいいのは確かです。身なりもいいですし。
失礼な言い方ですが、新卒3年目の人間が見たら、憧れるのもよくわかります。いきなり自分の会社や仕事がダサく見えても不思議ではありません。
ですが、「憧れ」の解像度がかなり低いのではないですか?
なんとなくカッコよく見えたから、くらいに止まっていませんか?
「年収がいいからやりたい」というシンプルすぎる動機の方が遥かにマシです。
明示できる根拠がないのに何となくカッコよく見えたからとの理由で飛び込むのは大変に危険でしょう。それは知識や営業経験を重ねても変わりません。
さらに追い討ちをかけるようで申し訳ないのですが、あなたは
と書かれています。
申し訳ありませんが、思わず笑ってしまいました。
これほど「取らぬ狸の皮算用」がフィットするのを久々に見たからです。
あなたは、M&A専任部署に着任してまだ半年ほどで、しかも業者が持ち込んだ売り案件に対するデューデリジェンス的な仕事をしていると思います。
そもそも簿記の知識もおぼつかない状態で売り案件を精査できているかも疑問ですから、おそらく主要業務のほとんどは上司がやっているのではないでしょうか。
そんなあなたが、「M&Aという人の人生を変えてしまう程の重責を担う資格が自分にあるのか」と考えるのは誰がどう見ても滑稽です。
なぜなら、その「重責」と「担う資格」について何ら知りもせず、理解できてもいないからです。
おそらくですが、こじれて大トラブルになった案件の矢面に立ったことはないですよね?
血の気が引くどころか全身が凍りついた感覚。何日も食事が喉を通らない状態。歩いているだけでふらつく感覚。そんな経験をして初めて「重責」や「担い」を理解できるのです。
それから初めて、資格の有無という査定ができる。
あなたは、何の根拠をもって「資格が自分にあるのか」と自分に問うているのですか?
私が笑ってしまった理由が、わかると思います。
あなたは、最近配属されたM&A関連部署とその関係者の華やかさに感化されて、その気になっているだけの「お上りさん」です。米国に移住して半年で「日本はさぁ…」とか言うアホとあまり変わりありません。
経験もなく、何もわかってもいないのに「自分に資格があるのか?」と悩むのは、ほぼ中二病です。
あなたはいま、冷静さを欠いています。
加えて、「M&Aという人の人生を変えてしまう程の重責を担う資格が自分にあるのか」と考える人はM&Aコンサルは絶望的に向いていません。
まず、期待される成果を上げることができません。
彼らは常に実績を求められており、加えてバンバン転籍します。ほとんど職人みたいなものです。
一つの案件で悩んでいては数も捌けませんし、案件をフィニッシュまで持っていくこともできません。いちいち思いを馳せていてはできない仕事です。
そもそも、そんなことを考える必要はないのです。会社を売るのも、会社を買うのも、それぞれの経営者の決断であり、ケツを拭くのも自分達です。M&A業者は売り買いに助力しただけなのです。
そうであるのに、あなたは責任を感じたいと思っている。◯にたいのですか? そんな性根ではパフォーマンスなど絶対に上がりません。
一度冷静になってください。あなたはまだ何も見えていないのです。
二つ目の部分に移ります。
あなたは質問の中で、書きながら思考が整理されてきたのか、最終盤で本音にたどり着いていますね。
あなたは今の自分に対してどうしようもなく自信がないようです。それなのにハードと謳われるM&Aコンサルをやってみたいと言っている。
どうしようもなく矛盾していますし、あなたはそれをバッチリ自覚している。
おそらく、不勉強かつがむしゃらにやれない自分を強制的に変えるために、M&Aコンサルを目指したいのでしょう。
最近、自社がホワイトすぎる若者がブラックを求めて転職しているとの記事を読みました。私は感心したと言うよりは、敏感だなと思いました。
私は「若者は愚かだがバカじゃない」と考えていて、加えてセンサーの塊であるとも思っています。そんな若者が、現在のハラスメント等で縛られてロクな指導もしてもらえない環境に危機感を抱いているのは、とても納得できます。
「このままでは成長することができず、無価値な人間になり、生きていくことができないかもしれない。人生はそんなに甘くないはずだから。」そう感じたのでしょう。
あなたも、もしかしたらそうかもしれませんね。
何の不満もない日々のなかで、音もなく近寄ってくる「見えない危機感」みたいなものを、あなたは敏感に感じ取っている。そして、その声は日増しに大きくなってくる。だから、悩み始めた。
そんな漠然とした危機感が、あなたを動かしつつある。
それは、とても正常なことであり、素晴らしいことだと思います。
あなたは、モヤっとしてはっきり姿を示さないものを見ようとし、その声を全力で聞こうとし、決して無視しない。現にこうやって長文の質問を書いているほどに。
あなたは、とても素晴らしいと思います。
その若さで自分の内なる声を大切にし、自分の覚悟のなさというカッコ悪い部分も真摯に受け止めようとされている。私にはできなかったことです。
あなたは、とてもまともな人です。
それがどれだけの価値があるかは、おそらくもう少し人生を重ねないとわからないかもしれませんね。
それでは回答、というかあなたが依頼された私からの「言葉」をご提示させていただきます。
M&A業界にすぐにダイブするのは悪くはありません。現場で叩き上げてもらうのも一つの方法です。
しかし、あなたが自分で言うように「平凡以下の社会人」であるならやめておいた方がいいです。
体力、精神力が平均以上であることは必須だと思います。特に、頭のタフネスは重要であるように感じます。
うちに営業に来る大手監査法人系のM&Aコンサルは「夜も昼も休日も関係ない仕事ですからww」と笑っていました。私には無理です。コイツらどうかしてんなといつも思ってます。
そんな仕事を遂行するため、プライベートがガタガタになるようでは、その仕事をする意味はありません。仕事は良き人生を送るための手段であり、目的ではないのです。
知識は後で何とかなります。それ以上に必要なのはタフネスです。
仕事もプライベートもこなせるタフネスがある。そしてこれからも維持できる自信がある。そんな修羅道に身を投じる覚悟があるのなら、すぐに転職してもいいでしょう。
しかし、あなたにはその覚悟がない。だから「答えはNOとなってしまいます」とご自身で言っている。
ならば、今は与えられた職務に全力で取り組むべきです。
今の職場で粉になるまで自分を追い込んで働き、学習も人並み以上に行い、プライベートも手を抜かない。
そうやってセルフブラック化し、なお持続できたのなら、転職しても問題ないでしょう。
あなたが本当に欲しいのは、M&Aコンサルとなった自分なんかじゃない。
日々全力で、無我夢中で前向きに仕事に取り組む自分なのでしょう。
そうせざるを得ない状況に自分を放り込みたくなり、M&A業界に憧れたのではないですか?
であれば、転職はごまかしでしかない。
あなたは、今できることを全力でやるべきです。
必要なのは、そんな地味なことを命懸けでやるという「身近な覚悟」です。
転職などという大きく離れた覚悟など必要ありません。
あなたを包む日常を変える覚悟。必要なのはそれです。
日常に没頭してください。それは、仕事とプライベートです。あなたはあまりにもそれらに向き合いきれていないのかもしれません。
得体の知れない何かに自分を変えてもらいたいと願うのをやめましょう。それは愚かな行為です。
自分を変えるのは、自分です。覚悟など、今この瞬間だってすることができます。
覚悟を外部に依存した時点で、それはあなたの人生ではなくなります。あなたの覚悟だから、あなたの人生として受け入れられるのです。
あなたの覚悟が、あなたの人生を彩ることを祈ります。
猫山課長
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