立方体の思い出 / 毎週ショートショートnote

【段ボール】

急に学級閉鎖になった息子を迎えに急いで実家へ向かう。一人暮らしとなった父にあずけて大丈夫だったろうか。
「何この段ボール！」
玄関を開けると大小の段ボールが散乱している。
「ママだ！おかえりー！」
中くらいの段ボールから息子が出てきた。腰につけた紐を追いかけて「ねこ」も。
「これ全部ねこの家だよ。おじいちゃんと作ったんだ。」
「いや、作りすぎでしょ。」
段ボールを避けて進むと、奥のソファに座る父の笑顔がやっと見えた。
「懐かしいなぁ。お前も小さい頃、段ボールで家作ってたな。」
「そうだっけ。」
素気なく言ったが覚えている。新発売のお人形ハウスが欲しかったけれど言えなくて、自分で作ったのだ。
「子供にはたくさん工作させるといいって母さんが言ってたぞ。」
「けどこんなに…誰が片付けるの？」
「そりゃあ…お前だ。散らかすのが子供の仕事、片付けるのは親の仕事だって母さんが」
言ってない！と写真の母の口が動いた。

我が家の猫も段ボール好きですが、入ると凶暴化します。

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