見出し画像

その男はペラペラとよく喋った。自分のやった犯罪を自慢するように、逮捕されてから誰に何を聞かれても詳細に聞かせた。何かを隠すつもりも無いし、罪を軽くしようとも思わなかったので、本当によく喋った。男のやった事は許し難く、以前なら死刑を免れないところだったが、死刑廃止論から法律が変わり、死刑が求刑される事は無くなった。死刑の代わりに特別刑というものが制定されたが、男にとって死刑じゃないなら何でも良かった。

「お前、正直に話せば刑が軽くなるとでも思っているのか?」あまりによく喋るので、そう質問されたが男は笑って言った。

「とんでもない。あれだけの事をやったんだ。特別刑ってやつでしょう。分かってますよ。」反省の欠片もないヘラヘラとした態度はニュースでも取り上げられ、特例として死刑にするべきだと声を上げる者も多数いたが『死刑廃止』に特例など無かった。

「軽く考えているようだが、特別刑は死ぬより辛いらしいぞ。」男は可笑しくてたまらないというように笑い転げた。「死ぬより辛い罰なんてあります?馬鹿馬鹿しい。」

犯行を全て話した男は、当然の如く特別刑S10年となった。もちろん上告などしなかったので刑は速やかに実行された。

刑務官に促されて、刑務所の地下へおりていく。「地下ですか。10年間地下にいる事で反省させようって事ですかねぇ。模範囚だと早く出れたりします?」悪びれる事なく聞いたが刑務官は表情ひとつ変えず、返事もしなかった。地下には特別刑ごとに分かれたドアがあった。

Sと書かれたドアの前まで連れてこられ、男が入ると重たく分厚いドアが閉じられた。部屋の中は薄暗かったが、少しづつ目が慣れてきたので見回すと壁にはツタのような植物がびっしりと生えていた。独房だとは聞いていなかったが、他には誰もいないようだ。いや、どこかでガサっと葉が動く音がした。

「誰かいるのか?」返事は無い。しかし、擦るような音が奥の方から…いや右側の壁の方、いや左だろうか。閉鎖された空間だからか、音のする方が特定できない。

ハッキリとは見えないながらも音がしたような気がする場所を、目を凝らして見ると、葉がカサカサと動いた。葉の影から鱗のような縞模様がチラリと見えた。まさか。男はその場から動かすに足元をゆっくりと見る。

蛇。縞模様、緑色、茶色、太いの、細いの、いったい何匹いるのかわからない、無数の蛇が足元をうねうねと這いまわっていた。

「うわぁっ!!」男は慌てて壁のツタを掴むが、男の体を支える事は出来ず、ずるりと力なく抜けて床へ倒れ込む。男に踏まれた数十匹の蛇が驚いて威嚇したり噛み付いたりしてくる。男は手足をバタつかせながら叫んだ。「助けてくれ、俺は蛇が大嫌いなんだ、見るのも無理なんだ!」男は蛇に全身を這いまわられ、死んだ方がマシだと思った。

「大丈夫だ、毒は抜いてあるから死ぬ事はない。」と特別刑Sの室内に音声が響いた。

え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。