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理科室まがった(青春編) / 毎週ショートショートnote

「どうしたんだよ、理科室。」
体育館の声にも理科室は曲がったままだ。
「いいよな、体育館は。運動部の子が告白したりしてさ。」
「理科室には授業があるだろ。」
玄関が言う。
「玄関だって手紙が入ってたりするじゃないか。僕だって青春のドキドキの場所になりたいんだ。」
黙っていた理科準備室が怒り出した。
「理科室が曲がると困るんだよ。こっちだって青春のドキドキなんか無いよ。」
理科室はフンと鼻を鳴らした。
「準備室で保健の先生と理科の先生がデートの約束してただろ。くそっ。なんで理科室じゃないんだよ。」
図書室や渡り廊下の声にも理科室は曲がったままだ。困り果てたみんなを低い声が一喝した。
「何のために学校に来てるんだ!」
理科室は一瞬びくりとしたが声の主が教室だと分かるとまた曲がった。
「いつも生徒でいっぱいの奴には分からないよ。」
「俺の所には滅多に生徒なんか来ない。みんな浮ついている暇は無いんだぞ。勉強、勉強!」
「お前…生徒指導室か。」
みんなは追い立てられるように持ち場に戻って行った。

#毎週ショートショートnote
#理科室まがった

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