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数字で月の歌を書く

詩から物語に、物語から詩に、という面白い現象が日々起きております。というわけで、今回は詩を6編お送りいたします。

言葉の添え木様願い花様からお題をお借りしました。本当にお題に助けられております。ありがとうございます…!願い花様もTwitterで素敵なお題を出されております。#願い花月香でぜひ検索してみてください(*´▽`*)



数字

いつか1と0の数字になるとしても

思い出を積み上げた

噴水の前で撮った写真

ビニールプールの記憶

衛星に託して打ち上げて


いつか宇宙の端に着いたら

0と1の数字になった思い出を

また僕たち積み上げる

さようなら

待っていて



月と流星群(願い花様からお題を頂きました)

小さくて大きな満月は

波間に光るホタルイカと

泳ぐ夢を見ていたり


塵の道から生まれる流星群は

砂埃まみれで笑う僕たちに向かって

願いを三回唱えていたり


雄大な月と流星群は祈る

ささやかな幸福を

百億光年の先も、ずっと



書く

身から涌き出る動詞、助詞、形容詞

書けるだけ書く

書き留められず

流れていく言葉を見送りながら

書けなくなる日に怯えながら


終わり、と書けば

呆けて夏のアルタイル

星座と化学式が重なり

新しい物語

始まり始まり



月の歌

鉄塔に満月がかかる時

光の波は音波になって広がる

テレビから、ラジオから

スマホから、君の口から

月の歌


月の歌はひょっこり、囁くように響く

耳を澄ませて

小さく口ずさんで



現在地

地図の上で、真っ赤に光る現在地

右向き

左向き

上向き

後ろ向き

どこにも無い現在地

地図の上の、堂々巡りは何度めか


それでも見えない現在地

同じようで、同じじゃない

りんご飴掲げて歩いてく

現在地の無い道を

地図の無い場所へ



キャベツ(オリジナルお題)

一刀両断された姿から

意味もなく

細切れにされるキャベツ


ドレッシングもマヨネーズもかけられず

ただただ、咀嚼されるキャベツ


君に罪は無い

味もほぼ無い

無知蒙昧の私

無味無臭の君


君の食物繊維とビタミンが

どうしても必要と言うわけじゃない

君がいつもお手頃価格だからというわけでもない

扱いやすいからというわけでもない


君が好きな理由さえ

特に無し

でも好き

キャベツ


お気に入りいただけましたら、よろしくお願いいたします。作品で還元できるように精進いたします。