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桃のスペクトラムの理由は星

寒くなったり暑くなったりで、本当に季節が行方不明でありますね。一昨日マヨネーズが行方不明になりまして、探したら冷凍庫にありました。私の頭も不安定……

今回は言葉の添え木様からお題を頂いて作った詩2編と、吟遊詩人K.様の企画「卒業詩祭り」に投稿した詩1編、hoshiboshi様主催の140字小説コンテスト「月々の星々」に投稿した作品を3つ、お送りいたします。

※「月々の星々」は、現在「春の星々140字小説コンテスト」というお名前に変わっております。



スペクトラム

スペクトラムの端っこの暗闇は夜色

夜色の花は美しい

知っているから
実は真夜中に新しい日が始まることを

責めないから
黄泉を覗いてしまう人間を

静かに待っているから
全ての色が混ざる瞬間を


回る色のスペクトラム

咲いた咲いた夜色の花

白夜が待っているよ



(吟遊詩人K.様の企画「卒業詩祭り」に投稿)

すっかり別人でしょう?

春嵐で煙に巻かれて
もう視界は桃世界


すっかり別人でしょうとも

梅、桃、桜へ三段跳び

切なさと共に

一瞬で一新

威風堂々

三つ子の花盛り


実は同一人物の花盛り
すっかり化かされたでしょう?



理由

特に理由なく
鶴に変身するチョコの包み紙

手の甲に乗せられて


桜の花びら何枚分かな

黙って消えた梅の花びらは

折り鶴のお腹にいるのかな


理由は後から付けてもいい

確かめても振り返らなくてもいい

特に理由はなく

私は飛行機を折ることにした



140字小説コンテスト「月々の星々」投稿作品(12月の星々、テーマ「調」、水原月として投稿)

帰宅してすぐ、飴の作り方を調べた。水飴と砂糖と水を溶かして固めるだけらしい。
さっそく鍋で溶かして、バットに移す。固まらないうちに、星屑を混ぜる。仕上げは冷蔵庫。
ほっとした。明日、遠くへ行く冷え性の君に、できたてのカイロ飴を贈れるだろう。星屑のカイロ飴、上手くできますように。



140字小説コンテスト「月々の星々」投稿作品(12月の星々、テーマ「調」、水原月として投稿)

ぽーん、ぽーんと琴を調弦する音が小さく響く。囁くような音だ。息をひそめていると音は止み、襖が突然開いた。
珍しく、開きっぱなし。僕は部屋に忍び込み、懐かしい琴に触れた。気付けば、夢中になって弾いていた。
「座敷童子の春の海か。縁起がいいねぇ」階下から、宿の常連さんの声がする。



140字小説コンテスト「月々の星々」投稿作品(1月の星々、テーマ「定」、水原月として投稿)

朝方、裏山から狸らしき獣が降りてきた。玄関に座り、おでん、と鳴いた。
夕方になっても、獣は座っていた。おでん、とまた鳴く。
結局、根負けして家に入れた。定規で好物のはんぺんを切り分ける。綺麗に切れた。大根や卵、こんにゃくなどを煮込んだ出汁を獣に味見させると、満足そうに唸った。



お気に入りいただけましたら、よろしくお願いいたします。作品で還元できるように精進いたします。