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音の記憶の結び目は龍、傘で選択する今日の色

Twitterでご活躍されている言葉の添え木様が毎日出されているお題を頂き、作った詩5編とオリジナルお題の詩1編をお送りいたします。

言葉の添え木様は現在、「千本の添え木」という楽しい自由参加型企画も計画されています。ご興味ある方は、ぜひぜひ言葉の添え木様のTwitterアカウントをチェックしてみてください。




結び目

舟をもやう

嵐で重荷が吹き飛んで
空になった舟

流されていかないように

またすぐ海に出られるように

舟をもやう

もやいの結び目は
固いようで柔らかい

もやいの結び目は

誰の舟にも



選択

振り払って
走って、走って
足がもつれて
転んだら

選ばなかったこと

選べなかったこと

押し寄せてきて
傷は
ジクジク、ジクジク



振り払う選択を

走り抜ける選択を

何度でも

いつまでも



今日の色

世界の色は
毎日色とりどりに七変化

今日の色は

誰も知らない冷たい色であり
薄いラピスラズリ色であり
泣き笑いの涙の色であり
ただの透明であり
水の色
水色



傘で飛べなくなったなら
傘を飛ばそう

凧の部品にした傘
風をよく掴めるように
帆は大きくしっかり張って

離陸、出航

ひっぱれ、ひっぱれ

傘よ飛べ飛べ

ひっぱれ、ひっぱれ

飛べ飛べ傘よ



音の記憶

おばあちゃんは最近よく謝る

忘れてしまって、ごめんね
忘れてしまうの、ごめんね

夏も近づく八十八夜

おばあちゃんは春によく歌う
雪やこんこも、赤とんぼも

音の記憶は連なるから
忘れても心配ないね

夏から冬に、秋から春に

産声から今日の歌声まで



(オリジナルお題)

透明な龍は
潮の満ち引きで
彼岸と此岸を自由自在に行ったり来たり

風と近況報告
雲の上に寝ころんで
山の野花の香りを嗅ぐ
川の形に合わせて体を曲げて

透明な龍は
気まぐれにヒト恋しくなって
気付かれないように
こっそりと灯篭を辿って
眠るあなたの横へ

あなたの涙の痕を
ぼんやり眺めていたりする

帰る前
あなたの手に透明な鱗を一枚
残していたりする


お気に入りいただけましたら、よろしくお願いいたします。作品で還元できるように精進いたします。