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♬ 『ワルツ第9番』(ショパン)

ある時、この曲の最初の、半音で下降する3つの音を〝美しいため息〟のようだ、と思った。
憂鬱なため息ではなくて、例えば恋をした時や、何かにうっとりした時に出るような、ため息。
私は、この3つの音を、そんなふうに弾きたいと思った。
それが、この曲を練習しようと思ったきっかけ。

初日は手持ちの楽譜(いわゆるフォンタナ版)で練習を開始。翌日に原典版の楽譜を手に入れることができたので、この機会に弾き比べてみることにした。

出版社によって、音やアーティキュレーションが少し違っていたりするのはよくあることだけど、今回は、2つの楽譜があまりにも違っていて驚いた。

ショパンが書いた楽譜である原典版を弾くのがいいとは思うけれど、聴き馴染みのあるフォンタナ版に比べると、原典版の方は耳慣れないせいか、正直ちょっと違和感がある。
でも、どうしても捨てがたい。いっそのこと混ぜて弾いてしまおうか・・・?
私はなかなか決めることができずに、しばらくの間、2つの楽譜の間を行ったり来たりしていた。

ふと、この曲が「別れのワルツ」と呼ばれることがあるのを思い出して、その由来についてインターネットで調べてみることにした。
するとそこには
〝婚約者であったマリア・ヴォジンスカに贈ったワルツだが、その後、二人は別れてしまったので「別れのワルツ」と呼ばれるようになった。〟
という内容のことが書かれてあり、あまりに雑なネーミングに呆れてしまったのだけれど・・・
この話が本当なら、ショパンがこの曲を作曲した動機として「別れ」は関係がなかったということになる。
それどころか、むしろ幸せな気持ちで書かれたものだったのでは?

そう思ったら、いろいろと想像が膨らんできた。
そしてもう一度、譜面に向き合ったら、いろんなことが腑に落ちて、自然に選ぶことができた。

もし、私の頭の中に違う想像が膨らんでいたら、違った選択をしていたかもしれない。

YouTubeの演奏動画です。良かったらお聴きください。↓

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