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サスティナブルを実現する最も重要なこと

ネコパンダの故郷は宮城県石巻市です。
東日本大震災の折に、大きな被害を受けた地域です。
隣町に女川町という町があり、そこも同様に大きな被害を受けました。

女川町は、内陸に土地を持っている石巻市に比べて平地が少なく、
当時仮設住宅を建設するのさえ、平坦な土地の確保に困難をきたしました。

そんな土地に仮設住宅を設計したのが、建築家の坂茂 さんです。

坂茂 さんは少ない土地を有効活用するために、仮設住宅ではありえない、3階建ての仮設住宅を建設しました。もちろん、若い世帯の方が上層階に住み、年配の方が多い世帯は地上階に住んだと思います。

で、それ以上にすごいと感じたのが、内装とお役目が終わった後の活用です。

まず、一般的な仮設住宅の話をします。
ネコパンダの実家の家族も一時期石巻市内の仮説に半年ほど滞在し、その様子を知っているのでわかるのですが、とにかく簡素ではありました。
それでも日本の政府の仮設住宅の対応は他国に比べて格段に優秀だと思います。予算や時間を考慮して、そういう作りになったとしても「普通に住める」というレベルを維持できるのは日本の素晴らしい一面です。

それでも、早く移り住みたかった、という感じです。
不便さは今まで一軒家で住んでいた人からすればやはり壁の薄さや、全体的な使い勝手の悪さは目立ちました。

そこに来て、女川町の仮設住宅の何がすごいかって。

「これからもここに住みたい」という意見が多数あった。

被災者のかたが、そう感じていたそうです。
つまり、とっとと出たいと普通は思うであろう仮設住宅に、これからも住みたいと思ってくれる人がたくさんいた。

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みてください、この内装。無印良品のお店なのかと思います。

さらにさらに、この仮設住宅はコンテナを積んで作る設計になっていたので、仮設住宅としてお役目を終えた後は、コンテナごとに解体して、スポーツ施設の宿泊所などに活用しているそうです。

普通、仮設住宅はその構造上、住む人がいなくなったら解体です。

それが、まさに再利用されているのです。
これこそ、サスティナブルなのではないでしょうか。

坂さんは途上国でも災害用の簡易住宅を支援しています。

しかも、その素材は、なんと「紙」。
驚きですよね。
でも紙も加工次第ではものすごい強度を発揮します。
サランラップの芯って、紙ですがめっちゃ丈夫じゃないですか?
あれに耐水・および耐熱加工を施すと、かなりの強度を誇るそうです。
何より、軽い。
お役目が終わったら紙なのでリサイクルに回せる

現地の大学生とか集めて資材を運べるし、特殊スキルがなくても簡単に組み立てられるので、人手に困って建設が進まない、ということがないそうです。

それで、仮設なのに、ずっとここに住みたいとやっぱり言われているそうです。

坂さんの言葉で、とても印象に残っているものがあります。それはTEDのスピーチで語っていたものですが

「何が恒久的で何が仮説なのか疑問がわきます。紙でできた建物であっても、人々に愛されれば恒久的なものになり得ますが、コンクリート造りでも金儲けの為につくると一時的なもの(仮設)になるのです。」

という言葉です。

仮設住宅でもそこに人が住むこと、人が快適に過ごせること、すなわち人に愛される建築を目指している人の言葉なのだと思います。

古い趣のある家屋が、長らくその姿を保っているのは、その家屋が住む人のために、住む家族が安らかに過ごすために、そこに住む人のためを考えて建てられたからだとおもます。
一方でバブル期に儲かるからという感じで建てたような鉄筋コンクリート、雑居ビルなんかは見ていてすぐわかりますよね。

解体の費用も高くつくという感じです。再利用できないので。

結局お金儲けのためだけに動くことがどれだけ後になってツケを払わされるか。

建築だけでないと思います。
どんなビジネスであっても、仕事であっても、人に愛される、つまり感謝されるようなビジネスモデルであれば、それが廃れることはありません。
ピンチになっても絶対に誰かが助けてくれる。

そういう輪が広がって、支え合って、相互扶助という経済活動が活性化される。日本は元々そういう思想や、それに基づいた技術を極めることが得意な民族です。

建築は時に、やはり一定の人間の地位や権力、名声を満たすために使われてしまうそうです。
坂さんは、災害時にそんな権力のために被災者に必要なものが届かないのは間違っているし、建物の下敷きになって誰かが死んだらそれは建築家の責任だと語っています。

こんな精神が日本の建築界では息づいているのです。

日本こそ、最もサスティナブルに近い心を持っていると、私はそう確信しています。


坂茂さん:TEDトーク
https://www.ted.com/talks/shigeru_ban_emergency_shelters_made_from_paper/transcript?language=ja#t-430448


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