見出し画像

新クトゥルフシナリオ 「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」(月の裏側)

作:ねこパン
2021/11/01

PDF版がほしい人はここからダウンロードしてください。
https://nekopa.booth.pm/items/4114748


【概要】西暦2040年。探索者たちは月の裏側に存在する月面基地で活動を行う宇宙飛行士たちである。ある日、仲間の宇宙飛行士が任務中に姿を消した。その裏では人類の知識を超える科学力を誇る神話的存在が再び地球の覇権を握るため暗躍していた。探索者たちは否応なくその戦いに巻き込まれていく。
 
【使用ルール】新クトゥルフ神話TRPG基本ルールブック、クトゥルフ2020
 
【PL人数】プレイヤー人数は4人以下。キャラクター作成に1時間、プレー時間はオンラインで5時間、オフライン3時間程度。
 
【前提】西暦2040年。 2021年の現代より科学技術が発展している。このころは世界全体が宇宙への旅立ちへの情熱が再燃しており、各国が共同で、手始めに月面に人類が定住することを目指した月面移住プロジェクトが着々と進行していた。
その中心となっているのは、NASAと各国の宇宙担当部門(日本でいうとJAXA)および、実質的なスポンサーとしての世界的大企業コングロマリットであるZZZ社(トリプルズィー社)である。
 
探索者たちは職業としては全員宇宙飛行士ということになるが、クトゥルフ2020には職業例として宇宙飛行士が存在しない。今回、宇宙飛行士探索者作成特別ルールとして、探索者たちのEDUは80〜100とする。(EDU:(1d6+14)x5)
国籍と性別は自由で、年齢は30~40歳程度を目安に。母国語も自由だ。探索者たちは宇宙飛行士とはいえそのバックボーンはバラバラであり、前職から転職して宇宙飛行士になった。バックボーンの技能に加え<科学(宇宙)><操縦(宇宙船)><英語>の中から好きな技能をEDU側のポイントで取得する。ただし必ず英語だけは最低50%以上習得すること。
<科学(宇宙)><操縦(宇宙船)>技能は、両方取得しても、どちらか1つだけ取得でもよい。
 
【探索者のバックボーン】ページ数はクトゥルフ2020のもの
・PC1 パイロット(P21)○必
・PC2 医師(P5)
・PC3 探検家(冒険家教授)(P11)
・PC4 ZZZ社の社員(エンジニア)(P17)○必
 
その他、PLが希望するバックボーンを持たせてもよいが、宇宙飛行士らしくないものは却下すること。また、○必のついているパイロットとZZZ社員だけは必ずパーティーに含めること。
宇宙飛行士としてのキャリアの多寡はPLが任意で決めてよいが、どの場合でも宇宙ステーションでの滞在経験や地上勤務だけにすること。つまり、月に上陸するのは今回が初めてということである。
※PC4だけは、前職ではなく現役でZZZ社社員で、兼宇宙飛行士である。
 
【トリプルズィー(ZZZ)社】ZZZ社は、今回のプロジェクトでは調達・開発を担当している。世界的大企業として多角経営をしていることを生かして、さまざまな関連会社から仕入れてきた物品の供給を一手に引き受けている。月面基地の建屋で使用している柱・壁・屋根といった建築資材、エネルギー部門の子会社では水・酸素・水素を納入している。月面での移動に使用する月面ビークルや宇宙服もZZZ社で開発したものである。
 
【各キャラクター向けハンドアウト】
「PC1 パイロット」
君は腕利きのパイロットだ。5年前まで山岳救助隊のヘリコプターのエースパイロットとして活躍していた。何度となく危険な状況にさらされてきたが、君はあきらめずに任務に取り組み、何人もの命を救ってきた。そんな折、君はある募集広告を見つける。「宇宙飛行士募集!」君はそれを見て幼い頃の夢を思い出し、迷わず応募した。5年間の厳しい訓練に耐え、君はついに宇宙に飛び出した。今度の任務も成功させる。1人の死者も出さない。絶対にだ。
 
「PC2 医師」
あなたは医師だ。かつては国境なき医師団に所属し、紛争地域や難民キャンプなどで困難な医療活動に従事してきた。あなたはケガ人や病人を見ると放っておけない性分なのだ。医師団での任務が一区切りし、帰国した折に見つけた求人広告。「宇宙医師募集」あなたの生活はまだしばらく落ち着きそうにない。
 
「PC3 探検家(冒険家教授)」
あなたはとある大学で○○学(PLが決定)を研究している教授だ。しかし最近は予算獲得が難しく、研究そのものより予算確保のためのプレゼン資料作り、スポンサー探しに奔走するはめになり肝心の研究がおろそかになってしまっている。そんな折ZZZ社から連絡が入る。なんと破格の研究費を援助してくれるという申し出だった。それに対して出された条件は、あなたの実験を宇宙で実施し、そのデータをZZZ社に提供してほしいというものだった。もちろん費用は全額ZZZ社持ちで、研究成果はあなたのものだ。あなたは一も二もなくその条件に飛びついた。
 
「PC4 ZZZ社の社員」
いままで地球から観測することが困難だった、月の裏側(ダークサイド・オブ・ザ・ムーン)に観測隊を送り込むことに成功したZZZ社。5年前、いまだ人類の知りえない超高度テクノロジーを有する知的生命体の痕跡を月の裏側に発見した。
5年前に活動していた月面第1基地は、何らかの理由で現在は放棄されている。3年前、そこから離れた場所に第2基地が建築され、現在はそちらを使用している。5年前のデータが第1基地に残されていると考えられているが、いまだにそれは入手できていない。君はZZZ社から第1基地のデータの回収を命じられた。
 
※ハンドアウトを他のPLに開示するかどうかは、PL自身で判断すること。
 
【月の環境】月の重力は地球の6分の1。大気は存在せず真空である。昼間は14日間続き、夜も14日間続く。昼間の温度は110℃、夜の温度はマイナス170℃。地表は存在し石や砂に覆われている。その中にはわずかながら水分も確認されている。
 
【月面基地】探索者たちの生活している月面基地は、月の裏側(ダークサイド・オブ・ザ・ムーン)にある。
月面基地は2重ドアでエアロックされており、室内は1気圧が保たれている。基地内の空気は地球上の大気と同じ割合でブレンドされており、酸素タンクなしでも呼吸できるようになっている。また床の特殊構造で宙に浮かずに歩けるようになっている。重力が地球の6分の1であることを除けば、月面基地内ではほとんど普通に暮らすことができる。
 
居住区の屋外には大型のアンテナがあり、それにつながった通信機で第1基地(放棄済)や宇宙服を着た隊員たちとの通信が可能だ。ただし後述するが、地球との交信は不可能である。
居住区とは別に倉庫が存在する。倉庫には主に地球から送られてくる食料、水、酸素が納められている。わずかながら武器もある。
 
「包丁」3本 基本ルールブックP401の中型ナイフ。
「非常用斧」 緊急時にドアを破るため、各ドア脇に1本ずつ設置してある。基本ルールブックP401の大斧。
「ピストル」2挺 宇宙空間でも発射できるよう薬莢内に火薬を燃焼させるには十分な量の圧縮酸素が充填されている拳銃。開発したのはもちろんZZZ社。弾数は8発。それ以外のデータは基本ルールブックP402の45口径オートマチックに準ずる。
「ビデオカメラ」2台 宇宙空間でも動作するビデオカメラ。録画・録音・再生が可能。録画時間1分でバッテリー1マス消耗。撮影しているものをリアルタイムで基地に送信したり、他の宇宙飛行士に送信するためには、1回1マス余分にバッテリーを消耗する。つまり1分で2マスのバッテリーを使う。
 
※作用反作用の法則…低重力空間で拳銃を発射したり武器を振るった場合に発生する「作用反作用の法則」についての扱いはキーパーに一任する。「ある」でもいいし「ない」でもよい。事前にどうするかキーパーからPLたちに伝えておくとよい。
もし私がキーパーの場合、2階や3階の高さまで平気で<跳躍>できる、とか岩場や壁を蹴って横ジャンプ30mくらいできたり、ナイフなどの武器を<投擲>した場合50m以上飛ぶ、アイテムをかなり長い距離で投げ渡せる、といったような低重力の恩恵を受けることは許可して、銃を撃ったり殴ったりした時の作用反作用はないものとする、というように、PLにとって都合のいいようにするだろう。
 
「宇宙服」 ヘルメットからスーツ、手袋、ブーツまで一揃いになっている。装甲値:5。数量は人数分×2着。人数分(探索者の人数+エドガーとジェシーの分)が居住区にあり、また同じ数だけが倉庫に保管してある。着るのに10分程度かかる。一人で脱ぎ着することが可能だ。通常、酸素タンクを装着して使用する(タンクなしで着用した場合単なる装甲として扱う)。酸素タンクは宇宙空間で2時間呼吸できる。トラブルがあった時のために予備酸素タンクがつながっていて、そちらは20分もつ。酸素タンクの交換には2戦闘ラウンドかかり、他人に手伝ってもらった場合1ラウンドで交換できる。技能は不要。タンクの在庫は人数分x4。人数分が居住区内の宇宙服と同じ位置に置いてあり、残りが倉庫に置いてある。切れた酸素タンクは基地で再充填することも可能だ。宇宙服の手・足・腰の各所にエアー放出口が付いており、そこから勢いよく酸素を放出することで大ジャンプしたり高速方向転換やホバリングをすることができる。敵を吹き飛ばすことに使えることにしてよい。エアー放出口からの放出1回に酸素を1マス使用する。宇宙空間で装甲値:5を超えるダメージを受けた場合、宇宙服に穴が開いたものとする。穴が開くとそこから酸素が漏れ出し1戦闘ラウンドに1マス酸素を減らすことになる。ポケットの中にガムテープ状の補修テープが入っており、穴の補修が可能。補修には技能は必要なく宣言して1行動使うだけでよい。補修が終われば少なくともそこからは酸素は漏れなくなる。複数個の穴が開いていない限り…。穴が複数でも漏れる酸素は1マス/ラウンドだ。
 
※宇宙での生活について科学的におかしい点を指摘するPLには、それらの問題はすべて2040年の科学力で解決していると伝えること。
 
これも今回限りの特別ルールとして、宇宙服の酸素タンク残量と、バッテリー残量をキャラクターシートに書いたマス目で管理する。
 
酸素14マス、バッテリー10マスとする。
酸素:□□□□□□□□□□□□ □□
電池:□□□□□□□□□□
 
使用する都度、マス目にチェック■を入れること。
 
酸素は10分ごとに1マス減らしていく。1マス=10分なので、140分(2時間20分)もつことになる。ただし、激しい運動をした場合は5分で1マス減らす。運動した分酸素を消耗してしまうからだ。また、戦闘や事故などで酸素タンクやヘルメットにダメージを受けた場合そこから酸素が漏れてしまうようになるため5分で1マスずつ酸素を減らしていくこと。(戦闘中の場合1マス/1ラウンド)酸素タンクがなくなった探索者は窒息のダメージを受ける(基本ルールブックP120 中程度の負傷(真空にさらされる)のダメージ参照)
 
宇宙服のヘルメットには、近距離用通信機と、遠距離用通信機が付いている。(耳の位置にスピーカー、口元にマイク)近距離通信はおおむね20m以内、遠距離通信は環境状態にもよるが数kmから数十kmまで届く。
近距離通信ではバッテリーは消耗しない。遠距離通信1回(片道)では送信した側のバッテリー1マスを使用する。受信側はバッテリーを消耗しない。また、月面基地側もバッテリーは消耗しない。同時通話はできずトランシーバーのように交互に送受信する片道通話方式だ。
 
バッテリーは宇宙服に最大10個取り付けることができる。宇宙服に取り付けていない状態のバッテリーを持ち運ぶことも可能だ。バッテリーは月面ビークルと共通規格であり、ビークルから外したバッテリーを宇宙服に取り付けることも、その逆も可能だ。バッテリーの数量は人数分x20個と、月面ビークル2台用にある40個である。
 
※そう、このシナリオは、クトゥルフのホラーゲームに見せかけた、その実態はリソース管理ゲームなのである。
 
「月面ビークル」 最高速度20km/h、巡航速度10km/h、6人乗り+荷台。(最大乗車人数は探索者数+エドガーとジェシー2人を足した人数とすること)太陽電池で走行するので、昼間であれば航続距離については考えなくともよい。(ずっと走行し続けられる)ただし夜はバッテリーを使用しないと走行できない。バッテリーは宇宙服のものと共通規格で、20マス分ある。通常走行の場合5kmでバッテリーを1マス消耗する。高速で移動した場合は5kmで2マスだ。取り外したバッテリーは宇宙服でも使用できる。逆に宇宙服から取り外したバッテリーも月面ビークルで使用できる。何マス分移転させるかをキーパーに申告すること。
 
ビークルは第2基地に2台ある。(シナリオ冒頭でNPCがその内の1台に乗って出発するので、探索者たちが当初使用できるのは1台)月面ビークルを「武器」として使用した場合(つまりビークルで撥ねた場合のダメージは1D10。命中判定には<運転(自動車)>を使用)
 
月の表側にある第1基地には、かつて使用されていた月面ビークルが1台残されている。壊れているので<機械修理>か<電気修理>に成功しないと走行させられない。修理後もバッテリーは空なので、充電済のバッテリー(宇宙服か第2の月面ビークルから持ってきたもの)をつなぐ必要がある。太陽電池は生きているので日なたであれば走行可能だ。※ただし本シナリオはほとんどが夜の場面である。
 
「通信ロボット」第2基地の通信室で留守番をするロボット。月面基地の外から通信機で呼び掛けると、簡単な受け答えができる。スターウォーズやインターステラーで出てくるようなアクティブに宇宙空間で活動可能なロボットではなく、第2基地の外に出ることはできない。外に出た場合破損して動かなくなる。
 
※これは、月面基地の外に出たがらない、留守番したがる探索者対策のためのロボットである。このロボットがあれば留守番役の探索者は不要だ。留守番役のNPCを置くと、「代わりにエドガーとジェシーを迎えに行ってきて」と言い出すPLが出かねないので、基地から出られないロボットとした。
 
 
【導入】君たちは月面で活動をしている宇宙飛行士のチームだ。探索者4人に加えNPCのエドガーとジェシーの全部で6人いる。君たちの任務はメンバーによってさまざまだが、究極的には月面定住化に向けての実証実験という趣旨なので、月面に長く滞在すること自体が根本的な目的である。いくつかある個別のミッションもおおむね順調に消化できているようだ。パイロットは安全確実に操縦する腕を磨き、教授は月面のサンプルを回収したり実験を行い必要なデータを収集、医師は皆の健康を管理し宇宙が人体に与える影響を確認。エンジニアは各種機材のメンテナンスを行い安全な月面活動をサポートする。
 
そろそろ次の食糧などが資材ポッドで地球から送られてくるころだ。資材ポッドは2週間に1回地球から発射され、月へと到着する。資材ポッドには主に食料と水、酸素などが積み込まれている。
 
探索者たちが現在滞在している月面基地は月の裏側にあるため、地球とのダイレクトの交信ができない。月の表側に古い第1基地があり、そこはいまとなっては放棄されていて人は暮らしていないのだが…、通信機だけが稼働しており、地球との連絡のためだけに稀に使用されている。
 
まとめると、
・探索者たちが暮らしている第2基地と地球の通信は不可。
・いまは使われていない第1基地と地球の通信は可能。
・第2基地と第1基地の通信は可能だが、第1基地には現在は誰もいないため現実的には難しい。誰かが第1に居れば可能。
 
資材ポッドは、毎回比較的第2基地に近い所に投下されるようにはなっているが、落下時の衝突の危険を避けるために近すぎない位置に届く。落下後はビーコンが作動し資材ポッドの位置が分かる。2週間に1回、第2基地からそれを取りに行くという任務がある。今回その当番なのが、エドガーとジェシーだ。2人ともベテラン宇宙飛行士で、月面滞在歴も探索者たちより長く、資材ポッド回収任務も何度となく担当している。
 
エドガーとジェシーは1時間ほど前に月面ビークルで出発し、
 
エドガー「(ザ…ザザー)こちらエドガー(ザザ…)資材ポッドの投下場所に到着した。回収してこれより帰還する。オーバー(プツン)」
 
という通信を残したあと…、消息を、絶った。
 
※この箇所は本シナリオのポイントなので、キーパーは情感をこめて語ること。
 
【導入後】宇宙服の酸素タンクの量は2時間と少し。1時間経っているので残り約1時間分だ(6マス減少)。
 
【エドガーとジェシーを迎えに行かないと】地球から送られてくる食料と水が手に入らない。残りの食料と水で、次の資材ポッドが到着する2週間後まで待たなければならない。月の昼は14日間続き、次の14日間は夜である。つまり月の1日は地球時間の28日間なのだが、折悪いことにエドガーとジェシーが受け取りに行った資材は、月の夕方受取なのである。つまりこれから宇宙飛行士たちは資材を受け取れないまま14日間の長い夜を過ごすことになる。現在第2にある資材のストックは約2週間分。2週間後の次の受け取りまで何もしない場合、ストックはなくなる。
 
【エドガーとジェシーを迎えに行く】探索者たちはエドガーとジェシーを迎えに行き、資材も回収しようとするだろう。キーパーは探索者全員で迎えに行くよう誘導すること。月面基地の通信室には留守番ロボットがいて、誰かが居残らなくても簡単な通信が可能であるということ、資材の残りストック的に今回の受け取りに失敗するとピンチであること、またエドガーとジェシーが何らかのトラブルに巻き込まれている可能性が高いので助けるための人手は多い方がいいということをPLたちに伝える。
 
注意しなければならないのが、上記したように、今回の受け取りが14日目の受け取りだということだ。つまりもうすぐ(15日になると)月はマイナス170℃の長い夜を迎える。夜になると太陽光発電システムは動かなくなり、月面ビークルはバッテリーを使用しないと走行できない。
 
エドガーとジェシーが出発したのは日没の4時間前のため日中活動可能なのは残り4時間弱だ。
ただし、夜になってもまったく活動ができなくなるわけではない。太陽光発電が動作しなくなるのと、夜暗くて見えにくくなる、気温がマイナス170℃になるという障害はあるが、宇宙服と酸素タンクがあれば活動しようと思えば可能である。キーパーとPLは酸素と電池の残量管理を忘れないこと。
 
【資材ポッドの位置を探る】月にはGPSがないため、資材ポッドから発信される微弱電波(ビーコン)を頼りに、資材ポッドの位置を探し当てるしかない。微弱電波を受信する受信機は、簡単にいえばドラゴンボールのドラゴンレーダーを思い浮かべてほしい。受信機を操作する探索者は、<ナビゲート>を振ること。成功すると、資材ポッドの位置が分かる。


【資材ポッドの位置】月面ビークルを使用して、おおむね30分から1時間あれば到着できそうな距離であることが分かる。第2基地からの距離でいうと10km程度離れた場所だ。PLたちは、ここで「何を持っていくか」を相談して決めること。
 
【月面ビークルの運転】操縦している人が、<運転(自動車)>を振る。成功すれば問題なく30分程度で資材ポッドの位置まで到着する。失敗した場合1時間かかる。エドガーとジェシー含め全員の酸素マスを移動にかかった時間分減らすこと。失敗の場合プッシュロールも可能で、プッシュに成功すると30分で到着したことにする。ただしプッシュに失敗すると月面ビークルの電源が突然OFFになって停車してしまう。これはかなり危険なのでプッシュロールを希望するPLには必ず伝えること。<電気修理>に成功すると再び電源を入れることができる。修理には20分かかる。全員の酸素マスを2個消耗する。
 
【資材ポッド】<ナビゲート>成功で、資材ポッドの脇には月面ビークルのものと思われるタイヤ痕が残っている。ビークルは見当たらない。<目星>に成功しても、周辺にはエドガーとジェシーの姿は見当たらない。
 
キーパーは重々しくこう宣言する。
「エドガーとジェシーは資材ポッドに到着するまでに1時間を要したので、まずそれで酸素を6マス消耗している。君たちがここに到着するまでに30分(1時間)かかっているので、それに加えて3(6)マス、合計で9(12)マスの酸素を失っているということになる。宇宙服の酸素タンクは14マスしかないので残り5(2)マス。非常に危険だ」
 
【資材ポッド】<目星>成功で、資材ポッドは、フタが開いた状態で放置されていることが分かる。資材ポッドは大きさ3m四方くらいのかなり大きな金属のボックスで、中には食料・水・酸素タンクがあるが、おそらくは手つかずのままのように見える。中身が少しだけふわふわと浮いているような状況だと分かる。ポッド本体は非常に大きいので月面ビークルに載せることは難しく、中身の資材だけしか運ぶことはできない。
 
【周辺】資材ポッドはちょうど浅い谷のような位置に落下していて、道なりにゆるやかに下っていった底にある。小高い丘に囲まれている、といった状況だ。<ナビゲート>に成功すると、月面ビークルのタイヤ痕が谷に向かって続いていて、資材ポッドまで続いているのが見える。タイヤ痕は資材ポッドの脇でいったん停まりそこからさらに先に伸び、別の方角に進んでいき地平線で見えなくなるようだ。
ここで、<目星>に成功した探索者は、丘の方から「嫌な予感」めいたものを感じる。
 
【無残な姿】嫌な予感に従って丘の方に移動してみると、その岩場の影に無残な死体となっているエドガーを発見する。宇宙服が破られ、ヘルメットも外され、引きずり出されたエドガーは、110℃の日光に熱せられ、あっという間に血液が沸騰し、脳が煮えて頭蓋骨の中で爆発、皮膚は発火して眼球は飛び出した悲惨な姿になっていたのである。この姿を見てしまった探索者たちは<正気度>を振る。成功したら0、失敗したら1D3点の正気度を減らす。
 
【もうあまり時間はない】きちんとPLたちが残り酸素をマネジメントをしているようであれば、先に彼らの方が気づくだろうが、もし気づいていないようであれば、キーパーはここで警告すること。
「もうあまり時間はない。酸素が少ない。そして太陽が沈むまで残り3時間程度だ。日没すると太陽電池が使えなくなり月面ビークルはバッテリー駆動になる」
 
探索者たちは、ここに来るまでだけで最低でも3(6)マス程度の酸素を失っていて、エドガーとジェシーを探すのに何分間かけたかは分からないが、それでも10分毎に1マスの酸素を消耗するからだ。
 
【ジェシー】<目星>成功でエドガーの死体から少し離れた場所に、脱ぎ捨てられた宇宙服があり、左胸のネームタグに「ジェシー」と書いてあることが分かる。ジェシー本人の姿は見えない。
 
【真相】ジェシーはZZZ社の上級社員で、第1基地に蛇人間の超技術の源が記されている金属盤を隠していた。(ただし、ジェシーとPC4はお互いがZZZ社社員であることは知らないものとする)偶然金属盤のことを知ったエドガーが、今回の資材ポッドまでの移動中に、ジェシーに「こんな金属盤を第1基地で見つけた」と話した。秘密を知られたと思ったジェシーはその場でエドガーを殺害し、自分も被害に遭ったかのように見せかけるため宇宙服だけ残して逃亡した。(蛇人間の技術である生体宇宙服により宇宙服なしで月面空間で生存できる)いまは蛇人間の本拠地に身を潜めている。
実はZZZ社は蛇人間を信奉しており、その力で地球を支配しようとしている。実際、ZZZ社の科学技術の進化速度には妙におかしなところがあり、2040年とはいえ急激に発展しすぎている。蛇人間から与えられた超宇宙的な知識により、ZZZ社は地球人類を超えた科学力を手に入れてしまっているのだ。おかげでZZZ社は超大企業に成長し、かなりの影響力を持つようになっており、地球を支配するという欲望はある程度のレベルまで成功しつつある、といえる。
第2基地と第1基地、蛇人間の本拠地は蛇人間の超技術である物質転送装置で結ばれており、瞬間移動が可能だ。ジェシーはエドガー殺害後月面ビークルで第1まで移動し、そこから物質転送装置で蛇人間の本拠地までジャンプしたのだ。その後ジェシーは再び第1に移動しで金属盤を探したが、エドガーによって場所を移動させられてしまっていたためすぐに見つけることができず、いったん蛇人間の本拠地に退避している。
 
【いったん基地に帰る】探索者たちは仕方なく、いったん第2基地に帰らざるを得ないだろう。エドガーの遺体と、ジェシーの宇宙服は持ち帰ることが可能だ。
ジェシーの宇宙服を<鑑定>すると、通常通りの手順で脱がれたことが分かる。破損個所はなさそうで普通に使用できる。当然だが宇宙服なしの状態ではエドガーのように爆発四散して死亡しているはずなのに…。
エドガーの遺体をどうにかして持って帰ると(ぐちゃぐちゃになっているが…)<医学>で死因が分かる。ナイフのような鋭利な刃物で宇宙服を切り裂かれたことによって肌が露出し、血液が一瞬で沸騰して体内から爆発したのだ。
 
【地球への緊急連絡】地球への緊急連絡をし、迎えのシャトルを寄こすように希望する探索者もいるだろう。その場合は第1基地に向かい、地球に対してSOS信号を発信しなければならない。SOSを受信したら即座に地球帰還用のシャトルが月に向けて発進されることになっている。シャトルは1日後に月に到着する。
 
【第1基地の場所】第1基地の場所は、月の表側にある。第2基地からは月面ビークルで1時間程度の距離だ。(距離10km)<ナビゲート>に成功しないと正確な行き方は分からない。キーパーは、今回も探索者たちが全員まとめて第1基地に移動するよう誘導すること。注意すべきなのは、すでに日没しているため月面ビークルがバッテリー駆動になることだ。
 
【第1基地】第1基地の通信機は故障している。エンジニアであればそれを修理することが可能だ。<電気修理>技能、あるいは<電子工学>の半分で振って成功すると通信機を修理できる。また、第1の通信室に留守番ロボットはない。
 
【地球への通信】地球に対して救助要請をすると、地球側からは即座に助けのシャトルを出発させるという返信が届く。シャトルが月に到着するのは1日後だ。探索者たちは、助けのシャトルの到着位置を、第2基地の付近にするか、第1基地の近くにするかを指定すること。
第1基地は放棄されているとはいえ、まだ太陽光発電とバッテリーは生きており、通信機は修理をすれば動作する。通信ロボットはない。建屋はまだしっかりしており問題はなさそうだ。第2の倉庫にある武器も同じものが同じ数量だけ置かれている。ただし水と食料がないため、探索者たちが持参していなければ1日以上滞在するのは困難だ。探索者たちが第2を出発する前に、キーパーはそのことについて示唆すること。「十分な食料と水を積み込んでいけば、第1基地で滞在することは可能だと考えられる」
第2基地は探索者たちが今日まで滞在してきた場所であり、これからも滞在し続けることにはまったく問題を感じないだろう。今回の資材ポッドを受け取りそこねたとはいえ、まだ備蓄倉庫には食料と酸素、水はあり生きていくには十分だ。ただし第2からは地球への通信はできないことに注意。
探索者たちはどちらの基地で助けのシャトルを待つか決定し、シャトルの到着位置も指定しなければならない。ちなみに、シャトル着陸地を第2基地、探索者たちが待つのを第1基地とする(あるいはその逆)ことも可能ではある。ただしその場合遠すぎてシャトルの到着を知ることはできない。1日後のどこかのタイミングでシャトルが到着しただろう、という推測に基づいて行動することになる。
 
【PC4 ZZZ社員】ここでキーパーは、PC4が気づいていないようであれば、もう一度ハンドアウトを読むように伝える。ハンドアウトを読んだPC4は第1で残されたデータを探すモチベーションが高まるはずだ。PC4は<隠密>に成功した場合、他の探索者に気づかれずにパーティーから離脱できる。
 
【第1基地の物質転送装置】物質転送装置の設置場所は巧妙に隠されている。場所は第1基地の倉庫の中である。倉庫にはゴミが大量に積まっているためそれに紛れて物質転送装置は見えにくくなっている。<目星>ハード成功で発見することができる。
 
【黄金の蜂蜜酒】<目星>で第1の食堂に隠されている黄金の蜂蜜酒を見つけられる。これと金属盤に収録されているビヤーキーの召喚/従属を使えば、地球に帰還することが可能だ。
 
【蛇人間の金属盤】(正気度減少1D6)英語。一部蛇人間語。クトゥルフ知識+1% 呪文:ビヤーキーの召喚/従属
金属盤は魔導書として扱う。金属盤はエドガーによって隠されている。居住棟の棚の中にひっそり立て掛けられていて<目星>で発見できる。見た目は30cm×20cn程度の単なる金属の板でちょうどタブレット端末くらいの大きさなので目立つこともない。これこそがPC4が必要としているデータだ。ただ、データがどのような形状で保管されているかはPC4も知らないため、この金属盤が目的のデータだとは当初は気づけないはずだ。内容は蛇人間のテクノロジーについて書かれており、「月の裏側で産出されるムーン・スパイス(▲▲▲)と、地球の特定の地点で手に入れられる資源(▲▲▲▲▲)の配合比率と、特殊な技法でそれに化学的変化を加えると、地球の現有人類の知識をはるかに超えた超技術が実現できる。超技術の一部はZZZ社がいくつか実現している。これからさらに追加で超技術を伝達する。具体的には▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲」といった趣旨のことが記載されている。▲▲の部分だけは蛇人間語で書かれており、今回の探索者たちに読むすべはない。
 
【ジェシーの襲撃】探索者たちが第1に滞在していた場合、金属盤を探すべく蛇人間の本拠地から物質転送装置で飛んできたジェシーと死体から復活させられたエドガーから襲撃を受けることになる。なお探索者たちが第2に戻っている場合はこの襲撃は発生せず、金属盤をジェシーに回収されてしまう。
 
探索者たちが全員揃っていれば4人(PL4が不在であれば3人)、敵側が2人なので、うまくすれば勝てる程度のバランスだと考えられる。探索者人数がもっと多い場合、ジェシーのクローンの数を増やして調整すること。
大多数の探索者が月面ビークルで第2に戻ってしまい、少人数の探索者が第1に残った状態でこの襲撃が起きた場合、かなり危険な戦いになるだろう。第1基地を離脱したとしてもおそらくビークルは第2に戻ってしまっているからだ。ただし前述したように第1基地には壊れたビークルがある。そしてジェシーが乗ってきたビークルもある(これは第1基地の近辺に隠してある)それらの存在を探索者が忘れている場合、キーパーは示唆すること。
 
【戦闘の終了】探索者たちが月面ビークルで第1基地から脱出するか、敵を全滅させる(あるいは探索者側が全滅する)とこの戦闘は終了する。
探索者が戦闘を回避し第1から逃亡した場合、エドガーとジェシーは追ってこず、物質転送装置を使用して蛇人間の本拠地に移動する。
 
【物質転送装置】物質転送装置を発見していれば、第2基地に移動することができる。物質転送装置を使用することによるマジックポイント-1、正気度減少は1(基本ルールブックでいうところの“門”だ)
第2基地の物質転送装置は発電棟タンク棟の中にある。雑然とした荷物に紛れて物質転送装置は見えにくくなっている。<目星>イクストリーム成功で発見することができる。
 
 
【蛇人間の本拠地】探索者たちが物質転送装置を使用しても、蛇人間の本拠地には移動できない。蛇人間の本拠地に転送できるのは、隠された別の物質転送装置だけである。第1基地の倉庫側エアロックの脇に蛇人間の本拠地へ続く物質転送装置は隠されており、「門の発見」呪文に成功しないと発見はできない。時間に余裕があれば蛇人間の本拠地を自作するのもいいだろう。
 
【金属盤を手に入れる】蛇人間とジェシーの銃撃を退けた後であれば、探索者たちはゆっくりと金属盤を探すことができる。少し時間をかけて捜索すれば問題なく見つかるはずだ。
 
【月からの脱出】いずれにせよ、救助要請通信から1日経つと地球からのシャトルが月面に着陸する。到着したシャトルから探索者達に向かって通信がくる。「ただいまシャトルは月面の指定位置に到着した。これより待機する。現時刻から1時間後に地球に向かって発進する」
 
【通信はキャッチされている】その通信は蛇人間たちによって傍受されており、計3体の敵が、シャトルに向かう探索者たちを追跡してきて、シャトルの直前で戦闘になる。
敵側は蛇人間1人、エドガーの甦った死体1体、ジェシーの別のクローン1人の計3体。前回の戦闘でエドガーとジェシーがやられていた場合、今回の戦闘は蛇人間+ジェシーの別のクローン2体の3体にする。(クローンのジェシーが2人いる場合、同じ顔の全裸女性2人して襲いかかってくるという異常な状況を見てしまったことによる正気度ロール0 / 1D3)
そして前回の戦いで、ほとんどの探索者が第2基地に戻っていて、少人数が第1基地に残り、その残った少人数の探索者がエドガーとジェシーに敗北していた場合…、彼らは敵側の甦った死体として探索者たちと戦うことになる。さっきまで一緒にいた仲間が甦った死体になっているのを見てしまった探索者たちは正気度ロール。(正気度減少1 / 1D6)
 
【ラストバトル】戦闘の一番最初のラウンドで、蛇人間を目撃したシャトルの操縦士が発狂して、操縦席から逃げ出してしまう。(これで発進時刻は気にしなくてよくなった)
蛇人間たちの目的はあくまでも金属盤の奪還であり、探索者たちの全滅ではない。金属盤を持っている探索者に優先的に襲いかかる。金属盤は、月面のような低重力環境だとフリスビーのようにして投げれば50m程度は投げられることとする。投げる側は<投擲>技能を、キャッチ側は<DEX>を使用する。
一部の探索者だけが、蛇人間たちから逃げ切ってシャトルに乗り込めた場合、すぐにシャトルを発進させるか、それとも敵に追いつかれた探索者を待つか決めること。あるいは、また戻って敵との戦いに参戦してもよい。
 
【エンディング】蛇人間たちを全滅させるか、あるいは逃げ切ってシャトルを発進させることができたらシナリオクリア。(黄金の蜂蜜酒とビヤーキーを使って月から地球に脱出しても可)
探索者たちが全員生還し月から脱出、PC4が金属盤を入手できているのが最高のエンディング。金属盤の有無は問わず誰か一人だけでも月から脱出できたらノーマルエンド。探索者全滅がバッドエンド。
 
THE END
 
【最後に】当初このシナリオは、映画「遊星からの物体X」のように、誰が犯人か分からないというような人狼ライクなゲームにするつもりで書き始めたのですが(エドガーとジェシーはいったん無事に基地に帰還するものの、実は物体Xが変身した姿)人狼的にすると、セッションの最初の方でキャラが死んでしまったプレイヤーがその後ヒマになってしまうということに気づき、あえてTRPGでそれをやる意味はない、人狼やりたい人は普通に人狼で遊べばいいだけだと思いなおして、クローズドサークルものに書き換えました。テストプレーでは、月面ということで行動に大きく制限がかかり、また酸素がなくなるとすぐ死ぬという恐怖もあってか、プレイヤーたちの判断が遅くなりがちで、オンセで5時間かかりました。
 
 
【蛇人間】
基本ルールブックP301 完全な先祖返りのデータを使用する。
 
呪文(基本ルールブックP240~):似姿の利用、肉体の保護、精神攻撃、記憶を曇らせる、深淵の息
生体宇宙服: 今回の蛇人間は特殊なテクノロジーにより身体の周囲には大気圧同等の力で酸素などをまとい宇宙線も遮断し宇宙服なしで月面空間で息をして通常どおり活動できるようになっている。
 
【ビヤーキー】
基本ルールブックP298
 
【ジェシー】
ジェシーは蛇人間のテクノロジーによって生成されたクローン人間だ。同等のデータのクローンが第3基地に11人保管されている。生体宇宙服のみをまとっているため全裸に見える。月面空間で宇宙服を着ていない人が生きているという異常な状況を見てしまったことによる正気度ロール0 / 1D3
 
STR:65 CON:75 POW:45 DEX:65 APP:75 SIZ:50 INT:55 EDU:90 幸運:70 SAN:0 アイデア:55 知識:90 耐久力:12 MOV:9 MP:9 DB:0 ビルド:0
 
武器:蛇人間の銃 50%
普通の弾丸と、蛇人間の支配血清(基本ルールブックP264)が入った弾丸の好きな方を発射できる。普通の弾丸を使用した場合のデータは45口径オートマチック(P402)を使用。
呪文:肉体の保護、肉の溶解
 
【エドガー(甦った死体)】正気度減少1 / 1D6
死んでいるので宇宙服と酸素タンクは不要。
STR:75 CON:60 POW:45 DEX:40 APP:50 SIZ:55 INT:65 EDU:85 幸運:45 SAN:0 アイデア:65 知識:85 耐久力:11 MOV:8 MP:9 DB:+1D4ビルド:1
 
武器:素手(25%)


月面基地 間取り図

いいなと思ったら応援しよう!