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【菜種梅雨】


凍える程ではないけれど
寒い雨が降り続いて
みな一様に憂鬱だと言う

幸せに思っていた
雨に包まれて
何者かにそっと護られているようで

湯掻いた菜の花を
若い頃は分からなかった美味しさを
微かな苦味と甘さを

貴方が口にする
叙情的な言葉達を
聞き漏らすまいと耳をこらす

額に入れて飾って
インクの匂いのする本に挟んで
湯船で鼻歌に歌って

泣いていると何故
分かってしまうのだろうと
ほつれた糸をかがる夜

カセットテープの緩んだリールを
鉛筆で巻き取るように
手繰り寄せたなら

声が聴きたいと
目を見て動きかけた唇
その淡いルージュに

まだ愛しているを読み取って
雨音を聞きながら
想いの長さの黒髪を梳いて

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