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植物に聞いてみた          センダングサ&イノコヅチ

語り: 私は雑草が生い茂った空き地のそばを通りがかった。草が道路にはみ出している。私の服に草が触れた。種が、いくつもくっついた。

私: …………なつかしい……イノコヅチヅチ……センダングサ……

イノコヅチ: あれ? 嫌がる人多いのになあ。

センダングサ: こいつ平気な顔をしてやがる。

語り: 私は、あるきっかけで植物と話せるようになった。彼らは、いろいろな個性や生き様があって、話を聞いていると面白いのだ。まあ、周りの人には、頭がおかしくなったと思われないように、気をつけなくてはならないのだが。

私: 子どもの頃、田舎に住んでいたものですから、懐かしいです。

センダングサ: ……そういえば、最近は、外遊びする子ども少ねえな……

イノコヅチ: そういえば、そうですね。

私: 治安が悪くなってるのもあるんですけど、子どもが騒ぐ声が、うるさいって苦情を言う人が多いので、外遊びをさせられなかったり……

センダングサ: は? バカじゃねえのか? 小さい子どもが騒ぐのは普通だろ。

イノコヅチ: 人間って難しいんですね。

私: はい……私も理解できるというか、できないというか。

イノコヅチ: はい?

センダングサ: どっちなんだよ!

私: ……私はある時、病気になったんです。聴覚過敏というのですが。
……体調が悪いと音のボリュームが凄く大きく聞こえてしまう。そういうときは、どうにも仕方のない音……人が咳をする音とか、酷くなると、小さなものが落ちる音ですら、ガンガン脳に響いてしまうときがありました。幸い、私は運良く克服できたのですが、音の洪水が起きている時は、凄く大変でした。今も再発したりするので、困ることがあります。
……だから、どうしようもなく音が気になる人のことが、わからなくもないのです。
でも、それでも、小さい子どもとか、どうしようもないような音に……苦情を言う人が多過ぎるような気もしています。

センダングサ: めんどくせー病気だなー。

イノコヅチ: 大変ですねー。そんな病気の人多いんですかね。

私: そんな病気の人ばかり……ではないと思うのですが……私の場合は、だいぶ、聴覚過敏が良くなってからは……逆に子どもの声は、なんだか、微笑ましかったりします。
近くに保育園があるのですが、自宅にいても、しょっちゅう子どもが遊んでる声が聞こえて。元気な子どもたちが、育ってていいなあって……でも、ほかの近所の人たちは、うるさいって苦情を言いにいってます……

センダングサ: その近所の奴らも、なんかのビョーキなんじゃねえか?

イノコヅチ: あらら、お互い様じゃないのかなあ……いろんな人がいるんですねー

私: 私が子どもの頃は、九州の方にいたことがあって、もっとそこは人が住んでなかったたんです。魚釣ったり、野山を駆け回って、服にびっしり、あなた方の種がついたりしたものです。

センダングサ: 健康的だな。

イノコヅチ: 健康的ですね。

私: お二方とも凄いですね。あんなふうに衣服にひっかけて、広がるなんて。

イノコヅチ: まあ、服というか……

センダングサ: もともとは動物の毛皮にくっつける設計だったんだがな……

私: 植物の方々はいろんな工夫が、凄いなあって、思ってて……

イノコヅチ: あなた変わってますね。

センダングサ: お前変わってるな……

私: なんか、 ほかにも何か無いですか?

センダングサ: ほかにって何だよ。

私: はい。今まで、話した植物の方たち、いくつも、凄い能力やエピソードを持っている方が多いので…… 

イノコヅチ: ああ、センダングサさん能力者ですよ。

私: 能力者? 凄く聞きたいです。

センダングサ: はあ? おとぎ話の見過ぎなんじゃねーか?

私: どんな能力なんですか?

イノコヅチ: 土を乾燥させる能力です。

私: 土を乾燥させる?

イノコヅチ: センダングサさんやある種の外来種は、生命力が強くて、凄い勢いで広がるんですよね。そして、土の中の水分を物凄く吸い上げるんです。だから、そういうサイクルを続けていくと、土がだんだん乾燥していく……保護されてる湿地帯なんかでは、環境と生態系が大きく変わってしまうから嫌がられてますよね!

私: 土が乾燥するほど水を吸い上げて繁殖する能力って凄いですね……

センダングサ: はっ、俺達き残らなきゃいけねえんでな。そこんところは、よろしく!
だけどよう。イノコヅチの奴は、柔らかい言葉遣いしてっけど、えげつないことしてるぞ。

私: え?

センダングサ: イノコヅチは、昆虫の成長をコントロールする能力者だ。

私: え? 成長をコントロールする?

イノコヅチ: 正確には、ちょっと違うんですけど……

センダングサ: 細かい事はわからねえけど、こいつを食った幼虫は、通常より早くサナギになっちまうんだ。

私: それはどういう……?

センダングサ: 何か化学物質でもって、幼虫がサナギに変態するスイッチを入れてるんじゃねえか? 少し食べさせておいて、サナギにしちまえば、それ以上は、自分が食われねえ。

私: え? ちゃんと十分食べて成長してないのに、無理やりサナギにされたら、その虫は……

センダングサ: な、えげつないだろ? 棘や毒の防御よりも、ある意味タチが悪いぜ……

イノコヅチ: ふふふ、僕たちも、生き残らなきゃいけないので。悪しからず……
  
 
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