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地蔵

 
語り:
昔々、ある所にお爺さんとお婆さんが住んでいました。

たいそう貧しい暮らしで、
大晦日だというのに食べるものを買うお金がありません。

お爺さんは、藁を編んで傘を作り、町に売りに行きました。

しかし、人々は、年の瀬で忙しく、
お爺さんが傘を売っているのにも関わらず、振り向きもいたしません。

傘は一つも売れず、
お爺さんは、雪が降る中、とぼとぼと帰り道を歩いていたのでした。

そこにお地蔵様が一人立っておりました。

 

地蔵 :
おい、そこのお前。何か面白い事を言え!

 

お爺さん :
はて? 何か聞こえる。
わしは疲れ過ぎているのだろうか? 早く帰って寝よう。

 

地蔵:
お主、呆けたか? こっちだ。

 

お爺さん :
なんと、お地蔵様がしゃべっておられる。

 

地蔵:
いいから、面白い事を言え!

 

お爺さん:
お地蔵様、
恐れながら、「面白い事を言え」と言われて、
すぐに面白い事を言えるくらいなら、
わしは、芸人として、成功し、金持ちになっております。

 

地蔵 :
面白い事の1つや2つも言えぬのか!
ここに1人でいると、詰まらん! わしは笑いに飢えているのだ!

 

お爺さん :
お地蔵様、
恐れながら、面白いものを見たいなら、
大喜利サイトとか、アプリとか、いくらでもあるではありませんか。
無茶ぶりも大概にしてくださいませ。私は、川島明ではありません。

 

地蔵:
大喜利サイトとかアプリとか、川島とか、
時代設定を間違えていないか? 何を言っておるのだ、お前は!

 

お爺さん :
お地蔵様、
恐れながら、
だいたい、このお話は、
お地蔵様が6人いる話ではありませんか。なぜ、お1人なのです。

 

地蔵 :
あとの5人は地獄大夫(じごくだゆう)の所に遊びに行った。たいそうな美人でのう。

 

お爺さん:
 
お地蔵様、
このお話は、若いご婦人も、お聞きになるかもしれませんが、
恥ずかしくはありませんか?

 

地蔵 :
地獄の沙汰も地蔵次第じゃ! 何の恐れることがあろうか!

 

お爺さん:
なんだか、いろいろ間違っているような気がいたしますが。
お地蔵様は、なぜ、お1人だけ残っておられるのですか?

 

地蔵 :
もう遊びに行く銭がすっからかんでな!

 

お爺さん:
お地蔵様、何やってんですか! あしたは、正月ですぞ!

 

地蔵 :
だーかーらー! つまんないから、面白い事を言えっと言っておる! 

 

お爺さん:
お地蔵様、
恐れながら……
わたくしが、お地蔵様に傘をかけて、
宝物をうちに持ってきてくれる物語のはずなのに!
全然、話が違うじゃないですか!

 

地蔵 :
何を頭の硬い事を言っておる!
そんな事だから、仕事もうまくいかず、貧乏になるのだ!

 

お爺さん:
恐れながら、お地蔵様……
あなたのような最低の石頭に言われたくありませぬ……


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