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「まず知ってほしい。医療的ケア児の生活を。医ケア児だって一人の子どもだということを。」/福島市在住・渡辺さんへのインタビュー

こんにちは、医療的ケア児の親で、フリーライターのおざわです。
医療的ケア児の親御さんにインタビューをし、それぞれの生活や困りごと、各自治体の課題などをお聞きして記事にしていく企画を始めました。
(詳細はこちらの記事にまとめています。)

今回はその記念すべき第一弾!お話を聞かせてくださったのは、福島県福島市に住む渡辺未来(みく)さんです。

お話を聞いて印象的だったのは、「渡辺さんのお子さんが初めての事例」「ここからスタートする」ということの多さです。渡辺さんが声をあげることで今、福島市の医ケア児支援を切り開いていっているのだな、と思いました。

ローハッド症候群の瑚々ちゃんと退院を目指して動く今の不安は、退院後の在宅生活

渡辺さんのお子さん、瑚々(ここ)ちゃんは現在4歳2ヶ月。
2歳の時にローハッド症候群という希少難病を発症しました。

※ローハッド症候群とは?
http://www.rohhadjapan.com/

脳からの呼吸の司令が弱くなる病気で、気管切開・人工呼吸器・酸素と複数の医療的ケアが必要です。他に、経鼻経管栄養・浣腸もあり、寝たきりの状態が続いています。

病気発症後から長期入院中ですが、退院を目指せる状況になり、今徐々に動いているそうです!退院に向けた今の悩みは、「夜間のケアをどうするか?」ということ。

渡辺さん「娘は今昼夜逆転状態なんです。お昼寝をいっぱいして、夜中1時とか2時とかに起きてしまいます。寝ていると吸引などはあまり必要ないのですが、起きると吸引していないとダメなので、夜中に起きてしまうとケアでこちらが全然眠れなくなってしまうんですよね。瑚々の呼吸器の状況だと、強い眠剤を使えないと医師に言われているので、なかなか昼夜逆転を直すのが難しいです。
それから、ずっと同じ姿勢で寝ていると呼吸が弱くなってしまったりするので、定期的な体位交換も必要です。退院したらまとまった睡眠は取れないかもしれません。」

未来さんはひとり親であるということもあり、退院するとケアのほとんどを未来さんが担うことになります。今実家暮らしで、両親にも多少協力してもらえるとはいえ、夜間含め24時間看護が必要な状態を家族だけで続けていくのはかなり大変なことは想像に難くありません。

そのため、退院前に、夜間の見守り体制を作れるよう、支援を探しているといいます。

それでも、住んでいる福島市は支援が乏しく、日中の居宅介護(ヘルパー)でさえ「小児では適用事例がない」という現実がありました。

退院を目指して探し始めた支援、役所に言われる「ないです」のオンパレード。

「退院」という話が出るようになってから、渡辺さんは在宅生活を送るための支援を探し始めたそうです。

渡辺さん「支援を探し始めて知ったのですが、福島市は、医療的ケア児の支援がびっくりするくらいないんです。すぐに使えそうなものは、訪問看護しかありませんでした。日中のヘルパーも、『小児では事例がないです』と言われて使えない、と病院からも役所からも言われてしまいました。でも担当の相談員さんが熱心な方で、色々かけあってくれて、最終的には利用できることになったんです。うちが市内初の事例になるそうです。」

日中のヘルパーも対象外、となると、使える支援が相当限られてしまいますね…。

「在宅支援だけでなく、通所支援も足りないんです。医療的ケア児が通える施設について最初に市役所に相談した時には『ありません』と言われました。でも、私が自分で情報収集して、障害児の受け入れをしている児童発達支援施設を探したら、1箇所だけあったんです。でも1箇所だけなので、定員がいっぱいで、“待機児童”のような扱いになりました。2年待って、ようやく来年、空きが出るということで、入れることになりました。入院が長かったからタイミング的に退院後すぐに通所できることになりますけど、そうでなかったらどこにも通えずにずっと待つことになっていたかもしれません。」

役所からの情報だけでは得られなかった支援を一人で見つけられたんですね。

「あまりにも支援や情報がなく、役所の担当者もよく知らないような印象だったので、医療的ケア児支援センターができたときに電話で相談をしてみたんです。そしたらすぐにその場では答えてもらえず、折り返すと言われて。しばらく経ってから利用予定の訪問看護ステーションから電話があったんです。『支援センターから、こういう状況の子がいるみたいなんだけど、何かできることある?みたいに聞かれた』と。支援センターでも支援情報が把握できてなくて、事業所にアドバイスを求めるような状況なんだな、と思いました。」

市議会で議論され、少しずつ進み始めたことには期待。

ここまでの状況を聞いて、私は正直かなり驚きました。
福島市は県庁所在地で、福島県の中では大きな市です。医療的ケア児の数も、43人いると渡辺さんが教えてくれました。

その43人のご家族は、どう過ごしているんだろう。どう過ごしてきたんだろう、単純に疑問に思いましたが渡辺さんは「泣き寝入りしている人もいるんじゃないかと思います。」と話します。

渡辺さん「私も、最初に役所に相談して『ないです』と言われた時はそういうもんなんだと思っていましたから。たぶん、役所の人も、医療的ケア児のこととか、実情とか困りごととか、知らないんじゃないかと思うんですよね。だからこの間、市議会議員さんとお話をしてきたんですが、その内容をもとに、先日議会の一般質問で色々と聞いてくれたんです。その質問や回答が結構期待できるものだったから、これからなのかな、と思っています。」

一般質問の中では、公立保育園での医療的ケア児受け入れについても触れられ、検討を進めるという回答が得られたそうです。

渡辺さん「うちの子も発症する前は保育園に通わせていたので、またお友達と一緒に生活できるところに通えるようになるかな、と希望を持ちました。郡山市と本宮市では今年、保育園に初めて医療的ケア児の受け入れ事例ができたんです。なので福島市ではうちが一例目になれたらいいな。なれるように頑張ってみます。」

医療的ケア児の生活を知って欲しい。一人の子どもとして、経験を積ませてあげたい。

福島市の支援の現実を知り、戸惑いながらも、受け止めて前に進もうとしている渡辺さん。最後に、自治体や社会に伝えたいことを聞きました。

「まずは、医療的ケア児のことや、生活の実態を知ってもらいたいです。声を上げてみて初めて知りましたが、市役所も、市長も、議員さんも、医療的ケア児と繋がりがないからわからないみたいなんです。実際、市議会議員さんにも「(医療的ケア児のことは)何もわからない」と言われました。わからないから支援の充実にも繋がらない。そういう人たちの声をください、と言われたので、誰かが言わないといけないなら、私がしないと、とは思っています。今は子どもが入院中で、ずっと付き添いしなくてもいい状況ではあるので、少しは余裕がある今なら、まだできるので。退院したら生活にいっぱいいっぱいになって、そんな余裕がなくなると思います…。だから、家族の声を聞いてくれる場が欲しい。とにかく知って欲しいです。

「その上で、“一人の子ども”として過ごせるような支援が欲しいです。医ケア児・障害児であろうがなかろうが、一人の子どもだし、楽しみとか、色んな経験をして生きていく、成長していく権利はみんなあると思います。ただそこに色んな人の手を借りないといけないだけで、子どもは、子どもですよね。
健常の子どもみたいに保育園や通える遊び場があって、地域の大人に見守られて育っていく。医ケア児や障害児だって、そうやって同じように暮らせるようになったらいいなと思います。」

あとがき

私はX(Twitter)を通じて渡辺さん(アカウント名は「ここ子さん」)と知り合いました。ポスト(ツイート)を見ててずっと、「強い人だな」と思っていたんです。

お子さんのためなら病院にもちゃんと要望を言えて、お子さんの病気が難病指定されるために活動されていて、新聞にも出ていて。

自分の思いを行動に移せる強い人なんだと。

けれど、インタビューをしてみて、「人に困りごとを伝えるって、とても疲れるんですよね…」とおっしゃっているのを聞いて、強いなんてことはないんだなと思いました。

でも、やるしかないから、やる。
今ここで、自分が声を上げないと、ずっと泣き寝入りする人が増えるだけだから、今やる。
子どもにとって何がいいか、と考えたときに、必要だと思うから、やる。

心が折れながら、疲労を抱えながら、それでも頑張りたい、と前を向く渡辺さんはめちゃくちゃかっこよかったです。私も勇気をもらいました。

渡辺さん、ありがとうございました。

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