鯨骨に想いを馳せて

2021/04/20
 鯨骨生物群集。
鯨の死骸を基に形成される深海の生物群。分解される過程は腐肉食期、骨侵食期、化学合成期、懸濁物食期の4つに分けられる。
各過程で現れる生物は変化し、餌となり住処となる。
人間の死体が朽ちる過程を記した九相図と似ている。
深海の生物から見て、鯨の死骸は天上からの供物のように見えているのだろうか。鯨が神の遣いのように見える。
自然の循環は何故これほどまでに美しいのか。
生まれ、死に、肉となり骨となり循環する。
人は死んでも自然の循環には入り込めない。
気付けば環から逸れてしまった。
死体は燃やされ墓に埋められる。
いつからか、私たちは残酷であり美しいこの循環を忘れてしまったようだ。
輪廻転生も人から人への循環だ。もう『人』という呪いからは逃げられないのかもしれない。
そんなことを考えるとふと怖くなってしまう。
文化を、生活を知ってしまった私は人から逃れられない。逃れた途端、獰猛な自然に殺されるだろう。そして環から外れていく。
 私はどのように死んでいくのか分からないが、死んだ時は骨を海にばら撒いて欲しい。
わがままを言うならば瀬戸内海へ撒いてほしい。還るなら私の好きだった海にへと還りたい。生まれることは選べなかったが、せめて骨の撒き方は選びたい。きっとその願いも叶わないのだろうけど。

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