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【小説】連綿と続け(50話まで無料)

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富山県を舞台にした小説。 1話〜50話までの無料分はこちら。 51話以降は有料マガジンへ
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2023年10月の記事一覧

【小説】連綿と続け No.10

【小説】連綿と続け No.10

祭りの準備が進む中、富樫から電話で思いもよらぬ知らせを受ける。

富樫)急で悪いがやけど…上からの提案で連休中に市内で"街コン“することになったさかい、その準備も宜しゅうね〜

侑芽)街コン!?

街コンとは
街ぐるみで行われる大型コンパイベントである。

イベント会社と地域がタックを組み、男女の出会いの場を設けるもので、参加者は開催地区の定められた複数の飲食店を廻るため、地域振興にも役立てられて

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【小説】連綿と続け No.11

【小説】連綿と続け No.11

侑芽は早退したが、結局家で仕事をしている。
そこへインターホンが鳴り、部屋着のまま出ていくと西川が心配そうにして立っていた。

西川)急に来てしもてかんにん!倒れたて聞いて…ちょっこし心配になってしもてな。あっ、良かったらこれ食べて?

そう言って侑芽に何かを渡してくる。
それは富山県産イチゴ「かおり野」であった。
その名の通り、ふわっとイチゴの香りが漂ってくる。

侑芽)わぁ…いい香り!でも、わ

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【小説】連綿と続け No.12

【小説】連綿と続け No.12

市役所に到着した航は、
意を決した様子で歌子から渡された差し入れを持って中に入っていく。

ところが侑芽が在籍している観光推進課の場所がわからずキョロキョロとあたりを見回していると、たまたま通りかかった高岡が駆け寄ってくる。

高岡)あれ?確か昨日お会いしましたよね?どうされたんですか〜?まさか私に会いに来てくれたんですかぁ!?

勘違い甚だしい高岡はいつもより声のトーンが高い。

航)いや、ちょ

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【小説】連綿と続け No.13

【小説】連綿と続け No.13

航)あの…

侑芽)え…どうかされましたか?

侑芽は驚きつつも首を傾げている。
航は掴んだ手を慌てて引き

航)か、かんにん!あんな、この前もろた飴…あれ、けっこう美味かったさかい…その…

侑芽)あぁ。飴ならまだありますよ?

そう言ってバックの中から飴玉を取り出している。
航はあの時のように片手を広げ
深呼吸をしてから

航)こんな手で落ち着くんやったら…、その…いつでも貸すさかい

侑芽)

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【小説】連綿と続け No.14

【小説】連綿と続け No.14

侑芽に恋心を抱いていることに気がついた航は、
項垂れながらベッドに寝っ転がった。
脳裏に浮かぶのは侑芽の笑顔とあの言葉だ。

"お兄ちゃんだと思ってもいいですか?”

枕に顔を伏せ
「あ〜っ!!」と行き場のない感情を叫んだ。

一方、侑芽は体調が回復し
祭りの関係先を回っていた。

侑芽)ご心配とご迷惑をおかけしました

西川)な〜ん。元気になって良かった。ほんま無理せんと、僕も手伝うさかい何でも

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