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【エッセイ】坂道をたどる足跡

 わたしは坂道と共に生きてきました。物心ついた時から歩くのが好きで、坂しかない街に小さな頃引っ越してきて、そこで結婚するまで暮らしていました。


 駐車しにくい坂の半ばの家。そこでわたしの「ななめになってかしぐ」という感性が磨かれていったのだと思います。今の暮らしを営んでいる場所には、実家のような坂はあまりないので、近所を散歩していて坂を見つけるとうれしくなります。


 夫も実は実家がご近所ということもあり、坂を歩くということが非常に重要な要素になっていました。夫と一緒に散歩したり、コンビニやスーパーに行くだけでも歩くので、そういえば結婚式のプロデューサーの方に「早苗さんはヒールのある靴を履かないのね」と言われ、「Eさん(夫のこと)と歩くと結構な距離を歩くので……」というと笑われました。


 緑と小鳥と池が多い郊外に越してきて、さらに歩く距離は増えました。職業柄引きこもりになりそうなのですが、よく歩いています。夫は地形に興味がある人なので、五分でも一緒に歩くと、その道の解説をしてくれます。頼もしいです。


 少女だった頃歩いた坂。主婦になって歩く坂。それらは全て、わたしの道なんだと、思います。

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