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お猿に風船を学ぶ娘

娘は、2歳半頃から風船ブームだ。
海外のアニメーションで、空を飛び、可愛らしく、輝くもののように描かれた風船を見てから、娘はすっかり風船の虜になった。そういえば、宙に浮いている身の回りのモノは、風船くらいかもしれない。確かに不思議だ。

風船への愛と喜び

風船への関心は、不思議から好きに変わり、観察対象から発見の喜びに変わっていった。

「ふわふわの風船がほしい🎈!」
「どこに売ってる?」
「綺麗なピンクだ!いろんな色がある!」
「風船風船風船風船!!」
「なんで浮かんでるんだろう?」
「飛んでったらどこまで行くかな?」
「水が入るのもあるの!?」
「こっちの風船は落っこちるのに、あっちの風船は何で飛んでるの?」
「風船ってどうやって作られるの?」
「風船と一緒にベッドで寝てもいい?」

これらの問いに、母は真剣に向き合ってきたつもりだった。いろんな風船を準備して家で遊んだり、少し特別なおでかけでは行く先で娘が気に入った風船を一つずつ買い集めたり、楽しい夢の風船の絵を一緒にたくさん描いたり。夜はベッドの近くに結んで、朝起きるとぬいぐるみと風船を抱えて起きる生活がしばらく続いた。風船の空気が抜けるまで。
しばらくすると、風船に入れるものによって、飛んだり落ちたりすることを不思議がるようになったので、図解したり説明してみたが、いまいちピンとこないようで、母子でもどかしくしていた。
市販のヘリウムガスで実演するしかないかな…。でも、ボンベを買うと、家の天井は、しばらく風船で埋め尽くされて見えなくなる。天井にはシーリングファンがあるから危ないんだよな…うーん…。

そんな時、Netflixで見ていた「お猿のジョージ」が、娘の疑問に全て答えてくれた!

黄色い帽子のおじさんが、ヘリウムガスのタンクを使って膨らませた風船達は、ふわふわ宙に浮いていた。
ビルが「フゥー」っと口から空気を入れて膨らませた風船は、ぽよぽよしているけれど飛ばずに床に散らばっている。
アリーが水を入れた風船は、ボールみたいに投げることもできて、当たると水浸しになる。

このアニメの1話で、母子のもやもやが解決した。

🐹「そうか!黄色い帽子のおじさんが持ってた大きいのが、ママの言ってた、へりんむ(注:ヘリウム)ってやつだ!ビルのは、プールの浮き輪と一緒だ。うん、浮き輪は飛ばないもんね。やっとわかった!!ママ、わかったよ!!」

大きな声で、思ったことやわかったことを説明してくれた。娘は大興奮だ。瞳はキラキラ輝いていて、とびきりの笑顔で、風船達を持ってリビングからキッチン、廊下まで走り回っていた。

🐹「ジョージ達も風船が好きみたい!一緒だね!」

彼女のように、発見や閃きによって全身が震えるような喜びは、かつて、私にもあった。今はこんなにも、何かを喜ぶなんてできない。最近の私を突き動かす原動力は、怒りや使命感のような、鮮やかさに欠ける衝動だ。発見する楽しさ、理解する喜びを全身で現す娘を見ると、今まで感じたことのない質感の幸せな気持ちが生まれる。親になってみなければ、知ることのなかった感情だと思う。
彼女の喜びは、とても尊い。
私には羨ましさと懐かしさも混ざっているけれど、この瞬間に立ち会えたことは、生きていてよかったと思える瞬間の一つだ。このひと時を忘れたくないし、これからもたくさん集めたい。私は欲張りだ。

この後も、お猿にハマった娘は、バターの作り方、恐竜の化石の発掘方法、盲導犬や点字、キャンプ、家畜の世話等、どんどん学んでいる。親と子の接点だけでは、広がらなかった世界の一部を少しずつ知るきっかけをもらっているようだ。

余談…

🐏夫「この世界の人間、お猿のやることに寛容すぎやしないか?」
🐈‍⬛「私はお猿より、ビルの言動にイライラしちゃうんだよね。ロビー犬のハンドリーとリスのチャンピーが好き。」
🐏夫「あー!人間たち、お猿から目を離すな!」
🐹「ママはジョージが歯医者さんにいくお話が好きだよね?バクテリアのお歌のやつ。黄色い帽子のおじさんは、なんて名前だろう」

おしまい

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