【映画感想】トランスフォーマー/ビースト覚醒 ★★★☆☆ 3.4点

 車や飛行機など様々な乗り物から変形するロボット生命体トランスフォーマーたちの戦いを描いたSF作品の最新作。単純明快なヒーロー映画として仕上がっており、過去6作をフワッとしか観ていない自分でも十二分に楽しめる娯楽作となっていた。


 本作を観にやってくる観客が何を求めているかと言われれば、それはもちろんカッコいいトランスフォーマーが、カッコよく変形しながら、カッコよく戦う姿であるわけで、本作はそれをよくよく理解したうえで、そこに全力投球する作りになっている。

 もちろん地球が舞台である以上、人間ドラマもある程度は設けなければならないし、SF作品である以上、多少の設定説明も必要となってくるのであるが、そういったものは最低限に抑えられている。そのため、人間たちのアクションシーンやトランスフォーマーへの変形なしのカーチェイスシーンなども出し所がかなり絞られており、「今日はそれ観に来たんじゃないんだよね〜」という気持ちになる前に、こういったシーンは切り上げられる構成になっている。

 そして、そうやって捻出された残りの膨大な上映時間にとにかくトランスフォーマーの変形とバトルがぎっちりと詰め込まれており、「そうそう!今日はこれを観に来たんだよ!」という満足感とともに作品を鑑賞することができるようになっている。


 ストーリーもトランスワープキーと呼ばれるマクガフィンを巡る戦いという非常にシンプルなものになっており、ゴチャ付いたSF要素もなければ、込み入った人間ドラマもない。深みがないと言われれば、強く否定はできないものの、上記の通り、本作はカッコいいトランスフォーマーを楽しむ作品なので、これでよかろうなのである。

 とは言いつつ、登場する正義のトランスフォーマー・オートボットたちのキャラクター性は皆非常に豊かで、本作から新しく登場する動物に変形するトランスフォーマーのマクシマルたちも愛着のわくキャラクターとなっているため、キャラクタードラマとしての質は高い。

 特に主人公ノアの相棒となるポルシェのトランスフォーマー・ミラージュや、ハヤブサのトランスフォーマー・エアレイザーは魅力的で、終盤、彼らを待ち受けるある展開に際して、「この短時間で自分はこんなにこのキャラクターたちを好きになっていたのか」と驚いたほどである。


 さらに本作のもう一つの良いところは、ヒーロー映画として燃える展開を奇を衒わずに照れなくやり切っているところ。

 例えば、悪のトランスフォーマー軍団テラーコンとの最終決戦に際して、本作ではオートボットとマクシマルの全メンバーが特撮ヒーローよろしく崖にズラッと並び、オートボット総司令官オプティマスプライムの「出撃!」の号令のもと、一斉に敵陣へ駆け出していく。ヒーロー映画なのだから、こういうコッテコテの描写を観たいけれど、さすがにこんなハリウッドのビッグバジェットの大作映画ではやってくれないだろうという展開を真正面からガッツリとやってくれる、その心意気が心地よい。

 終盤、単身戦うノアを追い詰めたテラーコンのリーダー・スカージが、「貴様一人で何ができる」とノアを罵倒すれば、すかさず駆けつけたオプティマスプライムが「我々は一人ではない!」と啖呵を切り、激しい戦いになだれ込んでいく。なんというお手本のようなヒーローの啖呵切りシーン。こんなものを見せられてしまっては、「これだよ!これ!」と心の中の小学生が全力ガッツポーズしてしてしまっても仕方があるまいというものである。


 数千年見つかってこなった遺跡の入り口が割と簡単なギミックで開いたり、手の施しようがないほどに破壊されてしまったと言われていたトランスフォーマーが比較的あっさり復活したりと、なかなかに緩い部分も多い作品ではあるのだが、上記の作風とテンポの良い話運びのおかげで、驚くほどにそういった部分は気にならない。そういった弱い部分はあっても、本作が注力すべき部分がしっかりと作られているがゆえであろう。

 強いて言うならば、マクシマルのほとんどの戦士たちの存在感がほぼ無だった点が残念だったといえば残念なのだが、映画全体のバランスからすると彼らの描写はなくても全く問題なかったので大きな問題ではない。本作はトランスフォーマーシリーズの新三部作の一作目とのことなので、ビーストウォーズ世代の人間としては次回作ではもうちょっとマクシマルの人員増加と出番の増量をお願いしたいところである。

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