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【第1話】彼女との出会い

あの頃

今から3年前の自分は、妻と幼い子供達と別居を始めて半年ばかり過ぎて
毎日が虚無感の中で過ごしていた。

別居するまでは
結婚して18年が経ち、小学生の2人の子供達に囲まれて
それなりに毎日が幸せだった。

ある日突然、妻の浮気が発覚し、問い詰める間もなく
子供達を連れて、浮気相手が暮らしている西に行ってしまった。

しばらくして、親権を争う裁判をして、結果的は負けて
協議離婚に向けて、審議が始まり出し
一方的な条件を提示され、寂しく、虚しい毎日を送っていた。

仕事は、個人でソフトウェアの開発をしていたので
通勤列車に乗ることもなく、話し相手もなく
毎日を淡々と生きていたと思う。
あの日が来るまでは

彼女との出会い

その日は、友人らと都内の最寄り駅近くの居酒屋で飲んでいた。
酒は、飲める方だが、別居してからは家で酒を飲むことをやめていた。

人は究極に追い詰められると酒に溺れてしまうということを
知ったからだ。

友人らと別れると、誰もいない家に帰るのが寂しく
飲むと駅近くのキャバクラに通うことが多かった。
その日も、いつものキャバクラに足を運んでいた。

特に誰かを指名するわけでもなく、隣りの席についた女の子と
楽しい時間を過ごすことが癒やしにもなっていた。
人と会話することもめっきり減っていたから
誰かと話しするのがとても嬉しかったんだと思う。

彼女はこの日、最初についた子だった。
笑顔が可愛くて、他の子と違い、派手さもなく、親しみやすい子。

こういうお店で飲む時は
架空の自分を演出する男性が多いと思う。
既婚なのに、独身とか
工場勤務なのに、IT関係の仕事しているとか。

私は、ほとんど正直に話しをするので
離婚裁判中で、家族、財産も無くして惨めだけど
絶対に這い上がってやるんだ
それが口癖だったと思う。
どんな状況でも気持ちだけは負けたくなかったんだと思う。
ただ、今思えば、当時26歳だった彼女には
どんな51歳のおじさんに見えていたんだろうか。

彼女の昼間の仕事は料理関係だったこともあって
料理の話で盛り上がった。

実は私は、こう見えても料理を作るのが好きで
家族と暮らしていた頃は、夕飯を作ったり
たまに、子供達と一緒にパンやケーキを焼いたりするほどだった。
彼女も料理を作るのが好きで、お互いスィーツ好きだったこともあって
一緒に食べに行こうなんて約束もした。

ただ、当時は別居して、離婚裁判中でもあったので
男女関係にも疲れきっていたので
あくまでも社交辞令のつもりだった。

その日は、深夜遅くまで飲み、少し明るくなり始めたころに眠りについた。

もちろん彼女とはLINE交換はして
「今日は楽しかった」といったメッセージをした。
また、気が向いたら、飲みに行くといった程度でしか
この時は考えていなかった。

これが彼女との出会いだった。





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