ぺらいちショートショート⑰『蛹カプセル』
ぺらいちショートショート⑰
『蛹カプセル』
20××年。美容整形業界に新技術が登場した。
──蛹カプセル。
今、僕の目の前でオパールの様な遊色を放っている、寝袋のような形状のモノがそれである。
芋虫が蝶に変わる技術を応用したものだそうだ。
それを壁に立てかけ、中に入り一週間寝る。
すると7日目の朝に、誰でも美しく生まれ変わって出てくるのだ。
今朝は被験者第一号の女性患者がカプセルから羽化する日である。
僕と院長は今か今かとその時を待っていた。
──そして、時は来た。
ピピッと亀裂が入り、しっとりと濡れた美しい顔が出てくる。続いて絹のような髪、白い肩、くびれた腰……。
「この透けるような白い肌……妖精みたいですね」
あまりの美しさに魅入られたのか、僕は患者さんに触れてしまった。
「君、触っては駄目だ! 羽化に失敗した蝶がどうなるか知らんのか!」
──妖精は触れられた部分から紫に変色し、異臭を放ちながら溶ける様に腐り、床に崩れ落ちた……。
(了)
#ショートショート #ぺらいちショートショート #短編小説 #不思議な話
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