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ぺらいちショートショート⑯『なれそめ (御縁がありますね/昭和)』

ぺらいちショートショート⑯
『なれそめ (御縁がありますね/昭和)』


 初めてその方に逢ったのは、女学校に通う路面電車ろめんでんしゃの中だったわ。
 次に会ったのは停留場内。
 品のいい書生さんで目が合って会釈をされて、ドキンとしたわ。

 私、学校帰りに喫茶店に行って珈琲を飲みながら空想の世界に浸るのが好きだったの。
 喫茶店に入るのは保護者同伴でないと本当はダメなんだけれどね。

 ある日、カランとドアが開いて、その方が入って来て「やぁ」と云いながら私の向かいに座ると自分も珈琲を頼んで「今日は兄さんのおごりだ」とか頓珍漢とんちんかんな事を云いながら本当の兄さんみたいに振る舞うから私、可笑しくって。
 お遊びに合わせて沢山お喋りしたわ。

 後から聞いたんだけれど、女学校の先生がお店に入ろうとしていたんですって。
 ウチが厳しいのは有名だし、顔見知りの私が怒られたら可哀想だから咄嗟に保護者のフリをしてくれたんですって。
 今思うと嘘の口実かもしれないけれど、嬉しかったわ。

 これが私とあなたのお祖父さんとのなれ初めよ。うふふ。

(了)

#ショートショート  #ぺらいちショートショート  #短編小説 #不思議な話


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