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読書メモ:齋藤彩『母という呪縛 娘という監獄』

娘のキャリアを決め、管理した母と、彼女を殺してしまった娘。
実際にあった事件を取材して書かれたノンフィクション。

一度看護師学校に合格し(それでも医師にしたかった母からすれば「妥協」なのだが)、母が強いていた9浪に終止符。平穏になったかと思えば、看護師にはならず助産師学校に入り直せという受験再スタートのお知らせーー。

感想雑記

あまりに凄惨さに震えてしまった。

それだけで母を殺すか、と思うなかれ。この本には多数のLINEが掲載されているのだが、その内容はかなりのものだ。失望、叱責、暴言。娘がまるで自分のものであるかのような口ぶり。
逃げ出せばよかった、と言うなかれ。娘もまた、母に頼るしかない。父は離婚していなかった。
日々の小さな物理的暴力は絶え間ない痣を作るかもしれないが、日々の小さな言葉の暴力は見えないが確実に心を歪ませていくし、その歪みが歪みだと気付けなくしていく。その歪みが見えないまま、その人を責めることはできない(当然、殺人は許されるものではないとして)。

ただ、怖かった。殺人事件の大半は親族内で起きているというが、親族・家族、と言ってもそれは一言でまとめられない、面妖なものだ。数多の家族がいて、一つ一つ違う。
自身が幸運だったことをまた一つ知った。

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