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本当はコーヒーよりカフェオレが好き。
私はプライドが高い。そして、計算高い。
いつだって息をするように背伸びをしてきた。早く大人になりたくて仕方なかった。早く自立をしたかった。何者かになりたかった。
その背伸びの一つが”ブラックコーヒーを飲むこと”だった。
理由はシンプルで、誰かに刺さる武器になることが明確だったから。
少しあほらしい価値観だとは思うが、少し童顔の女の私がブラックコーヒーを飲めることは”良い”ギャップだった。このギャップが自分の好感度を上げる可能性があることを知っていた。少なくとも下がることにはほとんどならないことも知っていたし、このギャップを嫌いだという人を私は好きにならないということもなんとなく理解していた。
同じような理由でビールもハイボールも飲むようになった。
ビールとハイボールは気づいたら本当に好きになっていたので、背伸びして良かったのかなと今は思っている。間違いなくこのお酒が飲めることは私の武器になった。
ただ、そろそろこの武器を捨てても良いかなと最近思い始めた。
そんな背伸びが少し馬鹿らしく思えるようになってきた。
ブラックコーヒーなんか飲まなくても、甘いカフェオレでも自分がご機嫌ならそれで良いんじゃないかと思えるようになった。
一番、大きなきっかけは彼氏のある一言だった。
「ねこまめと釣り合っていない気がしている」
そう言われたとき、私は嫌われたくないと思った。それと同時に彼氏が思っているほど自分は良い人間じゃないことを知ってほしいと思った。
それから少したって、彼の前で背伸びするのは辞めようという気持ちが大きくなってきた。努力したうえでの背伸びは忘れたくないが、見栄っ張りの背伸びはもう私には必要ないかもしれない。そんな自分を好かれてもきっと何にも嬉しくない。
見栄っ張りの背伸びをやめる最初の一歩は、ブラックコーヒーより大好きなカフェオレを選ぶことなのかもな。
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