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米津玄師TOUR2023空想 初日

新社会人になって3週間が過ぎ,なんとなくこれまでを引き摺りながらこれからも生きていくのかね,なんて思い始めていた4月の今日.前々から楽しみにしていた,米津玄師さんの空想TOUR初日に参加してきました.
結論から言うとこれ以上ないくらいよかったです.本当に最高でした.

最高だったので,人生初のライブレポを書きます.
本記事にはTOUR空想の神戸初日における演出やセトリのネタバレがめちゃくちゃあるので,これから参加される方はご注意を.

ちょっと自己紹介を.
僕は,ハチ時代から彼を追っているファンのひとりです.羅刹ト骸で頭をぶん殴られたような衝撃を受け,ワンダーランドと羊の歌でサマーコンプレックスを発症し,演劇テレプシコーラで物語を作ることの美しさを知り,マトリョシカは狂ったようにカラオケで歌いまくりました.僕の青春はハチさんの楽曲と共にありました.
ちょうど自分が高校生の頃,2012年に「米津玄師」として活動を始めた彼の最初のアルバム「diorama」が発売されました.僕はこのアルバムの発売が楽しみ過ぎて,当時電車で1時間ほどかけてタワレコまで行って彼のインタビュー記事の載った無料冊子をもらいに行きました.表紙には米津さんの描いた絵が載っていたのを今でも覚えています.懐かしいね.
僕の大学生活はアイネクライネと共に開始し,死ぬほどしんどかった修士課程はBootlegに救われ,コロナ禍と共に始まった博士課程ではStray Sheepが常に寄り添ってくれました.そして今年の3月で無事博士課程を卒業し,カムパネルラを聴きながら大学を後にしたのでした.
僕の人生の至る所に米津さんの音楽と物語があり,彼の言葉とメロディに救われてここまで歩いてきました.

公演初日の4月22日,神戸ワールド記念ホールに到着したのは14時ごろ.三宮駅からポートライナーに乗って向かう途中でちらほらと過去のライブTやタオルを持っている方がおり,「あぁ,ライブに向かってるなぁ」という実感がふつふつと湧き立っていきました.こういうのもライブの楽しさですよね.
グッズを買い,ガチャを回し,うどんを食べ,荷物をロッカーに詰めて準備完了.通信制限のスマホでのデジタルチケット取得にちょっとトラブりつつも,会場へ.
席は入場時に判明する感じでした.自分の場合はアリーナ席!ドキドキしながら席を探すと,ステージからかなり近い,とっても好位置でした.距離感で言うとライブハウスとかの感覚.両隣の方も親切な方で,色々恵まれてるなぁと感じつつスタートを待ちました.

久々に海を見れたのも大変よかった

BGMがフェードアウトし,非常灯が消える.
会場が静まり,視線がステージに集まる.
そして,音楽が始まった.

1曲目は「カンパネルラ」.
イントロが流れた瞬間,周囲で小さな歓声が上がる.
みんなこの瞬間を待ってたんだよ!米津さん!
会場の暗闇を,音と光が切り取って眩しい.
シルエットとして浮かび上がる米津さんのパフォーマンス.
少し緊張した様子の彼の歌声は,でも確かに目の前から,僕らに向かって響いてくる.
曲が終わると同時に,銀河鉄道を模したような,暗闇を走り抜けていく車窓のイメージが投影される.
僕らを乗せて,どこまでも広がる空想の旅の始まりだ.

間髪入れずに「迷える羊」,「感電」と続く.コロナ禍の生活でずっとイヤホンから響いていた音楽を,今この瞬間,会場中のみんなと聞いている.
なんだかそれが無性に嬉しい.

米津さんの短い挨拶が挟まる.
静かに,ステージ上空から吊られていた四角い構造物が降りてくる.
そして始まった4曲目は,あまりにも予想外な曲だった.
「街」.米津玄師としてデビューした彼の最初のアルバムdioramaの,まさに最初を飾ったあの曲.モノクロームの箱庭でいつも僕らを待っていてくれた,あの曲!
深夜のテレビ放送終了後の砂嵐のような,白黒のノイズが印象的な光の演出の中で,あのジオラマの街への入場曲が鳴り響いている.
うずくまるように歌う米津さんの姿は,彼の音楽に救いを求めていた当時の自分の姿とどうしても重なってしまう.
明かりを消した自室のベッドの中,ただ唯一の光源は手元の携帯機器で,その液晶の向こうでぼんやりと紡がれている誰かの生活を垣間見つつ,耳に押し込んだイヤホンからはずっとdioramaが流れていた.深夜2時のパレード.

涙が溢れて止まらなかった.米津さんと歩いてきた時間の長さ.重さ.夜の暗さ.優しく背中を押してもらった回数.救われた言葉.心に突き刺さった詩.それら全てが急速に思い返されていく.
「ほら君は一つずつ 治しながら生きているよ」
 タオルに顔を埋めて泣きじゃくった.
本当にもう,この瞬間の時点で,このライブは最高の経験になってしまった.

続く「優しい人」は,僕の中では,自分の中の醜い部分を言い当てられてしまったような感覚を覚える歌だ.ひりひりとした痛みを覚えつつ,音楽は続く.
「décolleté」「Lemon」.
個人的にこの流れは,深夜ひとり空想に浸った「街」を旅立ち,自分の醜さを痛感しながらも時をやり過ごしていく,擬似的な人生経験のように感じた.大学を卒業してすぐにこの流れを見せられるのはなかなかクるものがあるな.
そして「M八七」.ここで来るか!
シン・ウルトラマンは僕の中で大きな道標となった作品だ.その主題歌が,「街」から始まった旅路の最後に歌い上げられる.
米津さんと共に歩んできた10年近い年月を,濃密に凝縮した時間だった.

MCは気づけばマインスイーパーにハマっているという話に向かっていた.どうしたんだ?これは昔,不定期にやっていたツイキャスの空気感だぞ!?どうしちまったんだ.自虐的な彼の自己評価が続く.
「ざまぁねぇな,としか言いようのないことが自分の人生には多かった」
「そんな経験からできた曲です」
「聴いてください.LOSER」

ずるいじゃん.こんなの,ずるいじゃんか.
俺だって,あなたに負けず劣らずのざまぁねぇなってエピソードで満載の人生ですよ.
ここから会場のボルテージは上がり始める.
それまで全体的に控えめだった掛け声や指差しが現れ出す.
ダンサーの方のパフォーマンスも素晴らしい.
「踊る阿呆に見る阿呆」の部分の阿波踊りモチーフの振り付けはめちゃくちゃよかった.なんだこのLOSER,過去最高にかっこいいぞ.

間髪入れずに「Nighthawks」.
ここで僕は再び泣くことになる.
Nighthawksと言えば,米津さんがついに打ち出してきたバンドソング.過去に彼の前を歩んでいた先人たちへのリスペクトと,彼の背中を追う僕らへのメッセージに詰まった,まさに夜を越えるための曲.
その間奏が!
聴き間違えるわけない.BUMPの「天体観測」のアレンジ!!!!
こんな贅沢なことあるか!?アレンジは本当に数秒間だけ.でも,そこに込められたあまりにも多くの想いは僕に直撃して体中を駆け巡った.
「懐かしい音楽が頭のなかを駆け巡る」
そうだよ.そうなんだよ.どれだけの夜を,そうして超えてきたか,米津さん,あなたに伝えたいよ.

銀テープが射出される.空中に向かってみんなが手を伸ばす.
あまりにも美しい光景だった.本当に,ここに来れてよかった.心底そう感じた.

「ひまわり」,「ゴーゴー幽霊船」と続く.テンションはもうとっくに最高潮.そしてやってきた「KICK BACK」!

実を言うとこの辺りの記憶があんまりない.とにかく演出も曲順も最高すぎて,気づけば曲が終わり,MCが始まっていた.

米津さんの話し方が好きだ.
一言一言を手に取って確かめて,優しく野に放すような印象だ.
空想について.空想といツアータイトルについて.今日のライブについて.今日僕らに届けたい想いについて.
そして月が登る.波打ち際を思い起こさせる背景映像の中,「月を見ていた」が始まった.
この時の僕はもう感動と興奮で頭がぼんやりしており,折角本人歌唱のフルバージョンが生演奏で聴ける機会だというのに,「FF新作こりゃ買うしかねぇな」と思ったことしか覚えていない.何してんだ本当.

「打ち上げ花火」「灰色と青」と続く.
孤独じゃない夜の歌.夜を超える歌,朝を迎える歌だ.
このライブももう終わる時間が近づいているのだと感じる.
その別れは寂しいが,確かに意味のある別れだ.

「かいじゅうのマーチ」「馬と鹿」.
2曲の雰囲気は大きく違うが,どちらもきっと覚悟の歌だ.
これからを歩んでいくための歌.
それを僕らに届けて,彼らはステージを降りていった.

会場はずっと手拍子に包まれていた.
一気に駆け抜けた,ライブ本編のことを反芻する.
そして気づけば,アンコールの時間がやってきていた.

未発表の新曲から始まったアンコール.
本編と比べると少しリラックスした調子のMCと,メンバ紹介.
米津さんの今の仲間たちだ.
米津さんの横に,共に歩んでいる人がいるのが無性に嬉しい.何様だって話なんですけどね.

「POP SONG」「Flamingo」「春雷」そして「LADY」.
アンコールで流れた音楽たちを,とても楽しそうに演奏する彼らの姿を見て,純粋な「羨ましさ」を覚えた.
何か目標や目的を共有する,同じことばで通じ合える,仲間.
それはきっととても得難いもので,そして僕に足りていないものだ.
良いなぁ,と思ってしまった.それほどに彼らは眩しくて,楽しそうで,そして遥かな高みにいた.


MCの中で,とても印象に残っている,米津さんの言葉がある.
「これからのみんなの人生が,どうか豊かなものになりますように」
 
豊かな人生を.
実は僕もよく口にする表現であったりする.
豊かな人生を.豊かな旅路を.
そんな言葉が,きっと様々な幸運な偶然のもと,米津さんから僕らに届けられた.
それが,
ただただ嬉しかった.


ライブが終わり,乗車率300%くらいのポートライナーに揺られながらライブの余韻を噛み締めた.
通信制限のかかったスマホでできる限りライブの感想ツイートを見て回った.

本当に楽しかった.
あまりにも多くのものを受け取った時間だった.

本当に,ありがとうとしか言葉が見つからない.
またいつか,少しだけ胸をはれるようになった姿で,彼らに会いに行きたい.


最高でした.

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