においを楽しむ
蚊が現れたので、今季初の蚊取り線香を焚いた。
香ばしい香りがたちこめ、たちまち子供の頃の夏の思い出をよみがえらせた。
猫川は子供の頃毎年夏休みになると茨城の港町のおばあちゃんちに何週間も滞在して、虫取りをし、花火をし、海で泳ぎ、お墓まいりをした。そこではいつも蚊取り線香の匂いがしていた。
トトロの散歩道、菊次郎の夏、井上陽水の少年時代の世界は今も猫川の脳裏に原風景として残っている。蚊取り線香の匂いは、潮の匂いとともにそれらを一瞬にして思い出させてくれるのだった。
猫川は現在横浜の港のそばで毎日仕事をしているのだが、ここは海のそばにもかかわらず潮の匂いがほとんどしない。時々岸壁にも行くが、そこですらうっすらとしか匂わない。茨城の港は強烈な潮の匂いがしたものだったけどな。横浜港は無臭すぎるな。
記憶はにおいと結びついていることが多い。最近記憶力の低下が著しい猫川はそのことに気づいてから日常の中で漂う匂いをスルーせずに楽しむことにした。
街の匂い、海の匂い、人の匂い。
職場の同僚たちの匂いもこっそりかいで楽しむ。ただのおじさんでも清潔感のあるいい匂いがするとそれだけでちょっと好きになりそうになる。猫川もデスクに無印良品のアロマデフューザーを置いていい匂いを嗅ぎながら仕事をすることにしたらストレスが限りなくゼロになった。子供の口の臭いの変化で中耳炎になっているのに気づくほど嗅覚が敏感なHSPにとって、好ましい匂いに包まれていられる環境はとても大事だ。
しかし朝夕の満員通勤電車内には時々危険も潜んでいる。最近はあまり強い香水は流行っていないので助かるが、先日は強烈なポマードと日本酒とタバコのヤニ臭が混ざっている人の隣に立ってしまい吐くかと思った。父がポマードをつける人じゃなくて良かった、とその時は思ったけれど、もし父がポマードをつけていたら、もしかしたらそれも猫川にとって郷愁を帯びた記憶を思い出させるものだったのかもしれない。
うちの子供達は大人になったとき、どんな匂いに郷愁を感じるようになるのだろう。
我が家特有の匂いといえば。
猫のう○こ
もうちょっと家の掃除を頑張ろうと思う猫川であった。
#日記 #エッセイ #HSP #におい #港
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