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訪れるべき時がきた。悲しまないでダーリン

ついにこの時が来た
だけど悲しまないでダーリン

たしかこんな感じだった。

テレビからヒゲダンの歌声が流れてきた。
画面を観ながら時が止まった。
耳が歌詞を追っていた。

初めて耳にしたフレーズ。
だけど心当たりがあった。


その時は今まさにやって来ている。



歌詞の続きは知らない。
いまは知る必要がない。
でもわかっている。
“この時”がなんのことかを。


“焦りを薄め合うように私達は祈る”

ライブ開催地から地元に帰ってきて翌日。
フル充電のままツインのもとへ向かった。
充電をおすそ分けしに。
それは夢の中で叔父から教えられていた約束の日。
世界は台風で洗われてきらきら輝いていた。

ここ最近は店の忙しさからほとんど話せてなかった。
けれどこの日は彼のほうが待ちわびていたようだった。
出迎えるようにタイミングよく、わたしの目の前へぴょんと姿をあらわした。
堰を切ったようにぽんぽん口から花びらが舞い出る。
彼のエネルギーが時空間に陽炎のような揺らぎを起こして、ここだけ世界が違っていることを教えた。

そして会話の中で、彼はわたしと同じ世界にいられていることを知った。

わたしはずっとそのことが心配だった。
あちらの世界に行くのか、こちらの世界に来るのか。


世界はどんどん二極化している。
そしてやがてそれぞれは交わらなくなるという。
もし別々の世界を選んでいたらとおもうとこわかった。

けれども幸い彼は、表面上は慎みながらもわたしと同じ世界に進んでいた。
どうやら彼の環境自体に同じ感覚の人が多いようだ。

考えないようにしていたが、会話の中でたまたま話題が出て知ることができた。
とてもとても安心した。
見えないところでしっかりつながっていた。

『アポトーシス』

それを確認した足で実家に寄った。
遠征したことをひどく驚かれた。

母は良くも悪くも中庸だからか、まだどちらでもない。
ただ唯一打った父にはまるで話が通じなかった。
まさかの10年下の妹までも。

話を聞く限りでは恐怖で耳を封じてるように感じた。
けれど本人たちはそれにすら気づきそうになかった。

父と妹にはもうこちらの世界が見えないのだろう。

それをわかって、ツインとは同じ世界にいるのを知った安心感もあり、2人にはいろいろを説得するのを諦める決心がついた。
冷たいようだけれど。
本当は、自分の選択を認めてくれる、身近な仲間が欲しかっただけなのかもしれない。
それに、説得するほどにこちらのエネルギーが奪われるのがもったいなくなった。

そもそも、選択は他人が決めるものではない。
最終的には本人が決める。
マスメディアと同じことをしても意味がない。
理由がどうあれどちらを選ぶかは本人の自由だ。
それが他人に流されて選んだものだとしても。
救いたいとおもいながら、結局は自分の意見を押し付けてるにすぎなかった。

それに、端から話など通じていなかった。
救うどころか退けられていた。
だから2人があちらを選ぶことを尊重することにした。
まだしばらくは本人たちが選択したことへの不安から噛みついてこられることはあるとはおもうけれど。


ついにこの時が来た
だけど悲しまないでダーリン

ただしくは↓でした。失礼しました。

訪れるべき時が来た
もしその時は悲しまないでダーリン

Official髭男dism『アポトーシス』

アポトーシス。
個体をより良い状態に保つためにプログラムされた細胞死。
自らの意思では避けられない別れということだろうか。
それともやはりこの世界の二極化のことだろうか。

単体とアルバムで意味が違ってきそう。



『紫の夜を越えて』

なぐさめで崩れるほどのギリギリをくぐり抜けて
一緒にいて欲しい遠くまで潤み始めた目を開いて
紫色の夜を越えて

スピッツ『紫の夜を越えて』

紫色は、赤と青からできている。
朝焼けと夕暮れに、空はもっとも美しい紫色になる。
そして太陽が地平線近くなるとそのまわりだけ赤く染まり、やがて赤が消え空は青一色になる。

もう、紫ですらいられなくなってきているのだろうか?

待ち望んだ日の出・日の入が迫っている証でもある。
けれども、消えゆく赤はどこへいくのだろうか?
それとも2種類ある空に分かれていくのだろうか。
光あふれる昼の空と闇におびえる夜の空とに。



君が話してた美しい惑星は
この頃僕もイメージできるのさ本当にあるのかも

いつも寂しがり時に消えたがり
画面の向こうの快楽匂いのない正義その先に

従わず得られるならば砂の風に逆らい
再び生まれたいありがちで特別な夜

スキいただけると心が潤います。サポートいただけると懐が潤います。よろしければ潤してやってください。