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映画雑談『ガンパウダー・ミルクシェイク』

観終わったあと、私もミルクシェイクを飲みたくなりました。影響されやすい性質なのです。単細胞万歳。
孤高の殺し屋になりきってダイナーでボンベロならぬローズに銃を預け、ジュークボックスでユール・ネヴァー・ノウをかけたかったのですが、結局いつもの甘味処でぜんざいをいただきました。塩昆布とともに。これが私の、ハードボイルドです。

映画とは関係ありません。ごめんなさい。

『ガンパウダー・ミルクシェイク』タイトルもカッコイイ。まさに痛快無比のポップでキュートなバイオレンスアクション映画でした。(以下、ネタバレが少しありますのでご注意ください)

とにかく序盤からバトルの連続です。主人公は女殺し屋で、凄腕ではありますが不死身というわけではありません。男たちが牛耳る組織から理不尽に追われ、罠にはまって絶体絶命のピンチになりながら、それでも戦います。

傷だらけのヒロインが野郎どもを蹴散らす。それだけでも十分爽快なのですが、さらにスタイリッシュなカメラワークとグルービーなBGMで高揚感を上げてくれます。結構えげつないバイオレンス描写も、なんだか清々しくさえ思えてきます。これぞアクション映画の醍醐味でしょう。
あの三バカはいい味を出していたので、できたらしぶとくラストまで絡んできてほしかったですね。『長靴をはいた猫・八十日間世界一周』の、あの三人みたいな感じだったら激アツだったかな、と個人的には思いました。

しまじろうも「そうだそうだ」と言っています。

設定やバトルシーンなどをはじめ、至るところにいろんな映画へのオマージュが散りばめられています。タランティーノ監督やジョン・ウー監督作品を思わせるほか、ジョン・ウィックぽかったりキングスマンぽかったりといった具合です。きっと私も知らない元ネタがもっとあるでしょう。元ネタについて話すだけでも楽しいかも知れません。
日本の超有名時代劇のアレとしか思えない必殺のアクションも登場して、私の頭の中ではあのトランペットが鳴り響きました。スカジャン、マシュマロ、北海道のロゴといい、この監督、かなりの日本好きです。

もしかすると、か弱い女が屈強な男どもをヘコませ溜飲を下げるだけの、ありがちなフェミ映画だと思われるかも知れません。もちろんそういった楽しみ方をしたって構わないのでしょうが、この映画には単純な夢物語からは感じ得ない痛みを感じました。
物語の後半になって、ヒロインとともに戦うある女性が、胸を撃たれます。彼女は致命傷に違いないその銃痕をピンクのカーディガンでそっと隠し、敵に反撃します。悲惨です。しかしさり気なさが美しい。一見すれば荒唐無稽なエンタメでしかないこの映画の、実は象徴的なシーンではなかったかと思います。

わきまえているとかいないとか、そんなレベルで論じる時代はとっくに終わっているのだけれど、ミルクシェイクの甘さの中に、悲しみの火薬が隠されていることを見逃したくはありません。ネオンサインのきらめく甘美な世界。ヒロインたちの行く末に、幸あれ。


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