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〔ショートショート〕文学トリマー

私の仕事は「文学トリマー」。世の中には偽物の文学作品が多すぎる。仲間を裏切ったり、国家に逆らったり、不倫や殺人を美化するようなもの、本物の文学なんかじゃない。

「文学トリマー」は、ちゃんとした国家資格を持つ、一握りの優秀な人間だけに許された仕事だ。エセ文学作品をあぶり出し、即座に回収、廃棄処分にする。この国の美しい秩序を守るために、必要不可欠な仕事。誰に何を言われようと、私は自分の仕事に誇りを持ち、全力で励んでいた。

だがある日、暴動が起きた。頭の悪い連中が「読みたい物を読ませろ!」と騒ぎ、政府に方針転換を迫ったのだ。すぐに鎮圧されると思ったのに、そのうねりは大きくなり続け、とうとう政府が折れてしまった。文学トリマー制度は廃止、私はまさかの失業だ。

だが、私が読んできた文学作品は、上に逆らわずコツコツ働く話ばかり。世の中がガラッと変わった今、どうやって生きていけば良いのだろう。誰か教えてくれないだろうか。

(完・405字)


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