〔詩〕追憶
昔二人で見に行った映画を
今ごろテレビで放映だって
捨てられなかった写真を
不意に見付けてしまった気分
あの頃の私はもういない
粉々になった心は再生し
ずいぶん逞しくなったけど
バカみたいに彼を信じていた
真っ白だった心はもうない
並んで座った映画館
同じところで笑って
同じところで涙ぐんで
そんな二人なら大丈夫だなんて
根拠のないオマジナイ
そんなものに
縋っていける訳がなかった
今の私を彼は知らない
私も今の彼を知らない
泣いても笑っても他人
その余白が心地良くなって
やっと
ひとりの自由に気が付いた
私が好きな音楽
私が好きな映画
私が好きな本
私が好きなゲーム
私が好きな人たち
私が好きな全てに彩られ
捨てられない過去はある
それでも
今の私が一番好き
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