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同志少女よ、敵を撃て【読書ノート】

 殴り書きからはじまり、デジタルにしてみたり、手書きに戻ったり。飽き性かつ凝り性な私がしっくりきて続けている読書ノート。私は読書をすると「文章を書きたい」「文字を書きたい」「ペンを持ちたい」と衝動的に机に向かいます。”読書”という受け身の時間を長らく持ったからこそ、次は外に向かう力がはたらくのでしょうか。内に深く入り込む時間も、のびのびと外に発散する時間も楽しい時間です。
 そんな私の読書ノート。その時々の素直な感情がむき出しになっていて若干恥ずかしさはあるのですが、どなたかに見てほしいという承認欲求が芽生えましてね、Z世代なので。こそこそと公開してみた次第です。noteのほうには読書のノートの清書とともに、以上のようなちょっとした文章も添えていきたいと思います。私の承認欲求っと個人的感情しかないものですが、どなたかの目に止まれば嬉しいです。


Story

 独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺されす寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「闘いたいか、生きたいか」ーそう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を売ったドイツ兵狙撃手と母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために・・・。

Review

 本作が本屋大賞を受賞して話題になったとき、一度は手に取ったのに本の分厚さに気後れして読まなかった。その時の自分に言いたい、はやく読め〜!!確かに戦争を題材にする分、メンタル的に読めない日もあったけれど、引き込まれると止まらず、しっかりと最後まで読むことができた。そして、いつも以上の熱量を注いで読書したいと思った。
 フェミニズムの考え方が広まってきたなかで「シスターフッド」(女性同士の連帯・親密な結びつき)を描く作品が増えているとは耳にしていたけれど、この概念を本作で深く知ることができた。それぞれが置かれた境遇のなかで衝突し、慰め合い、惹きつけ合っていく。百合っぽいといってしまえばそれはそうなのだけれど、それを超えた女同士の絆みたいなものがあった。女性が男性と同じ役割を持ってもいい、という節もありつつ、女性が男性と同じように戦地に出ること自体が戦争への士気を高めるプロパガンダになってしまっているのがなんともやるせない。この構図、現代社会でも心当たりがありすぎる。戦中に女性であること、その苦難が生々しく描かれていて苦しかったり。得に、性欲を満たすためではなくて男同士の連帯のために女性を犯す、という描写は本当に辛かった。その辛さを噛み締めながら、「同志少女予、敵を撃て」のタイトル回収は見事にも程がある。セラフィマにとって”敵”とは単にドイツ軍であるというわけではなく、女性を脅かす存在であったのだな、と。「女性を守るために戦う」という軸がセラフィマの中に通っていた、とそれまで時折不安定であった彼女の真意がこのタイトル一文で一気にみえた。
 武器や地理、戦略についての詳しい描写があるからこそリアリティとメッセージ性が強くなっているのはわかるけど、正直理解しきれないところもあって。理解できないながらも、凄惨な状況を想像できて本当にあってはいけないことだよな、と改めて痛感した。他国どうしの戦争を日本人作家が描いたからこそ、その表現をストレートに受け取ることができたので、本作を読むことができてよかった!と心から思う。


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