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今度の小栗旬は一味違うのさー映画「キャラクター」ー

映画「キャラクター」を観た。

猟奇殺人犯と偶然その殺人現場に居合わせた漫画家。漫画家はその殺人犯の圧倒的なキャラクターに惹かれて漫画を描く。

やがて、殺人犯は漫画の存在に気がつき、漫画の殺人を模倣した殺人を繰り返す。

漫画原作で有名な長崎尚志の原案だからか、まるで漫画のようなストーリーだ。漫画家と編集者のやりとりにもリアリティがある。「絵が上手くてもキャラクターが描けないなら面白くならない」といった台詞にはなるほどと思った。

また、刑事の描き方もいい。特に現場に入るときに、ビニールキャップやビニールの足袋をはいて入るシーン。刑事は、現場に頭髪が落ちないように実際に行うという。また、犯人が逃げようとするとき、すぐに追いかけず、刑事役の小栗旬が「刑事ドラマとかならここで盛り上がるんだけど、現実はつまらないんだよな」とすでに反対側に大勢の警官がいて逃げられない姿が描かれる。現実がどうかは知らないが、警察にはこれくらい周到な準備をしていてほしい。

刑事ドラマや映画を観ていて、最も萎えるのは、刑事に対して「なんで、そんなことしたん?」と感じる時だ。それが「キャラクター」には、あまりなかったのが好印象だった。

「キャラクター」に似ている作品で「ミュージアム」がある。「ミュージアム」も猟奇殺人犯を追う作品で小栗旬が刑事の役だ。

しかし、「ミュージアム」には、その「なんでそんなことしたん?」が大量にあり、なかなか話に集中できない。「ミュージアム」の小栗旬は何度も何度も何度もミスするのだが、なかなか犯人に殺されない。私情に任せての独断捜査。飲食店で聞こえる声で捜査情報を後輩と話す。そして近くにいた犯人にそのことを聞かれる。犯人を勝手に追いかけ、後輩を人質にとられ、目の前で殺される。そして、犯人がいくら近くにいてもとり逃す。もういっそ、とっとと殺された方がいいのではないかと思えるほど、「ミュージアム」の小栗旬は無能なのだ。

一方、「キャラクター」の小栗旬は有能だ。漫画と殺人犯の行動の共通点にいち早く気がつき、独断ではあるが、漫画家である菅田将暉に近づき、信頼を得る。そして、菅田将暉から犯人の情報を聞きだすことに成功する。

しかし、この映画の小栗旬は、「ミュージアム」と違い、有能ゆえに犯人に殺されてしまうのだ。

無能ゆえに(?)生き残った「ミュージアム」の小栗旬。有能ゆえに殺された「キャラクター」の小栗旬。この二つの似たストーリーと似た役の小栗旬を観て、人生の悲劇に想いを馳せる。

「キャラクター」の主人公は菅田将暉演じる漫画家とFukase演じる殺人犯のはずなのだが、映画はどうしても小栗旬にスポットを当ててしまう。菅田将暉はいい役者だ。Fukaseの猟奇殺人犯ぶりも素晴らしい。しかし、小栗旬は、そんな2人も喰ってしまう。なにせ、小栗旬だからだ。存在がスターすぎる。そう、だからこそ、小栗旬は死んだのだ。そうでないと、何の映画だったのかよくわからなくなる。たぶん、きっと、そうに違いない。、、、いや、知らんけど。