【怖いけど怖くない怪談】#7布団から手を出して寝ると
何かに触られた気がして目を覚ましたが、そんなわけがない。ひとり暮らしなんだから。よし、もう1回寝よう。
それからすぐに布団から出していた右手の甲を〈トントン〉とされた気がした。
気味が悪かったが、それ以上に眠たかったので、手足を布団の中にしまってそのまま眠った。
次の夜、今度は布団から出ていた足に冷たさを感じて目を覚ました。
〈誰かが触った〉
そう直感した。
それに、一瞬だけ真っ白な手が見えた気がする。赤い部分もあったような。⋯⋯爪だろうか。
その日も手足を布団にしまって寝た。窮屈だったが起こされるよりはマシだったので我慢した。
手足をしまった状態で寝ていると、頬を撫でられた。それから俺は全身に布団を被り、亀のような状態で寝ることが多くなった。
しかし寝相というのはコントロール出来るものではないので、夜中になると勝手に手足が出てしまう。その度に冷たい手で触られた。
それが何日も続き、2週間経っても止むことはなかった。
しかし、収穫もあった。足に冷たさを感じた瞬間に目線を向けた際、一瞬だけ髪の長い女が見えたのだ。つまり、夜中に手足を触っていたのは女の霊だったということだ。そして、やつは必ず夜中の2時に現れる。
そうと決まればやることはひとつだ。俺は夜に備えて昼間に数時間寝た。
そして夜になり、俺は裸で寝た。
顔と手足を布団にしまい、横向きになり、ちんちんだけ出す作戦だ。
彼女いない歴42年の俺にとっては幽霊も人間も大した違いはないのだ。幽霊よ、どうか触ってくれ。
やがて2時になると、部屋の温度が1、2度下がったのをちんちんが感じた。
やつが現れる前触れだ。
ちんちんを臨戦態勢にし、体勢を崩さず静かに待ち構える。
『⋯⋯は?』
女の声が聞こえたと思った瞬間、空気が少し温かくなり、嫌な感じが消えた。
それ以降、夜中に霊が出ることはなくなった。
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