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失敗パーマ

 私は元々茶色い天然パーマだ。幼い頃、母が私を連れて出かけると、知らない人から必ず髪の毛をほめられたらしい。

 しかし、なぜか成長するにしたがい天然パーマは消え、髪の毛も黒くなってきた。小学校6年生の頃はまだ茶色っぽかったのに、中学生になると真っ黒ストレートである。

 良かったことは校則に引っ掛からなかったことだ。当時髪の色が茶色の友達は、「異装届」なるものを提出していた。そんなくだらないものに振り回されなかったのは幸いだった。

 大学生になっても真っ黒ストレートだったので、私は「ゆるふわパーマ」に憧れ、行きつけの「おばちゃん美容室」に行った。ちなみにここは小学生の頃から通っていた所だ。オシャレに疎かったので、ずっとそこで髪を切っていたのだ。

 さて、初めてのパーマである。カーラーを巻いていき、熱を当てて…期待に胸はふくらむばかり。しかし出来上がったのは、チリチリの完全な「おばちゃんパーマ」であった。

 家に帰ってワーワー泣いたが、不自然なカールが消えるわけもなく。とりあえず美容室に戻り、カールの激しい所だけ切ってもらった。さらに滑稽な髪型になったが、もう後には引けない。

 そして大学へ。「あれ、猫足ちゃんパーマかけた…?」みんな視線が必ず上に行き、微妙な表情になる。しかも誰も「可愛い」とか「オシャレ」とか言ってくれない。

 仕方なく自虐で、「コレ失敗してさ〜。これからは『バッハ猫足』って呼んでね♪ハハッ!」なんて言ってはみたものの。何がハハッ!だよ、こっちは泣きたいよ。以来あだ名は「バッハ」になった。

 あれからウン十年。女性ホルモンの関係か知らんが、元の天然パーマが出てきた。今はあの時理想だった「ゆるふわパーマ」になっている。神様は見捨てなかったのですね。

 結局あのおばちゃん美容室にはあれ以来行っていない。その店の前を通るたびに思い出す、あの失敗パーマのこと。みんなそうやって大人になるのだ、そんな気がする今日この頃である。

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