見出し画像

「うっかり」逝った叔父

 叔父が急逝した。お正月に会ったばかりである。その時に「インフルエンザで具合が悪い」と話しており、心配していた矢先だった。数日前まで仕事に出ており、本人はさらさらその気がなく、「うっかり」亡くなってしまったのである。

 連絡は私が岡山を旅行している最中に来た。旅行気分が台無しだが、やむを得ない。叔父の娘に連絡がつかず、連絡先を知っている私が頼みの綱だったのだ。

 その日訪れるはずの病院に叔父が姿を見せず、紹介元の病院が警察に電話をして、叔父の家を捜索してもらったらしい。その日の午前中に病院が電話をした際には「大丈夫です」と答えていたそうだが、警察が来た時には既に、であった。まことに「うっかり」逝ってしまった叔父である。

 叔父には弟がいる。2人とも高知では有名なバーを経営しており、そこそこ名の知れた人物だ。宵越しの金は持たない兄叔父は葬儀代も無く、弟叔父の名前を出して弔問客を集めることにした。

 通夜、葬儀合わせて400人ほどが来てくれ、盛大なお別れとなった。なぜか悲しいという感情はわかず、叔父の娘、つまりいとことたわいもない話で盛り上がった。

 弔問客の中には、弟叔父が亡くなったと勘違いしていた人もいた。弟叔父宛てに花輪まで届き、混乱をきわめた。挙句には借金取りまで押し寄せ、ちょっと一悶着あったらしい。

 さて、叔父は高知県一の進学校であるT高を卒業し、関西の有名私大に進学した。高校では文芸部に所属していたそうで、私の物書きは叔父の遺伝だろう。

 スポーツマンで、夏はサーフィン、冬はスキー、その他某スポーツ協会会長も務め、四国にそのスポーツを普及させた第一人者でもある。障害者スポーツにも関わっており、よく大会も開いていた。

 人当たりがよく人望があり、世話好きで面倒見が良かった叔父だが、お金と女の人にはルーズだったという弱点があった。顔に似合わずとにかくモテたらしい。

 別名「七色シーツ」と呼ばれていたと、いとこが話す。何のことかと聞くと、「1週間毎日違う女の人と寝ていたから」だと。それを聞き、火葬場で大笑いした不謹慎な私である。

 エイズ予防キャンペーンで行進をした時には「コンドームマン」に扮し、コンドーム型の着ぐるみを着た叔父だが、下半身の自由さ(?)とは関係ないらしい。

 断っておくが、私は親戚だけど貞操観念はしっかりしており、経験人数だってそんなに(←どうでもいい情報)。ともかく、兄叔父・弟叔父共に「百人斬り」「千人斬り」の噂があるのは確かである。

 娘であるいとこもしっかりその血を受け継いで、目ん玉飛び出るような話を色々聞いた。若い女の子なんだから身体は大切にしなさいよ(ため息)。

 そんなこんなで無事に全てが終わった。最後の最後までバタバタしていたが、これも叔父らしい。正月に初夢で「金の龍が天に舞い上がる夢を見た。これは縁起が良い」といとこに話していたという叔父。持ち前の好奇心で「うっかり」その龍に乗り、天に駆け上がって行ってしまった。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?