拝啓 世のおじさんたちへ

まえがき

 これは1年前話しだ。私はこれから新たな設備環境を整えるための製品説明、取り付けの具体の日程などの打ち合わせを済ませ、一度帰社をするところだった。都内で水処理システムや産業システムなどを手掛ける会社に務めており、私の担当部署は製品の修理やサービス向上などの説明など、外仕事が多い部署で働いていた。企業としても大きく、会社で生産した電子機器やモーターなどは日本全国のあらゆるところで、人目にはつかないが縁の下の力持ちとして普及されている。
 私は27歳の時に転職をして今の会社に勤め始めて、そろそろ20年が経とうとしていた。各地で会社の製品が普及しているため地方へ出張をし、製品説明や宣伝などの仕事などにも関わることもあり、家に帰れない日は妻に申し訳ないと思ったが「頑張って仕事してきなさい!」という激励の言葉もあったことで、長年この仕事を続けてこれたのだと思う。

 この日は新しく備え付ける電子機器の説明のための打ち合わせは、先方とも話しはスムーズに進めることができたし、問題はなさそうだ。これから会社に戻って今日の報告と、各所製品の対応をしなければならなかった。
「井上さん良かったですね、話しがまとまって」
「そうだな。来月中の取り付け作業にも立ちあってもらうからよろしくな」
「はい!よろしくお願いします!」
製品説明や新たな製品の宣伝などで営業へ行く傍ら、新人教育のため私は新入社員と共に行動をすることが多かった。今ついてる新人だけじゃなく、他にも指導をしている者もいる。自分が先輩に指導してもらったように、今は私が指導する立場になったことで、より良い人になれるよう成長してほしいと思っていた。
「どうだ、今の仕事にも慣れたか?」
「ええ、まあなんとかです」後輩は頭をかきながら、自信なさそうにして答えた。誰だってそうだ自信がなくてもいい。私だって実際そうだったのと同じように、これから若手に任せていけるくらい頼もしくなってもらいたかった。
「自信がなくてもつけてもらう!って感じかな。まあ気長に頑張っていこうや」
「ありがとうございます。でも井上さんが先輩で良かったです。怖い人じゃないですし」
「だって嫌だろ、怖い部長とか気難しい上司とか。そういうのは無し。さっ、帰って仕事するぞ」
「はい!」
 これから若いのが社内を盛り上げてくれるのだろうなと思うと、この先が楽しみだった。

→続く

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