恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を今更読んだ女の感想文
あらすじ紹介とか何もなく、オタクがただ
「なんて面白い話だ!!」って騒いでるだけの記事です
結果、すでに『蜜蜂と遠雷』を読んだことある人向け
の日記となってしまいました ご了承ください
『蜜蜂と遠雷』
めっちゃ有名な作品だし本屋大賞とってるのも知ってたけど、読んだことはなかった。
本屋であのお洒落な表紙を見るたびに、ちょっと気になってはいたんです。でも手に持ってみるとかなりの分厚さで、この厚みで上下巻は流石にしんどいだろうな……と思って買うのを躊躇ってました。
中学生までは500ページとか数日でサッと読み切ってたけど、高校に入ってからは本をあんまり読まなくなってたし、大学の講義で読むのも、日本の中世あたりの短い御伽草子か、別に大して長くない近代文学くらい。近代文学なんか、未だに100ページ読むのに2日とか、それくらいかかっちゃう。集中力がゴミすぎる。近代文学の話自体はそこそこ面白いのに、集中力が足りなくてずっと読んでられないんですね。
そんな私が、現代小説とはいえ、上巻の500ページ。ぜんっぜん読み切れる気がしなかった。上下合わせたらもっと長いし、そもそも値段も高めだし、かなり尻込みしてしまっていた。
……んだけど、ネットの友達に面白いよって言われたので思い切って買ってみたオタクの感想文です。
まだ上巻しか読んでないんですけど、下巻を手に入れる(明日バイト前に本屋に行きます)までソワソワして落ち着かないので感想文をすでに書くことにしました。
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本屋で買って、中身を読まないでとりあえずあらすじだけを読んだとき、マジでこれ私に読めんのかな?と割と本気で思いました。
私は、ギターはちょっと弾くけど、ピアノはマジ全然わかんないし。モーツァルトとかベートーベンとか、そんなの聴いてたら眠くなっちゃうし。クラシックとか高尚な音楽、全然わかんないし。青春はボカロと某国民的アイドルに捧げてきた陰気なオタクだし……。
私は割と、自分に教養のないことを恥じている(けどやはり学はないし勉強もしない)陰キャです。『蜜蜂と遠雷』は、買ってからも「こんなの読めるかなあ……読んでみて中身全然わかんなかったら恥ずかしいなあ……」とよくわからない羞恥心でしばらくは読んでいませんでした。夏休みに読もう!と後回しにしてました。
ぱらぱらと数ページ開いてみると、目次もなんかめっちゃおしゃれで、知らないけどおそらく曲名だろうなって言うタイトルがたくさん見えて、めちゃめちゃ不安になりました。
こんなの読める気がしない!!
こんなの読んでるの、多分、スタバであえてブラックコーヒー頼んで、スタバでニーチェとか読んでて、部屋は全部無印良品だけで構成されてて、髪色が暗めの茶色で、ナチュラルメイクの似合う綺麗な女の子だけだよ!!!うわーーーん!!!フォロワーに裏切られた!!!嘘つかれた!!!!うわーーーーん!!!!
と思ったのですが、いざ読み始めてみるとそんなことはなかった。マジで。
本の背中側の表紙に載っていたあらすじを読んでいた私は、読み始める前、きっととんでもないピアノの天才が出てきて、天才にピアノ界隈が翻弄される系のお話しかな〜?と思いました。間違ってはなかったけど、全然それだけじゃなかった。
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以下ネタバレあります
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『蜜蜂と遠雷』には天才がたくさん出てきます。
まだ上巻しか読んでいないので、「蜜蜂王子」がどういう系統の天才なのかはわからないのですが、彼は多分とんでもない天才なんでしょう。
ただ、私が上巻で、より「うわ……これは天才だ」と思ったのは栄伝亜夜ちゃんでした。
彼女は、神童だったにもかかわらず母の死をきっかけに幼少期に一度ピアノから離れて、それから紆余曲折あってまたコンクールに出ることになってしまった、という中々な過去持ちの20歳の女の子です。
まず何がすごいって、母の死によって「音楽をする理由がなくなったからピアノをやめた」っていうのがすごくないですか???? 母が死んだときに子供(13だったっけ…?)だったとはいえ、神童として崇め奉られてたのに、必要がなくなったからってやめるってすごくないですか。本当に、音楽のためにピアノをやってたんだなあ……と、上手に言語化できないんですけど、そう思いました。
ピアノを(人前で)弾くことをやめたのに、音楽は素直にまだ好きでいられた、って言うのもびっくりポイント。本当にただ音楽が好きで、自分の音楽のための手段がピアノだっただけなんだなあ。
こうやって考えてみると、マーくんが亜夜ちゃんの手を取って繋ぎ止めておこうとしたのもわかります。
捕まえておかないと、この音楽の天才はピアノなんて必要ないって思っちゃいそうだもんね。本文内にも書いてあったけど、本当に亜夜ちゃんにとってピアノは手段の一つに過ぎなくて、音楽を感じられたら、自分の音楽を表現できたら、それで満足なんだろうなあ……と思います。うぅん、すごい。
もちろん、人間性はマサルとか明石とかのが成熟してるし、人の声にメンタルが上下する危うさはあるけど、音楽的なセンスとか才能は本当にすごい。
人間性が等身大の、ちょっと脆い女の子だからこそ、音楽についての才能が際立ってる感じがしました。
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あの、急なんですけど、私の話をします。
めちゃめちゃ自分語りです。最終的に感想文に帰結します。才能の話です。
私は、一時期めちゃめちゃ小説を書いてました。
高校生の頃に二次創作をpixivに載せるようになって、ある時点から、幸いなことに割と色々な人に見てもらうようになって、そこで調子に乗って「もしかして自分って文章の才能があるのかも!?」なんて割と本気で思ってました。
中学生の頃から、将来の夢は、小説家でした。
誰にも言えなかったし、もう言えないけど。
小説家を夢見るのはやめました。だって、才能ないんだもん。自分の文章は所詮、「アマチュアにしては読める方」ってだけで、プロを目指すとか馬鹿げてるって急に思いました。
気づいたきっかけは、自分の周りに才能のある人が集まるようになったことだと思います。自分よりなんでもできる人がたくさんいて、自分なんか何も出来ないんだって突きつけられたというか。
そこでがっつけるほど私は強くなかったし、熱意もなければ努力もできなかった。昔から割と負けず嫌いではあったけど、人の書く文章を劣等感のために素直に読めなくなってしまうくらいなら、自分が文章を書かなければいいと思いました。
周りの人に優しくできなくなるくらいなら、私がやめればいいじゃん。才能ないし。(結局、劣等感が勝って周りの人にはあんまり優しくできなくなりました。申し訳ない。こんな私と友達でいてくれて感謝してます)
そう思ってやめちゃいました。
『蜜蜂と遠雷』を読んでいる途中、急に泣きたくなりました。劣等感です。自分はこうなれなかったから。
ただ素直に文章を書くことが好きだからひとりでも続けよう!って。そう思って続けるだけの、文筆への熱意も才能も、私にはなかったなあ。
音楽が好きだから音楽を聴いて、音楽が好きだから、ピアノをやめてもギターを始めて。本当に素直に音楽が好きで、離れようとしてもずっと音楽のそばにいるような。亜夜ちゃんは本当に、音楽を愛する才能があるんだろうなと思います。
『蜜蜂と遠雷』は、音楽を愛する才能のある人がたくさん出てくるなあ、って思いました。
それってすごく難しいことだし、すごく凄いことだなあと思います。音楽に付随してくる、名誉とか、プライドとか、立場とか地位とか。そういう物をなしにして、ただ音楽だけを愛することができるって、それだけでもう才能だろうな〜と思います。羨ましいし、眩しい。
私の好きなアーティストが、なんか生前に日の目を見なかった作家ばっかりオマージュするんですよね。
私はそれをすごい不思議に思ってたんです。でも、今はなんとなくわかるなあと思います。
誰にも求められなくても、誰にも評価されなくても、それでも書き続けるって、もうそれだけで才能ですよね。打算的なことをなしにして、純粋に何かを愛せるってすごい。めちゃめちゃすごい。
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と、そんなことを思いました。
才能って、そういうことなのかなあ……とぼんやりと思ったり思わなかったり、そんな感じです。
あと純粋に恩田陸さんの描写力がすごい。ゾクゾクするし、文字を追ってるだけなのに臨場感で鳥肌が立つくらいすごい。マジで早く下巻読みたい。あと明石さんめちゃめちゃ好き。頑張ってほしい。がんばれ。みんな頑張れ。
今日バイトさえなければ買いに行ったのに…!!!
そんなことを思いながら、今日は早めに寝ようと思います。いっぱい感想書いたら満足しました!
3500字も書いたのに、ここまで読んでくれた人はありがとうございます。またどこかでお会いできたら嬉しいです。
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