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【読書日和】「残り全部バケーション」(伊坂幸太郎著)を読んで~過去、現在、未来とは~


 この作品は、以前読んだことがある……気がする。と思いながらも、本棚から本を取り出した。そして読み始める。

 ある夫婦の離婚。ある裏家業の二人の男たちの別離。そこから話は始まる。
 「別れる」ということでは、似たようなものかもしれない。そして、視点が変わりながら話は進んでいく。

 読み進めるほど、時間軸がわからなくなる。過去なのか、現在なのか、未来なのか。そして、それらが点となり、繋がり、線へとなっていく。「今」へと。二人の男を中心に。
 様々な出来事が繋がっていく様は、爽快な気分だった。最後、ドキリと鼓動が跳ねた。ああ、なるほど。繋がった。そう思い、本を閉じた。
 読み終えた後の奇妙な高揚感。こんな気持ちを味わえるなら、いつでも歓迎、と言いたい。

 この作品の中で語られる、過去の「携帯電話」。携帯電話を、架空のものとして話す場面がある。今や携帯電話を持っていない人の方が少ないのではないだろうか。でも昔は、「電話で話すという行為を外でする」ということが考えられなかったらしい。そんな場面を、少し面白く感じた。でも、それも伏線だったのか。「携帯電話」で始まり、「携帯電話」で終わる。まさにそこで、「今」を感じた。

 過去、現在、未来、そして「今」。話が繋がり、「今」となった後、二人の男の未来はバケーションとなったのだろうか。

 

 

 


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