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第14話:セフレちゃんのアンニュイな1日。

そして次の朝になっても昨日の飲み会の出来事を引きずるように雨は
降り止まなかった。

昨夜、なかなか眠れないと言ってアイアイは僕の胸に抱かれて眠った。
ようやく彼女が眠ったのは夜中の四時過ぎ。

だからアイアイは、朝が来てもまだ眠っていた。

僕は彼女を起こさないよう、ひとりそっと起きて朝ごはんの支度を
していた。

トーストにバターとブルーベリージャム。
フライドエッグにベーコン・・・それにアイアイのためにホットミルク。

「おはよ・・・」

その声に驚いて振り向くとアイアイがパジャマを着たまま立っていた。

「あ〜びっくりした・・・アイアイ」

「ごめん・・・驚かせて・・・」

「眠れた?」

「うん」

「気分は?」

「昨日より少しはいい・・・」

「そこに座って?」
「朝食できてるからね」

「顔、洗ってくる・・・」

洗面所から戻ってきたアイアイはキッチンテーブルの椅子に座った。

「ほら食べて、元気ださなきゃ」
「男がどこの誰だか分かったら文句言ってやるんだけどね」
「もしまた、こんなことがあったら一応警察には届けよう」
「あってもらっても困るけど・・・」

「ごめんね、パパさん」

アイアイは昨夜のことを思い出して泣き出した。

「アイアイ・・・大丈夫?」
「ショックだったよね」

「ほら泣かないで、息吸って」
「深呼吸して・・・ほら、深呼吸」

アイアイは泣きじゃくりながら大きく息を吸った。
僕は彼女の後ろに回って優しくハグした。

「こうすれば少し落ち着くだろ・・・」

「ありがとう、パパさん」

「さあ、朝食・・・食べて元気出して」

アイアイはトーストを頬張った。
無造作にトーストを持ったせいでトーストに塗ってあったブルーベリーの
果実がパジャマの膝の上にぼろぼろ落ちた。

「あ〜子供みたいに・・・ぼろぼろこぼして・・・」

僕は落ちたブルーベリーを全部拾って、食べた。

アイアイはくすくす笑った。
泣いたり笑ったり忙しい子だよ君は・・・。

僕はきっとアイアイは大丈夫だと思った。
時間が経てば彼女は昨夜のショックから立ち直ってくれる、そう思った。

「しばらくここにいていいからね・・・」
「僕も付き合うから・・・何日でも好きなだけいていいから」

「私もパパさんもお仕事があるじゃん」

「仕事よりアイアイのほうが大事だから」
「それに僕は自営だからなんとでもなるよ」
「アイアイは有休を貰えばいい」

「ふたりでゆっくりしよう」

とか言え、ネットの注文が絶えない以上、仕事もこなさなきゃいけない訳で
僕は仕事をしながらアイアイの様子を見てやった。

ようやく仕事が終わって、疲れてるっていうのに、アイアイに抱いてって
せがまれた。
セフレちゃんを慰めるためならおじさんは疲れてようが、アイアイがもう
ダメって言うくらい頑張った。
これで少しは、アイアイも元気が出ただろう。

でも今回の出来事が、わずかでもアイアイのトラウマにならなきゃいいけど・・・僕はそう思った。

つづく。

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