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日銀の緩和政策は持続不可能

莫大な政府債務は問題ないのか?

日本と他国のGDP比政府純債務の水準を比べてみると先進国の数値は、2023年から2024年のもので次のようになっている。

  • 日本: 156%

  • 米国: 96%

  • ユーロ圏: 89%

  • イギリス: 92%

しかし政府債務は何故問題なのか? 東京の中心に打ち立てられた巨大な便器は、単に1569億円も要したというだけでなく、誰も使い手がいないこの和式便器は今でも莫大な維持費という赤字(年14億円前後)を垂れ流し続けている。

1569億円の和式便器

何度も言うがこの便器はあなたの給与から自民党が盗んだ金で維持されているのである。(NTTドコモグループを優先交渉権者に決定したらしいがうまくいくのだろうか。

それでも問題がないのだろうか。無駄なものに大量のコンクリートと労働者の人生が浪費されたということを除けば、財務的には債務はゼロ金利が続いていた間は何の問題もなかった。何故ならば、借金も利払いがなければ一生借りていられるからである。

だが問題がある。低金利政策は長期的にはインフレを引き起こし、インフレが起これば低金利は続けられないということである。

まず最初に2021年にアメリカがインフレになり、その後利上げを開始した。そして2022年にはついに日銀も利上げをしなければならなくなった。

2022年12月に行われた政策変更は0.25%の利上げに相当するが、アメリカはすでに5%も金利を上げている。

だが利上げはアメリカよりも日本に弊害が大きい。何故ならば、政府債務が日本のほうが大きいからである。

政務債務がGDPの100%で、国債の金利が1%上がれば、政府の年間利払いは単純計算でGDPの1%分増える。

だが日本の政府債務はGDP比156%なので、金利が1%上がると利払いは1.56%増える。

それは政府が東京五輪や全国旅行支援のような政策が出来なくなるということなので、それはそれで良いことなのだが、実際には日本政府は増税によってその利払いを国民に転嫁しようとするだろう。(実際、岸田政権による増税が議論されている。)

「日本の政府債務は国内の貸し借りだから問題ない」という議論はまったく正しい。何故ならば、政府債務はこのように増税によって国民に転嫁されるから、国外から見れば何の問題もないのである。そう主張し続けてきた自民党を日本人はずっと支持してきたのだから、日本人はそういう状況を自ら望んでいるのだろう。

そして日銀は日本国債を買い支える限界に達しつつあるかもしれない。日銀、ECB、イングランド銀行は発行済み国債の約半数を保有している。


ただ、保有残高自体は問題ではないかもしれない。実際の限界とはインフレが起こったということである。現在、日本のインフレ率は2.8%である。欧米のような物価水準になる日も遠くない。そして日銀はいまだに低金利を続けている。

日銀が国債を買い支えている今の状況は持続不可能である。何故ならば次のことが順番に起きるからだという。

  1. 日銀は紙幣を印刷して日本国債を買い、金利目標を維持する

  2. 日本円の供給量が増え、円の価値が下落する

  3. 日銀は円を支えるために外貨準備を消費して円買いを行う

  4. 円の供給量が減り、日本国債の金利に上昇圧力がかかる

  5. 1に戻る

ここには様々な限界が見え隠れする。まず外貨準備は無限ではない。ドル円を短期的に数円操作するだけの為替介入ならまだしも、長期的にドル円の水準に影響を与えるような為替介入を継続的に行うことはできない。

また、インフレが起こってしまった現状、紙幣印刷を続ければ円安でインフレが悪化し、金利を上げてインフレを抑制しようと思えば今度は景気が沈み込む。

そして2022年12月に打たれた日銀の第一手目は長期金利の利上げだった。

長期金利に上限を設けていたイールドカーブコントロールは、少なくとも上限が0.25%上げられたわけだが、今後どうなるのか。この措置によって状況は次のように推移する。

  1. 日銀は新たな金利ターゲットを設定する

  2. 日銀の保有する国債の価値が下がる

  3. 市場は新たな金利上限に挑戦する

  4. 日銀は国債買い入れで市場を安定化しようとする

  5. 円の供給量が増えインフレが悪化する

この状況はどういう形で解決されるのか。


選択肢1: 日銀が金利の上限を撤廃する

そもそも長期金利を抑えておくことを諦めるほかないというのが第一のシナリオである。その場合、次のことが起こる。

  • 日本国債の金利が上がる

  • 金融市場が不安定化する

  • 日銀はマネーサプライを減らすために日本国債の保有を減らそうとし、金利に更なる上昇圧力がかかる


選択肢2: 日銀の債務が資産(日本国債)を上回り債務超過に陥る

利上げ局面で中央銀行にとって困難なのは、短期金利を上げると債務超過に陥りかねないことである。

中央銀行の資産と負債が何かということを読者は知っているだろうか。資産は主に買い入れた国債であり、負債は主に市中銀行などが中央銀行に預けている預金である。中央銀行から見ればこれは預かっているお金なので負債にあたる。

そして負債には金利を払わなければならない。つまり中央銀行は保有する国債の金利を受け取りながら、預かっている預金に対しては金利を払っている。つまり長期金利を受け取りながら短期金利を支払っているのである。

だからアメリカのように利上げによって短期金利が長期金利を上回るような状況では、受け取る金利よりも支払う金利が大きくなる危険がある。

それで日銀が債務超過に陥れば政府はどうするか?

  • 日銀は政府に救済を求める

  • 政府は増税で資金を集めようとし、経済活動に下方圧力がかかる

  • 政府は国債を発行し、日本国債の価格に更なる下方圧力がかかる

日銀の負債であろうが政府の負債であろうが要するに国民が支払うということである。

現状では、日銀は長期金利しか上げていないが、その大きな理由は債務超過懸念にあるだろう。だが短期金利をマイナスに保ったままでインフレは抑制できるのか?


選択肢3: 日銀がリバースレポを行う

最後の選択肢はリバースレポの設定で短期金利まで利上げする場合である。

リバースレポとは簡単に言えば日銀が保有する国債を市場参加者が短期的に現金と交換する取引で、一時的とはいえ現金を市場から吸い上げるので引き締め効果を生む。

だがこのシナリオは本当に日銀の債務超過を誘発しかねない。

  • リバースレポ金利がマネーマーケットの金利を上昇させ、経済活動に下方圧力がかかる

  • 日本国債の金利よりも高いレポの金利は日銀の資本を更に減らしてゆく


結論

簡単に言えば、円安とインフレを止めるには金利を上昇させるしかないが、金利を上昇させると資産価格と経済が死ぬということである。

結局日銀も利上げをしなければならなくなった。「貯蓄から投資へ」の掛け声で国民をリスク資産に誘導しておきながら、金利上昇によってリスク資産を殺すのだから、岸田首相の詐欺の手腕は褒められてよい。

自民党を信じる者は常にふさわしい結果を手にする。いつもながらおめでたいことである。

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