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吐き出したかったコト_1

欲望

 人間には3大欲求がある。
 食欲、睡眠欲、性欲だ。

 若いうちは睡眠欲以外、あまり渇望しなかった。
 だけど歳を重ねるにつれて、睡眠欲が減退し、代わりに食欲と性欲が増してきたのは不思議だ。

 食欲に関して、社会人になり、自分のお金で好きなものが食べられること、仕事中心の日々の中でのささやかな楽しみとして充実感を追い求めるのは、理由として納得がいく。昔の好みは食べ放題バイキング。今では量より質だ。連休に向けてお高いお取り寄せを取ってみたり。

 しかし、性欲の増大は全くもって心当たりがない。体は早くも衰えはじめ、つかなくていいところに肉がつき、残しておきたいところは貧相になっていく。目に見えて老いの兆しがある。性の対象からは遠ざかっていく自覚があるにも関わらず、身体は快楽を欲す。
 それがなんとも虚しいやら、切ないやら。

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 特に最近は爛れきっている。
 朝起きて、こどもを送り出したあと、出勤前の準備の一環で一回。
 安眠のために寝がけに一回。
 在宅勤務の日には、昼の休憩時間まで。
 下手をすると入れっぱなしなんてことも。

 自分でもどうかしてると思う。
 けれど、‘’独り遊び‘’がとまらない。
 否、身体がとまってくれず、私は、思慮外の身体につきあわされている。

 ふと思う。私は寂しいのかと。
 離婚して、7年。ときどき彼氏やいたすおともだちはいたが、ここ数年は人肌に包まれていない。
よくある、職場と家の往復。
 それに不満があるわけではない。
 きちんと3食好きなもの食べて、自分と子どもと猫のために時間が取れるのだから。
 でも、ふとした瞬間、あの暖かさに包まれる感覚、全身の細胞が活性するのに脳が溶けていく、あの感じが恋しくなる。

 かと言って、恋人やおともだちが欲しいかと言われればそうでもない。もはやそこに割く時間と見つける労力、駆け引きが面倒だ。
 世の中は今すごく便利なのだから、危なくない理想が手軽に届くサブスクでもできないかと密かに願っていたりする。

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 冗談はさておき、今一番の危惧は、頭の中の腐った願望欲望が露見してしまわないかということだ。飢えた身体に引っ張られるようにして、頭の中も性欲に支配されるようになってきた。

 例えば、マッサージ好きでよく店に通うが、どうしても卑猥な妄想に引っ張られてしまう。他にも美容室でうっかり首筋や耳に手が触れようものなら、声をあげそうになる。

 満員電車通勤はなかなかの地獄だ。たぶん他の人の地獄とは意味合いが大きく違うだろうことは理解している。快楽的な意味で地獄だ。

 いい匂いのするスーツが目の前にくればしがみつきたくなる。背後に立たれれば、電車の揺れであわよくば胸に飛び込めないか。ドア際に立ったときは誰か私を後ろから蹂躙してくれないだろうかと。

 電車から降りたときには人の熱気や接触、密着具合に悶々として、マスクの下がだらしない顔になっている。職場につく前にお手洗いで一回気持ちを落ち着かせてから出社しないといけないのはなかなかにしんどい。

 このままだといつか変態とバレてしまう、今はその一歩手前まできてしまっていることが、恐ろしいのだ。

 反面、バレてしまったら、それはそれで楽しいことになるのではないかという変な期待感が顔を覗かせるくらいには、もう引き返せないほどに頭の中の理性的な部分が消失しかけているのだろう。

 肉付きいいまとまった尻を見れば鷲掴みたくなり、身長や手が大きい人をみれば下半身へ思考を巡らせ、色黒の体格良さげな人をみればポリネシアンなイメージを浮かべ、色白な若い子を見ると被嗜虐心を煽られる。最近はBLにも手を出したので、男2人が仲良く歩いてるだけで、もう垂涎ものだ。ごはんがよくすすむ。

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 私の現実逃避っぷりは異常だ。だれかにそう言われたわけでもなければ、誰かの頭を見たわけでもないが、たぶんトリップ具合がおかしいと思う。とてもモザイクをかけなければいけない内容を展開しながら、涼しい顔をしている私はとても滑稽だ。でも、哀しいかな、それがあるから日々の疲れや将来の不安に向き合え、やっと生きていけているのだ。
 これも一種の性的嗜好なのだろう。妄想が止められない病気だ。
 

一見穏やかに見える生活を送り、守るためのサプリメントとして、私はこれからも抜け出せない世界へ転がるように堕ちていくしかない。一方で踏みとどまりたいとも思い、整理のために筆をとった。

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