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【映画レビュー】必見!黒さを秘めたブラジル生まれの極彩色!『父を探して』の感想

※この記事は2016年にアメーバブログで投稿した記事の再編集版として無料公開しております。
https://ameblo.jp/nejimakikoibumi/entry-12173911390.html

『父を探して』のざっくりとした感想

『父を探して』を映画館で観てきました。

父を探して
(原題:O Menino e o Mundo)
制作年:2013年 / 制作国:ブラジル
監督:アレ・アブレウ

https://eiga.com/movie/83516/

このブログでもちょいちょい紹介してきたブラジル産のアニメ映画。NEWDEERさんが頑張って日本配給を実現してくれた一作です。

見てきた感想をざっくり言わせてもらうと。

すっごく良い!!

……けど

……という手放しで褒めっぱなしというわけにもいかない感じの一作でした。すっごく良いなぁと思う部分がある一方、「ここはどうだ?」という部分もある一作でした。

もう少し詳しい感想を書いていきますね。


『父を探して』のもっと踏み込んだ感想


◾️大前提として感想難産映画!

大前提として言うと、この映画、すっごく大傑作!!

画としても、
話としても、
演出としても、
オチとしても、
言いたいことや考えさせられることが山のように溢れ出る映画でした。
その時点で私としては『見に行くべき』映画認定してます。

なので、結論として「是非見に行くべき映画だよ」っていうのは先に言っておきたいです。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

で、なんでそんな前提的な言い方をするかといえば、“言いたいことや考えさせられることが山のように溢れ出る”って部分が私にとっては、ポジティブなものもネガティブなものもいろんな感情が溢れ出てきてしまって、マイナスに受け取られかねない感想も自分から漏れてきてしまったのです。

で、そことの折り合いをどうつけようか、感想ではどう表現しようかと、悩み続けてまして、実は何回も感想をあげようと挑んだけど、結局やめちゃうことが多々ある映画でございました。そんなこともあって、感想が遅れてしまったというのもあります。

ただ、そのまま感想を書かないわけにもいかないぐらい愛着もある映画だったので今回、意を決してブログを書きました。この後の感想は、苦言も出てきますが、最優先の前提としてもう一度言っておきます。

是非見に行って欲しい映画でした。

ネガティブな感情も漏れたけど、とにかく良い映画だった!


◾️少年と世界がみせてくれる冒険体験

主人公はこの棒人間みたいなシンプルなデザインの男の子
この男の子が出稼ぎに出たお父さんを探しに行くというストーリー。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

この「ストーリー」にもトリックがあったり、さらにはその「見せ方」にもトリックがあるというのが驚くべきところ。

見た目こそチープに感じられかねないキャラクター造形ですが、このキャラクター造形だからこその演出がしっかり用意されていて、この造形が非常に有意味なものとなっております。

すっごーく綺麗な映像もあれば、えっ!?と思わせる意外な映像もあってすっごく良く出来てるのですよ。

▼都会はコラージュで切り貼りされたような世界観。はっきりとした人工物感。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

原題が「少年と世界」という意味のものなのですが、「世界ってこんな風になっているんだ!」と鑑賞者も少年と一緒に体験できる映画となっております。その冒険を経て、どんな感想を持つのか……っていうのが意外と千差万別になるんじゃないかなぁと思ってます。

▼都会のあの山の造形って階級社会のピラミッドを連想させられました。この世界とはさらに別の世界もあるんだよね……。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

シンプルな中に暗喩や演出、メッセージがたくさん詰まっている


◾️ちょっと悩ましい部分の話

で、この映画を見た感想として「すごいなぁ」と思うことは上記のように沢山ある一方で、ここはどうなんだろう……と思う箇所がいくつかあったのも事実。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

全体的に抽象的なイメージの映画なのですが、終盤に非常に具体的なシーンが挟まれます。

ずーっと抽象的な映像だったものから、制作側のメッセージを急にダイレクトにねじ込んでくるので、違和感と居心地の悪さ、さらにすごくその部分だけ矮小化されたような話のように感じられてしまうマイナス印象がありました。演出の試みとしては面白いのかもしれないのだけど、正直全体から悪い意味で浮いて見えました。

映画を見れば「あっここか!」とすぐ分かるので、是非まだ見てない人は心のどこかで、このブログの人そういえばこんなこと言ってたなーぐらいに思い出してくれたら、と思います。

この映画、抽象的とは言っても明確に“これは嫌なもの”としてはっきりと表現するものは表現しちゃってるんで、解釈を自由に委ねるような毛色の映画とも少し違います。


そしてもう一点。

終盤のとある人物の表情……それがすっごくバッドエンド感を出していて、映画全体がネガティブなメッセージにも感じました。しかもこの映画、輪廻とか転生とかループなどを連想させるアニメーションが頭とお尻に挟まれているので、このネガティブな物語は永遠に続いてしまうのだよ……という捻くれた印象を受けてしまいました。多分そういう狙いじゃないんだろうけど、そう見えちゃったからしょうがないよなぁ。

©︎ Alê Abreu/O Menino e o Mundo/2013

よく見ると、ポジティブなメッセージも込められているのは分かるのですが(わざわざそれを確かめに2回目を見に行ったぐらい)、やっぱり最後に希望よりも哀愁の方が強く感じられてしまったのがすごく寂しかったし、わたしはこんな“世界観”を見出して終わりたくないなっていう自分の個人的な思想も強く感じてしまいました。

それぞれの人生観が浮き彫りになる・・・という意味では優れている作品なのかもですね。

締め方が切なくてあまり好きな後味ではなかった。


まとめ

ネガティブな感情も漏れたけど、とにかく良い映画だった!
シンプルな中に暗喩や演出、メッセージがたくさん詰まっている
締め方が切なくてあまり好きな後味ではなかった。

というわけで、セリフもないし(なんかてきとーな言葉喋ってるけど、あれは架空言語)、人によっては退屈に感じる人も一定数居るのは分かる映画ような映画なのですが、“人によって”の受け取り方の違いがまた非常に面白い映画だと思うので、是非一度は見ておいた方が良い映画だと思っております。

おすすめです!

あと主題歌もすっごくオススメ
今のところ私の中では2016年ベスト主題歌候補です。



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▼アレ監督の新作『Perlimps』がもうあります。


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