【映画レビュー】ウェルメイドなのにすっごく悩ましい『エルマーのぼうけん』の感想
Netflix独占配信作品のレビューでございます。
『エルマーのぼうけん』のざっくりとした感想
『エルマーのぼうけん』を観ましたよ。
『ウルフウォーカー』などで知られるカートゥーン・サルーン最新作がNetflixにて登場。『ブレッドウィナー』のノラ・トゥーミー監督が、有名児童書である「エルマーのぼうけん」を新たに長編アニメーション映画化します。
海外では劇場公開を実施しているところもあるようですが、日本ではNetflixでの配信のみとなっています。実は『すずめの戸締まり』や『ブラック・パンサー ワカンダフォーエバー』と同日の2022年11月11日公開作品でした。
本作を観た感想をざっくり一言で言うと……
佳作。
カートゥーンサルーンの愛らしいルックでリデザインしたエルマー!
物語は強めにアレンジが施されて、序盤が過酷すぎて若干引くのだけど、『ブレッドウィナー』の監督だしな、と腑に落ちますが、それにしては着地の仕方が雑な気も。
以下、ざっくりではなくもっと踏み込んだ詳しい感想。
『エルマーのぼうけん』のもっと踏み込んだ感想
■原作と全然違うストーリーじゃねーか!
本作、まずびっくりするのですが、思っている以上に原作とストーリーが違うこと!『エルマーのぼうけん』がベースにあるとはいえ、かなりの別物となっています。
そして、そのアレンジがまず陰鬱。
冒頭では少年エルマーとエルマーの母親のお店がどんどん落ちぶれて困窮していき、優しかった母親もいつしか心が荒んでいってしまう……という悲しい内容を赤裸々に描きます。その導入がまず観ていて辛い。
そこから、動物たちの島へとエルマーは渡るのですが、そこからもどんどんストーリーは“アレンジ”の方向へと移っていき、知らない『エルマーのぼうけん』が知らない展開で、知らない結末を迎えていきます。
本作竜と早々に遭遇していき、二人の物語が軸になっているのは、良かったのですが、いかんせんキャラクターの見た目は可愛いのに、エルマーも竜も性格に癖があって、イマイチ愛らしく思えない。
そして、そのまま二人に対してビミョーな気持ちが残ったまま、物語はラストへ向かっていきます。
■ストーリーが悪いのか、キャラが悪いのか
いまいち爽快感で終われない感じは、ある意味ノラ・トゥーミー監督の前作『ブレッド・ウィナー』と同様。
それはノラ・トゥーミー節と言っても良いのかもしれないのですが、それなりに溜めたフラストレーションを解放してくれる演出が『ブレッドウィナー』にはあったのに対し、今作はそのカタルシスがうまく働いてないのが実際のところ。
そのせいで、「めでたしめでたし」のはずのラスト。
元の街に戻ってきてからの事態が急に丸く収まりすぎに見えてしまい残念でした。
未だに自分の中で答えが出てないのですが、この理由はストーリーが悪いのか、はたまたエルマーと竜のキャラクターがしっかりストーリーに活きていないのか、もしくはその両方なのか。とにかく悩ましい映画でした。
■ウェルメイドぶりで得点を上げていく異常作!
ここまで言うと、全然良い映画じゃねーじゃん、って話なのですが、『エルマーのぼうけん』のすごいところは、これだけ気持ちよくない話なのに、でもすごく綺麗な映画だったよね、と言う印象が残るところ。
キャラクターのビジュアルだったり、
島の造形や色合いだったり、
ひとシーンひとシーンの映え方だったり、
いちいちよくできているのですよ。
それがまさにカートゥーンサルーンクオリティ。
ビジュアル面でキチッとウェルメイドに仕上げる力が高いのだと、改めて思い知りました。
動物たちもまたそれぞれが可愛い!
元の話を知っていると、「えっあの動物の役回りが変わってる!?」とか「あのアイテムが別の使われ方してる!」といった楽しみ方もできたりするのは原作を知っている人も嬉しいところ。
中でもゴリラ好きとしては、ゴリラが優遇されていて嬉しいです。
ありがとう、ノラ・トゥーミー監督。
まとめ
というわけで、見た目だけ映画は言い過ぎかもしれないですが、上手いとは言い切れない結構悩ましい映画でした。もっと明快に、もっと上手く仕上げてくれたら傑作となれた気がするだけに「惜しい」と言うのが正直な感想でした。
結果的に『エルマーのぼうけん』はノラ・トゥーミー監督向きの題材じゃなかったのかもね。。
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