【映画レビュー】その中身は意外と残念じゃない?『映画ざんねんないきもの事典』の感想
布陣的に変なものは出てこないと思っていましたが、予想通りでしたね。
『映画ざんねんないきもの事典』の感想
大阪・シアタス心斎橋にて『映画ざんねんないきもの事典』を観てきました。午前の朝早い回でしたが、一人ではなかったですね。
人気書籍シリーズである「ざんねんないきもの事典」をベースに、南極・オーストラリア・長野県安曇野を舞台にした3つのオリジナルストーリーでアニメ映画化。
『紙兎ロペ』の生みの親であるウチヤマユウジ氏、『グレゴリーホラーショー』のイワタナオミ氏、『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』のアニメーションディレクター・由水桂氏がそれぞれ監督を務めます。
ガイド役のモグラ親子役をムロツヨシさんと伊藤沙莉さんが声優を務めていたり、主題歌には秦基博さんが起用されていたりと、本編外もやけに豪華だったりします。
本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
優良作!
それぞれアプローチの異なる中編になっていながらも、それぞれがしっかり動物の珍妙な雑学を挟むところが「ざんねんないきもの事典」!
見た目とタイトルから感じる地雷臭に反して、しっかりとした布陣なので、リッチなアニメーションといった感じではないのですが、手堅く面白かったと思える作品になっていました。
ざっくりではなく作品別にも感想を書いていきますね。
中編の個別レビュー!
『映画ざんねんないきもの事典』は3つの中編で構成されたオムニバスムービーとなっているので、本編で流れた順番に個別に紹介していきますね。
『リロイのホームツリー』
イワタナオミ監督による、オーストラリアを舞台にコアラがホームツリーを探しに行く冒険譚。
簡素な3DCGのキャラクターデザインは、いくら『ペコラ』や『ミッドナイトホラースクール』のイワタナオミさんとはいえ、不安には感じたのですが、実際に動いたり喋ったりしてる姿を見るとそこまで気にならないどころか、じゃが芋みたいな凹凸が表面にあったりして、ちゃんとディテールを感じるルックになっていたのは意外でした。
キャラクターのやりとりも賑やかで楽しいし、しっかり起承転結を成立させた流石の安定感でした。
これぐらいのビジュアルでも全然良いので、『劇場版グレゴリーホラーショー』を作っても「いける」と確信しました。作ってください。お願いします。
『ペンたび』
ウチヤマユウジ監督による、南極を舞台にしたペンギンたちの冒険譚。
それだけ聞くと、コアラの話と被っているように聞こえますが、さすがなのが、ペンギンたちが昼休みにいつもと違うところへ昼飯を食べに行くローテンションな感じでしっかり差別化できているのが見事。
と言うか、これこそウチヤマユウジ節ですよ。
このローテンションこそウチヤマ監督らしさであり、悔しいぐらいに笑わせ方が絶妙。
動物の雑学ものと言う難しそうな題材でウチヤマ作品をしっかり成立させられるんだ、という驚きも相まって、最近のお仕事もちゃんと追わなきゃ、と焦りを感じるほど良かったです。この優しい湯加減で大好きです。ウチヤマ監督を追い出したここ10年ぐらいの『紙兎ロペ』は要反省だぞ。
『はちあわせの森』
最後が、由水桂監督による日本のウサギを主人公にした『はちあわせの森』。
他2本が結構個性的な作品だった分、硬派な印象を感じた一本。バラエティ豊かなこの映画の着地としては綺麗な後味を残してくれる適役といった感じ。色合いも綺麗で可愛いのですが、一方で決して真面目すぎる作品ではないのだけど他の2本よりも印象が弱かったのが残念。バランス取るのが難しいよね。
総評としての『映画ざんねんないきもの事典』
と言うわけで、3本+つなぎのアニメーションを含めて、しっかり楽しかったと思える映画になっていました。そもそも乗り物より動物に惹かれるタイプのキッズだったので、ちゃんと大好物なやつで嬉しかったです。
できれば夏の風物詩的に毎年やってくれてもいいのになぁ、なんて思うのですがお客さんがそんなに入っているという話も聞かないので難しいのかもしれないです。それが一番、この映画の“ざんねん”なところかもしれないですね。
TVシリーズもあったようですが、無理をせずに断続的でもいいので、動物雑学ものの息の長いシリーズとして「ざんねんな生き物」を今後も大切に続けていって欲しいです。
あと余談ですが動物ネタということで、3本全種に“糞ネタ”が混ざっていて笑う。普通のギャグアニメというよりも、動物雑学ネタとして鉄板感が出ているのが笑えるし、そもそも動物雑学物を長編化すると糞ネタは避けては通れないことこそがこの映画の学びだったのかもしれない。
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