20230516の自動記述による詩
疲弊
筋肉痛の右腕が物語る。
どれぐらい激しく走り抜けたかを。
両足と腹筋ととにかく体中のなにもかもが疲れた。
思考も前歯も奥歯も胃腸も、内臓だってなにもかも疲弊した。
まるで腐った卵を食べたときのように。
腐った卵を食べたことなどないくせに。
体中がどろどろと、ゆっくりと、しなやかに、震えながらこと切れていく。
それがいのちの終わりだと知ったのは、わたしが死んだあとのことだった。
みえない鳥
愛してないよ。空を飛んでる。鳥になってる。
カーテンを開く。空の中に溶け込んで肉眼では見えない鳥になってる。
窓を開けても、風を感じても、
声が聞こえてもそこにはいない鳥になってる。
目には見えない鳥だけど、虹にぶつかるときはある。
さようなら。さようなら。
その衝突は終わりの合図で、さようなら。
弔いの鐘もなりません。誰一人とて泣きません。
悲しみません。苦しみません。みえない鳥の終わりだから。
さようなら。
公開処刑の
ある朝うたた寝で見た夢の情景
公開処刑の
会場で
肝の座った商人が
アイスと弁当
売りさばく
公開処刑の
会場で
腹をくくった芸人が
友の無罪を
訴える
公開処刑の
壇上で
首をくくった罪人が
覚悟もないまま
こと切れて
風に吹かれて
揺れている
まどろみ
柔らかな布にくるまっていたいなぁ。
暖かい海に沈んでいたいなぁ。そうか、わたしが欲しいのはまどろみ。
光があったほうがいいかな。闇があったほうがいいかな。
床をどこに構えようかな。
わたしが悩むのはまどろみ。
いつはじめたらいいかな。今すぐがいいかな。
それとももう少し、起きていようかな。
最後まで取っておく、大好物。まどろみ。
サクランボ色の舌
もったいぶって少し見せる
サクランボ色の小さな舌
小鳥が朝を告げるとき
わたしの夜ははじまります
ひっくりかえった砂時計みたいな
それよりももっと反対方向の
わたしの時間
あなたがつぶった目では見られないものを
わたしの開いた眼で見続けています
夜に舐めると
甘いお菓子を
ぺろりと舐めながら
マトリョーシュカを求めた夜
やさしい気持ちの奥から
やさしい気持ち
その奥からまた
やさしい気持ち
やさしい気持ちのマトリョーシュカ
そんなお土産をもらって、わたしはそれを抱きしめて眠る。
せめて夢の中でだけでも優しい気持ちになりたいと思ったから。
時計の針は少しくるってる。午後なのか午前なのか真夜中なのかはわからない。
ふと目覚めて起き上がる。床板のギシギシいう音。
屋鳴りのような音。
あら、すっかり夜が明けそうになってる。
でも、まだ青くゆるやかに明け始めてる。
そんなことを思ったら寒さでぶるっと肩が震えた。
思い出す
ぼんやりしていたら思い出した。そのペンの触り方。そのペンの扱い方。
ゆっくりと握ればゆっくりと動き出す。
ゆっくりと動き出せば少しずつ走り出す。
思い出した。そのペンの触り方。ずっとわすれてた、そのペンの握り方。
その弾丸の撃ち出し方も、その刃物の扱い方も。
その兵器のそのボタンの押し方も。
はっきりとよみがえった。死んでいた記憶の彼方から。
グラスの中身
テーブルの上に置いてある、グラスの中を覗き込む。
何かいるかと覗き込む。
黒い何かが浮いている。青い何かが沈んでる。
赤い何かが泳いでいて、紫の何かが揺れている。
これは果たして飲めるものなのかしら。
それとも強い毒なのかしら。緑の何かも溺れてる。
黄色い何かは体いっぱいにガスを含んで、水死体のように浮かんでる。
すべて人の形はしていない。していないけど命に似ている。
狂った瞳の幻覚か。狂った心の妄想か。
飢えた身体がわたしにみせた、たったひとつの愛情か。
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