決意

オリンピックやら彼とのデートやらで忙しくした1週間。毎日悩んで考えて、やっぱり呼吸はうまくできなくて。でもとにかく彼と少しでも一緒にいたくて。ほとんど毎日会って一緒に寝てた。

土曜にはTMさんがダンスのショーで出演するクラブイベントがあって、彼に前売りをお願いするメッセをインスタから送ったけど、既読にならなかった。あー見たくないのね、別にいいや、あの人らしい、と思ってほかの子にお願いした。

お友達に戻ろうって言ったのはほんとにそういう気持ちで。だからこそ、正直な気持ちを言ってお別れしたのだけど、向こうは面倒なことは避けたいのだろうね。でもだからといって行きたいクラブイベントに行けないのとかいやだもん。行って彼に一言挨拶。

「お疲れ様です。今日踊るんでしょ。」

「あー、お疲れ様です。1時からです。」

クラブはうるさいし、他の人からも声かけられてたし、私もあんなとこでそれ以上話すこともなかったからそれだけで。ショーを見て、やっぱりダンスについては素敵だなと思ったし、彼がそこに人生をかけていて、私のこと含め、面倒なことを抱えたくないというのは理解できる。それにしても大人なのだから何か一言あってもいいよね、とは思うけれども、別に彼とこれ以上どうこうなろうとも思わないし、私とは縁がなかった人だから、彼が私に対して礼を尽くさなかったからと言って私に責める権利もないし、もう終わったこと、どうでもいい。ただ、今後にもわだかまりを残して、こういうところで会うのがいやだから、と避けるのはいやだから。

ショーを見たあと、普通なら一言言って帰るけど、彼はみんなの人気者でたくさんの人に声をかけられてたし、彼も私をウェルカムではないだろうと思ったからそのまま帰った。この日も呼吸の調子がよくなかったから、もしかしたらこっちの方もかなり気になってたのかな、とも思っていたけれど、クラブにいる時もほとんどずっとHちゃんとラインしてて。私の気持ちがTMさんにもうないことはしっかりと確認できた。

TMさんのことは自分の中ではもう終わったけれど、昨日突然メッセがきて。どうやら、未読のままにしていた私からのメッセを開封したようで。

「土曜はありがとうございました。あれから会いづらくてねいさんのインスタを見ないようにしてました。治療が終わったので報告です。これからも自分の道に向かってさらに磨きをかけてがんばります。ねいさんもお体に気をつけてがんばってください。」

今気づいたけど、ねい「さん」になってるし、ｗ

「TMさん、メッセージありがとう！連絡もらえると思ってなかったからうれしいです。土曜日はお疲れ様でした。すごい素敵でしたよー。挨拶もせずに帰っちゃってごめんなさい。私もTMさんと同じく、自分のこと、自分のしたいこと一番、ほかのことは二の次で生きてる人間だから、もう気にしないでください。TMさんがほかのことを差し置いてダンスを大事にしてること、私なりに理解してるつもりだし、人にはみんないいとこ悪いとこあるのもわかってるし。自分も含めて。

TMさんとは個人的な付き合いとしては合わなかったけど、できればダンス関係やイベント関係で絡んだ時には普通に仲良くできたらと思っててそのためにあえて自分のあのときの気持ちを伝えたので。

私も伊達に遊んできてないので、あのあと少しの間は落ち込みましたが、落ち込むだけ落ち込んで、その後はもういい出会いもあったし、もう病気も治って気持ちもスッキリしてますのでほんと、お気になさらず。

インスタ、逆に見てたんですね？あ、メッセージのことかな？イベントの前売りのことで、ほかの子に頼んだので大丈夫ですよー。ではでは。ありがとう。」

「はい。ありがとうございます。またイベントで見かけたら挨拶行きます。」

彼の本音は文章だけではよくわかんない。私に対して申し訳ない気持ちなのか、ただめんどくさいだけなのか、はたまたうっとうしかったり腹を立ててたりするのか、もしくはあわよくば、の気持ちがあるのか。

私は本音を話したし、彼からも聞きたかったけれど、それが出てこないってことが彼の答えだし、それをふまえて、彼との先はないと判断したわけで。最後までこういう態度の彼を見て、その判断は間違ってなかったってことを再確認したし、求める物ではないにしろ、彼から連絡をもらえて一応次からは笑顔で挨拶できそう？だからよかったなと思う。

TMさんのことが解決しても呼吸は変わらなくて。

日曜私は趣味仲間とのバーベキューで、Hちゃんは子供ちゃんと過ごしてた。土曜の朝に分かれたきりだったから日曜も少しでも会いたくて、子供ちゃんとも会いたかったから、夕方帰ってきてから近所の公園にでも行こうって言ってたけど、子供ちゃん熱出ちゃってて。でも夕方にはだいぶ下がってたから、とりあえずまたうちに来て小一時間ほど猫と遊んで（いじめて？）帰って行った。

この1週間は生理だったけど、それでもほぼ毎日会って、朝まで一緒に過ごした。一度は彼の家で寝たけど、暑くてエアコンなしでは寝られなくて、やっぱり涼しいうちの方がいいということになった。初めて会った日ぶりに彼のうちに行って、初めて会った日に彼が私をどう思ったか、とか聞いたり。彼は直感的に人を好きになって、一度好きになると悪い部分が見えたりいろんなことがあったりしても相手に対する基本的な気持ちは変わらないらしい。ただ相手の心が変わるだけで。元奥さんに対しても幸せにしてあげたかったし、今でも幸せになってほしいけど、向こうがもう無理な以上どうしようもないって。

私に対しては初めて見た時にもうそういう直感があって、脱いだ（たくましい）背中を見た時に、「この人は普通じゃない、この背中は努力なしになるものじゃない、おもしろい」とさらに興味を持って、直感が正しかったと再確認したらしい。

私は私でなぜかわからないけど彼のことが大好きで、人の名前を呼ぶことが苦手な私が彼の名前はいっぱい呼びたくて。意味もなく抱きついては

「Hちゃん♥」

って耳元でささやいてる。

「ん？」

「大好き♥」

って言うと彼は毎回喜んで

「でも僕の方が好きやけどね」

って言う。

「なんで？」

自分の中の迷いをぶつけるように何度もこのやりとりを繰り返した。今は無条件に彼のこと好きだけど、今までもたくさんの恋をしてきた自分。今のこの気持ちは確実だし、ここまで自分から好きって思えることは人生でもそんなにないから彼への恋心は本物だと思う。でも付き合いを深くしていく中で、お互いのいろんな部分を知っていくことで、私がずっと同じ気持ちを持ち続けていけるか、そしてほかの人との関係を断ち切って、彼とだけ楽しく続けていけるかどうかはわからない。今仲良くしている二人を切ることも、まだできてない。

「なんでかっていうと説明は難しいけど。ねいちゃんはいつか飽きるかもしれんやん。でも僕は変わらんから。一度好きになったら変わらないもん。終わるのは常に相手から。じゃあ、今はねいちゃんの方が好き、にしとこうか」

うまく呼吸できないのは、彼一本に絞る怖さなのか、絞れていない苦しさなのか。わからないからこの状態なのはわかっているけど、いつまでもこのままは苦しい。もうそろそろはっきりさせたい、次に向かいたい。私は同じことで長く悩めない。どっちなんだろう、じゃない、どっちかに決めてそっちに進んでみる。間違ってると思えばまたそのときに修正すればいいんだ。

決めた。

さっき、仲良しの既婚者二人にメッセージを送った。

「あなたのことは人としてすごく好きだし、一人の人と付き合うのはどうかな、とか、このまま様子見で同時進行でもいいかなって思ったけど、今一番大事にしたいのは彼との時間だから、もう今までみたいな付き合いはできない。ごめんね。」

思っていた通り、二人ともわかって応援してくれた。

クライマー「ねいちゃんの今の気持ちを大切にして。恋愛対象としてすきになれるってなかなか貴重なことだから。俺も、ねいちゃんのことは人として好きだから、全然友達として仲良くしてくれたらうれしいよ。いつでもクライミングしにおいでね。自分がそうありたい、と思えるねいちゃんでいられるといいね。がんばっ。快楽でもそうだけど、みんながハッピーが一番だね。人生楽しんだもん勝ちだよ。またいつでも連絡ちょうだいね。」

支店長「ねいちゃん、了解。自分の気持ちに素直に生きてー。僕は大丈夫かな。たまに連絡するのはありということで！がんばれ、ねいちゃん！」

Hちゃんには「自分が大丈夫と思ってても相手がさらっと別れてくれるかどうかはわからないよ」って言われたけど、やっぱり二人は思ったとおりの人だった。ありがとう。ほんとに。二人にいい出会いがあって、よりハッピーになったらいいなって思ってる。まだ呼吸はうまくできないけれど。

あとは、たまにラインが来るけど、すごい忙しそうでまだ会えてないバツイチ建築会社社長とか、連絡途絶えてる10代の二人とかいるけど。社長は多分忙しさのせいでこのまま自然消滅しそうな気がするし、10代はとりあえず放置でもし連絡来たら断ればいい。ただ問題は前からのセフレさんかな…

彼のことは私が言わなければバレることはないだろう。仕事の時間帯に来る人だし、店以外での付き合いは一切ない。自分から連絡することもないし。そこはもう自分の心身の感覚？良心？価値観？かな。良心、と善悪だけで判断したくはないけど、前みたいに体がHちゃん以外を受け付けなくなって無理になるかもしれない。ここだけはとりあえず保留としようか。すべてクリアにしたい気持ちもあるけどね。

ふう。どうなるのかな。彼ら二人を切って、余計に呼吸が苦しいかも？やっぱりプレッシャーの方が大きいのかな。でもきっとあとしばらくだ。彼らと会うためにHちゃんに連絡できなかったり、夜一緒に過ごせなかったりしたときの罪悪感は消えるのだから。今夜会えたらHちゃんに報告しようかな、いやしばらくは黙ってようかな。どうかなーー。