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頼れる人も物も情報もなくて、台風から200キロ逃げた話。

これは、僕が台風19号から逃げて友人の実家のある長野に避難した4日間の記録。台風19号は日本各地で様々な被害をもたらしました。今も避難されている方々のご無事を祈ると同時に、被災された方とその親族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

家が吹き飛んじゃう?

僕は今、東京の世田谷区に住んでいます。

先週末、大型台風が再び日本に接近していることを知った。そしてその台風19号が史上最大規模のものだと分かってから、急に怖くなった。台風15号の時は幸い自宅への被害は無かったけれども、自宅は築何十年も経つ古い木造住宅(2階でゆらゆらしたら家ごと揺れるくらい)だから、深夜ピーク時の暴風雨では屋根が吹っ飛んでしまうんじゃないかという強烈な不安に襲われた。怖くて朝まで眠れなかった。

ハギビスはそれ以上の規模だと耳にして、当然僕は怖くなった。今度こそ本当に屋根が吹っ飛んでしまうんじゃないか、家が浸水してしまうのではないか。不安がぐるぐる頭から離れない。

それから常にネットやSNSで最新の台風情報を調べたり、スーパーで食糧を買ったり、家では雨戸を閉めたり窓の補強をしたり外の荷物を取り込んだりと、出来る対策は全てやった。それでも、不安が僕の頭から消えることはなかった。

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友人からの提案

「心細いから一緒に過ごさない?」

都内で一人暮らしをしている友人に誘われて、一緒に過ごすことに。もし被害が大きくなれば東京のインフラも壊れ、生活すらままならなくなるかもしれない。とにかく安全で安心できる場所にいたい。そう考えて、東京からのアクセスが良く、台風の被害も少なそうな群馬・長野方面を探していた。そのタイミングで、もう一人の友人が声をかけてくれ、実家にお世話になることになった。そこは長野の松本市にあり、自宅からは約200キロ離れている。巨大台風の暴風域の中ではあったけれども、無事に生き抜くためにはベストな場所だと思えた。

お陰様で松本の台風被害はほぼ無く、「台風はいつここに最接近するんだろうか?」ということを皆で話しているうちにいつの間にか雨風は止み、夜空にはお月様が浮かんでいた。そして昨日の夜自宅につき、またいつもの日常に戻ってきた。

頼りない自宅

僕らが長野に避難していた間、東京に残っていた人達は沢山いたし、僕も同様に自宅でじっと耐えて待つという選択肢もあった。しかしそれが出来なかったのは、あまりにも自宅と自宅付近が頼りなかったからである。

スーパーからは食糧が消え、近所には頼れる人もいない。お金も無いし物的対策にも限界がある。人口も建物も過密な東京では、インフラに被害が出た場合には復旧にも時間がかかりそうだと感じていた。

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何不自由なく生活できる東京

普段は何不自由なく、むしろ毎日楽しく生活できているのに、なぜ災害時にこれだけ不安になるのだろう?4日間の「避難生活」を通じて感じたことは、僕には自宅や自宅付近で頼れる人やモノ、場所とのつながりがあまりにも少なすぎたいうことだ。

困った時は頼りたいよ

欲を言えば、駅前のスーパーで見かけた人達と「何を買ってるんですか?」とか「家ではどんな対策をしてるんですか?」とか「どのメディアを見れば、台風の最新情報は手に入りますか?」とか、気軽に会話や相談をしたかった。でも、皆は淡々と買い物を済ませている様に見えたし、どれくらい台風のことを心配しているのかも分からない。そんな状況で一言声をかける勇気は無かった。

今住んでいる場所は世田谷の住宅街で周りには溢れん程の住宅がある。ご近所づき合いは見かけたら挨拶をしたり、ポストに入っていた回覧板を次の人の家のポストに入れる程度。

もし普段から付き合いがあれば、「一晩だけお宅にお邪魔させて下さい」みたいに頼むことも出来たかもしれない。

つながりをください!

でも、つながりは結果でしか無いし、「つながりを下さい!」と言えばその時にもらえるものでも、お金で買えるものでもない。現状は近所の人に挨拶をするだけでもそわそわするし、どんな人が住んでいるのかも、どんな地域の行事が行なわれているのかも知らない。知ったとしても参加するのは少し面倒だなと感じてしまうくらいご近所づきあいは皆無だから、こういった非常事態時に助け合うためには、つくづく普段の交流や小さな積み重ねだなと感じる。

目に見えた将来

地球温暖化の影響により、今後将来台風は大型化かつ増加するとみられている。首都直下型地震もいつ起こるか分からない。

日本がますます災害大国になっていくのが目に見えている中で、二度と同じ悲劇は起こしたくない。

今日からできること

いつ災害が起きても大丈夫なように、自分にできることを考えて、一つずつ実践していきたい。今の家に住み続けるのであれば、困った時に助け合える、あるいはやりたいことをお互いに応援できる様な関係性を築いていけたなと思う。ご近所さん全員じゃなくて少数でもいいからね。まずは地域を知ることとか、地域の行事に参加すること、もっと大きな声で挨拶をすること。それくらいのことから始めてみようと思う。

近い将来できること

あるいは、今すぐは出来ないかもしれないけど、いっそのこと住む環境や地域を変えてみるとかもありかもしれない。例えば、千葉県いすみ市や神奈川県の藤野は地域通貨制度によって、住民同士でお互いの困りごとを解決したり、お互いのやりたいことを応援したりする仕組みが整っている。

問われるつながりの質

いよいよ、地球温暖化や気候変動は他人事ではなくなってきた。生活のほとんどをお金でまかなう資本主義のシステムにも限界が来ているのかもしれない。大きすぎる自然と共存していくために、僕らがよりよく生きていくために、人と人のつながりの質を問われているのかもしれない。そう感じさせられた4日間でした。

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