Negros Exposure

私たちは、フィリピンにおける人権侵害を深刻に受け止める有志です。公的機関から出される情…

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私たちは、フィリピンにおける人権侵害を深刻に受け止める有志です。公的機関から出される情報を精査していきます。超法規的殺害を食い止めることを目的としています。

最近の記事

サガイ・ナイン農民虐殺事件の真相──第2回 封印された土地紛争

 フィリピン西ネグロス州北部に位置するサガイ市のサトウキビ大農場ネネで、その農場で働く9人の労働者がブンカラン(*1) の初日に殺害されたサガイ・ナイン農民虐殺事件。この事件の背景には、地主に所有され続けている土地の分配をめぐる争いがあったわけだが、今回は、国家警察がこの土地紛争の問題についてどのように発言していたかについて検討する。  国家警察や国軍は、一連の発言をとおして土地紛争に関する争点をずらしたことが明らかになってくる。この事件を契機に、法と制度に則り土地の分配を

    • サガイ・ナイン農民虐殺事件の真相──第1回 「vs.共産党」という構図の流布

       今回から、サガイ・ナイン農民虐殺事件に関する国家警察の発言を検討する。  サガイ・ナイン事件とは、2018年10月20日に全国砂糖労働者連盟(NFSW)サトウキビ大農場ネネ支部のメンバー9人が殺害された事件だ。その事件の背景には、被害者たちと地主らとの間にあった長年の土地紛争があった。つまり、封建的な土地所有の問題だ。  フィリピン社会に深く突き刺さる土地所有の構図の理解を抜きに、現地で頻発する人権侵害の本質を読み解くことは決してできない。  このことは、事件の詳細と

      • サガイ・ナイン農民虐殺事件の真相──プロローグ 阻まれる農地分配

         フィリピンの西ネグロス州北部に位置するサガイ市に、ネネというサトウキビ大農場(アシェンダ)がある。農場の所有者は、地元の有力者トレンティーノ家だ。2018年10月20日、その農場で働く9人の労働者が殺害された。事件の発生場所と殺害された人数から、サガイ・ナイン(SAGAY 9)事件と呼ばれる。  今回は、この事件に関する報道について検証していく。  どうして、2年前の事件をいま取り上げるのか。それは、この事件が、軍事化を加速した「2018年通達第32号」発効の引き金とな

        • 東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第3回

          1 ファクト・チェック!からわかること 私たちは、これまでの2回(2020年8月30日、31日)の検討を通じて、以下のことが指摘できると考えています。 1-1 事実と食い違う部分  殺害の発生状況と未成年者の連行の部分について、事実が大きく食い違っています。 1. 新人民軍(NPA)との衝突の最中に起こったと主張する国軍と、そうではなく家宅捜査の際に起こったと関係者の証言。 2. NPAのキャンプから救助したと主張する国軍と、家宅捜索の場に居合わせ連行されたとする関係者の

        サガイ・ナイン農民虐殺事件の真相──第2回 封印された土地紛争

          東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第2回

           前回に引き続き、2020年8月14日にフィリピン東ネグロス州ギフルガン市で発生した、レケン(24歳)の殺害、3人の未成年者(レケンの弟、2人の女性)連行について検証します。私たち Negros Exposureは、英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMC)がdisinformation(偽情報)に関する報告書において採用した6分類を参考にして、情報が偽情報であるかどうかを考察しています。この分類は、投稿の下の方に掲載しています。 1 「8月14日」に何があった?

          東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第2回

          東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第1回

           今日から、2020年8月14日にフィリピン東ネグロス州ギフルガン市で発生した、レケン・セマソッグ(24歳)の殺害、3人の未成年者(レケンの弟レニエル、2人の女性)連行について検証します。私たち Negros Exposureは、英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMC)がdisinformation(偽情報)に関する報告書において採用した6分類を参考にして、情報が偽情報であるかどうかを考察しています。この分類は、投稿の下の方に掲載しています。 1 「8月14日」

          東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第1回