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東ネグロス州ギフルガン市での殺害事件=第3回

1 ファクト・チェック!からわかること

 私たちは、これまでの2回(2020年8月30日、31日)の検討を通じて、以下のことが指摘できると考えています。

1-1 事実と食い違う部分

 殺害の発生状況と未成年者の連行の部分について、事実が大きく食い違っています。

1. 新人民軍(NPA)との衝突の最中に起こったと主張する国軍と、そうではなく家宅捜査の際に起こったと関係者の証言。
2. NPAのキャンプから救助したと主張する国軍と、家宅捜索の場に居合わせ連行されたとする関係者の証言。救助と略取では状況が180度異なってしまう。

 これまでの検討によって、国軍の主張の信憑性は脆弱であると指摘できました。

1-2 分析:なぜ国軍は信頼性のない情報を流すのか

 では、なぜ、国軍は信頼性のない情報を流すのでしょうか。以下のような効果を狙ったのではないかと推察できます。

1. 国軍は、非武装の人物を殺害したことに対する責任を逃れたかったのではないか。
2. 国軍は、NPAメンバーを殺害、逮捕するという成果を上層部に報告できたのではないか。
3. 国軍は、保護者不在の中で、未成年者に取り調べをする機会を得たのではないか。実際、弁護人の立ち合いもなく未成年女性が証言した内容を国軍が報告しています。

1-3 疑問点

しかし、次のような疑問が残ります。

1. 何のためにNPAメンバーとして殺害する必要があったのか。
2. 何のためにNPAメンバーとして逮捕する必要があったのか。
3. 何のために家宅捜査をしたのか。
4. 何のために2人の未成年女性を連行し、いまだに解放しないのか。

 フィリピンでは今も深刻な人権侵害が起こっています。私たちのこの Negros Exposure プロジェクトを通じて、皆さんがフィリピンでの人権侵害を公正に理解して、関心を持っていただけることを願っています。

以下に私たちが検証に利用したソースを明示しておきます。

資料:国軍による投稿

Philippine Army Spearhead TroopersのFBページ 2020年8月19日10:30の投稿https://www.facebook.com/3rdInfantryDivisionPhilippineArmy/photos/a.172968852730461/3674770055883639/?type=3&theater

・8月14日12時頃、東ネグロス州ギフルガン市サンダヤオ村Tabagoの近くでフィリピン国軍62nd Infantry Battalion(62IB)と共産党軍事部門NPAが衝突。その際、二人の未成年女性を救助した。

・同村Maluy-aでも12時に、同部隊所属の兵士とNPAとの衝突があり、CPP-NPAのメンバーが一人が死亡した。死亡したNPAはのちにRickim Remasog 21歳(Negros Island People's Alternative Mediaによると、正しくは、Reken Ramasog、24歳)と判明した。

・国軍兵士は、同様にNPAメンバーと確認さされたRennel Remasog20歳(Negros Island People's Alternative Mediaによると、正しくは、Reniel Remasog、17歳)を逮捕した。同時に、武器を押収した。

Philippine Army Spearhead TroopersのFBページ 8月17日9:15の投稿

・殺人未遂の罪状と氏名を記した紙を持たされたRenielと思われる人物の写真(顔は隠してある)がアップされている。

Brown EagleのFBページ 8月17日15:36の投稿

・2人の未成年女性は、トラウマカウンセリングのために警察と社会福祉・開発省に引き渡された。

資料:現地情報

・Paghimutad - Negros Island People's Alternative Media, AFP Fake Encounter Kills Civilian, Harasses Others, August 15th, 2020

・Save Guihulngan, Press Release, August 21th, 2020

資料:ファクトチェックの6分類

【分類1】Fabricated content:完全に虚偽である=「完全に虚偽」と記載

【分類2】Manipulated content:本来よりセンセーショナルな見出しをつける等、元情報を歪めている=「元情報を歪めている」と記載

【分類3】Imposter content:元情報のソースを別のもの(例えば信頼ある通信社のブランド)に変えている=「情報ソースの変更」と記載

【分類4】Misleading content:ミスリーディングな情報の利用(例: コメントを事実のように伝えている)=「ミスリーディング」と記載

【分類5】False context of connection:本来は正しい情報が間違った文脈で利用されている(例:見出しが記事の内容を表していない)=「文脈の捻じ曲げ」と記載

【分類6】Satire and parody:ユーモアがあるが嘘の物語をあたかも真実のように表現している(必ずしもフェイクニュースとして分類されるわけではないが、意図せず読者をだましている場合がある)=「ユーモアがあるが嘘」と記載)

Disinformation and ‘fake news’ : Interim Report, 2018, https://publications.parliament.uk/.../cmcumeds/363/363.pdf

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