見出し画像

書評と紹介 杉山亮『井上哲次郎と「国体」の光芒』

白水社より刊行された本の書評です。

『日本史学集録』第44号(2023年7月)に載せてもらいました。

井上哲次郎研究というのは、少し前から、思想史の若手中心にちょっとしたブームが来ておりまして、そこに深くかかわっていた著者の博士論文の書籍化であります。

井上哲次郎単体を扱ったモノグラフはこのところ出ておりませんし、また雑誌『東亜の光』のメディアとしての役割に注目した点で意欲作だと思います。同誌、近代日本の保守系学者が集まった雑誌のような扱いで、あまり従来掲載論説が注目されてこなかったと思うのですけれど、そこに光を当て、今後の研究に重要な問題提起をした本だと思います。

学術誌の書評なので、疑問点も取り上げて批判的なことも(自戒を込めてとはいえ人様のこと言えないようなことも…)書いておりますが、むしろ、本書が出たからこそ、これで終わりとするのではなく、雑誌から思想を読むことを通して、改めて本格的に井上研究が活性化していくべきだろうと感じました。

雑誌メディアから思想を読んでいく、という作業は、メディア宗教のようなアプローチからの成果もどんどん出ている今、一層進展していくのだろうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?